リレー随筆



「クリスマスにチョコレート」とかけて「急患ラッシュ」ととく
Toronto Veterinary Emergency Hospital Emergency/ICU
望月 ゆふ子


カナダに来て足掛け9年になりました。最初は「人生で一度くらい日本ではない国で生活してみたい」「最低一年は暮らしてみよう、それでダメだと思ったら帰国しよう」という感じで、行き当たりばったりな部分がかなりある渡加だったように思います。

最初の一年が過ぎた頃、カナダでの生活が思ったより長くなる流れになりました。それで今までの自分の学歴・職歴、それを以てしてカナダで取得できる資格を探したのですが、それが「獣医看護士」「獣医師」でした。

それで時間はかかりましたが、約二年前に獣医看護士資格を取得、現在はトロントに5つある救急動物病院で働いています。病院は24時間365日営業しており、常に多数のスタッフと入院患者(犬猫)を抱えています。

その病院スタッフとして、今年のクリスマスは救急病棟で外来患者の治療対応にあたっていました。

クリスマスに病院に来たい人は誰もいないと思いますが、残念ながら、今年の救急病棟は大忙し。そしてこれは珍しいことではないのです。というのも、クリスマスに家族が集い、それに併せて家族の一員であるペットも集い、多くの料理とお菓子が用意され、皆浮足立って、油断してしまうのです。

山と積まれたお菓子の中には必ずチョコレートがあるということを。そして家族の大事な一員である、フワフワの毛を持った四つ足の友達は、盗み食いがとっても上手いことを。

チョコレートは、犬猫にとっては毒になります。赤血球を破壊しますし、重篤に至った場合は神経症状を呈して(まれにではありますが)死亡するケースもあります。広く知られた中毒でもあるので、飼主さんも自分のペットがチョコレートを食べたと知ると、慌てて病院に連れて来ます。只、クリスマスには開いている動物病院が非常に少ないのです。

その夜、救急病院の来院患者は「チョコレートを食べたワンちゃん」が次から次へと来院。獣医さんは嘔吐誘発剤を処方、獣医看護士である私たちが投薬、嘔吐を確認、その後活性炭を食べさせるという繰り返しでした。院内には甘い匂いが立ち込め、嘔吐をしたワンちゃんたちはぐったりしつつも皆に良かったねと労われ、飼主さんに抱きかかえられ帰っていきました。

病院内にあった在庫の活性炭が底を尽きた頃、そして時計の針が真夜中を過ぎた頃、ようやくチョコレート・ラッシュが終了。その他、シュガーガムを食べてしまったワンちゃんとフェイスタオルを飲み込んでしまったしまったワンちゃんも来院しました。それぞれに処置を施し、クリスマスの夜が明けていきました。

クリスマスに限らず、サンクスギビングやハロウィンも中毒や異物誤飲が多くなる季節です。
皆様もこの先、休暇や集いでペットと料理とお菓子が揃う場面に居合わせましたら、どうぞご注意下さいませ。





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