リレー随筆


好きこそものの上手なれ。

Ballet Creole (バレエ・クレオ)
鵜飼 優衣


舞踊(ダンス)というものに出会って約25年経ち、その好きを続けていられる事にどれほど感謝していることか。瀬戸内海を望む、広島の厳島神社を眺めながら小・中学校生活を過ごし、母の思惑で兵庫県立宝塚北高等学校演劇科に進学し、その後、祖母の母校の神戸女学院大学音楽学部音楽学科舞踊専攻を卒業した。

縁あり、大学で教えていらっしゃった助教授からカナダで最も舞踊教育と学問の歴史の長いヨーク大学を紹介して頂き、遥々トロントのヨーク大学芸術学部で又もや舞踊を専攻することになった。ヨーク大学には2年ほど在籍し、無事卒業。最後の年にオーディションを受け、インタビューをし、ひょんな事からトロントブルージェイズでプロモーションチームのダンサー・チアリーダーとして働くこととなった。

川崎選手も在籍していらっしゃった頃で、23年ぶりの2回もの地区優勝で、トロントは湧き、シーズン中もシーズンオフも球場に毎日出勤するという幸運な時期であった。トロントブルージェイズでは3年ほどお世話になり、その後Ballet Creole(バレエ・クレオ)というダンスカンパニーで働きながら、様々な舞踊・演劇のプロジェクトに携わらせて頂いている。

と、まぁ簡単にわたしの生い立ちを書かせて頂いたが、小さい頃から舞踊家・ダンサーになりたい!と熱烈に思っていたわけではなかった。私はきっと舞踊の持つ力に魅せられてここまで舞踊を続けてきたのだと、つくづく思う。好きなことはいつまででも、いくらでもやってられるものだ。

それを可能に出来る環境があり、素晴らしいインスピレーションを与えてくれる人たち(仲間、講師、家族)が周りにいるということも好きを続けられる大事な要素だが、継続は力なりというもので好きを毎日何時間も続けていると、そのしている好きが上達し、進化しない訳がない。

仕事となると、好きだけやっていたら良いという訳にはいかないが、しかしその仕事の中に楽しみや好きを見つけ、熱中することは大切だろう。そして、人間、より上手く出来るようになれば嬉しいものだ。その好きを続けてこれたのは周りのサポートがあってからこそだと思うが、なぜこれ程までに舞踊を好きになれたのかと聞かれたら、それは舞踊が様々な表情を持っているからだ。

舞踊を通して様々な境遇の人々に会い、色々な土地を訪れた。舞踊を通して新しい自己発見をし、周りの人々との関係性を感じ考え、舞踊作品となると、作品にもよるが国や人の歴史や文化背景を学ぶことになる。同じ作品を何ヵ月も何年も続けて踊っていたとしても、毎日角度を変えて違うことを学び、新たなものを発見する機会があり、発見の底が尽きることはない。

私は演劇と舞踊教育によって、一人の人間として成長してきたと言っても過言ではないが、この2つはやはり芸術の中でも総合芸術といい、複数の芸術が重なることで完成することの出来るなんとも贅沢なものだ。

舞踊の公演をするのでも、振付、踊り手、照明、音楽/音響、舞台設備、舞台監督、宣伝と他にも様々なプロフェッショナルの分野の人たちが一体となって公演を作り上げる。会社でも一緒ではあろうが、それぞれの部署の人間が自分の仕事を懸命に取り組む。特に芸術関係の人間は大抵の人が「好き」を仕事にしているものだから、妥協し難い。少しでも自分の今の限界を超え、最高の仕事をするのが好きだからだ。

各々の人間が最高の仕事をして、お互いや他人を認め合い、自分ができるもの以上の成果が出た時の感動と達成感は、きっとお金やものでは買えない価値以上のものがある。誰もが生きがいを仕事にすることは難しいが、でも「好き」を生活の中に取り組むことは誰でもできるものなのではないだろうか。

好きをする時間を1日、または1週間のうちに少しでも意識して取り入れてみてはどうだろうか?トロントは多文化社会で踊りのクラスもスタイルも日本に比べて沢山の種類がある。前から体を動かしてみたかった方がいたら、始めてみてはどうだろう。ダンスのクラスを見ながら、年齢も人種も様々な人がダンスを楽しんでいる姿をみて心から微笑ましくなる。好きをする時間を見つけ、是非少し続けてみて欲しい。







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