カナダで事業:業界 表話ウラ話


  


第62回 研究開発拠点としてのカナダの魅力

軽工業委員会
Fujitsu Consulting (Canada) Inc.
Advanced Computing R&D Centre
木船 雅也 ・ 小川 淳二


 
 Myhal Centre for Engineering Innovation and Entrepreneurship

富士通研究所は2017年に、富士通コンサルティングカナダ/Fujitsu Consulting (Canada) Inc.に、「先端コンピューティングR&Dセンター」という新研究拠点を設立しました。トロント大学との戦略的パートナーシップの下、コンピュータのハードやソフトに関わる技術(以下「コンピューティング技術」)の共同研究(注1)を行っています。写真は、トロント大学内の弊社新オフィスのある建屋外観です 。

また富士通は2018年11月に、AI(人工知能)ビジネスにおけるグローバル展開の戦略策定と実行を担う新会社(Fujitsu Intelligence Technology)も、バンクーバに設立しています。このように東のトロントと西のバンクーバーで、それぞれ研究開発とビジネスの両面で、富士通は精力的にカナダで活動を行っています。

本稿では、先日トロントで開催されたセミナーにパネリストとして参加し多くの日系企業の方々との意見交換を通じて得た気付きと、我々の視点から研究開発を行う上でのカナダの魅力について、ご紹介したいと思います。

カナダと言えば、皆さんはどのようなものを連想しますか?

メイプルシロップ/アイスワイン/サーモンと言った食品(これがカナダだと呼べる程の名産品の種類が極端に多いわけでもなく、最近は日本帰国時のお土産選びには少々困っています…どなたかお勧めがあればお教え下さい!)あるいは、とても寒い冬(冬の天気予報の「体感温度」は風の強いトロントでは知っておかないと大変ですよね!)や、赤毛のアンの舞台ともなった風光明媚なプリンスエドワード島を、思い浮かべる方もいるでしょう。

また、カナダはG7の一員として世界経済を牽引し、2000年以降ではG7の平均を上回る経済成長率で堅調な経済成長を続け、高い国債信用格付と財政的に世界トップクラスの健全性を誇っていることを御存知の方も多いかと思います。しかし、この成長率を支えている産業分野が、農林水産業や資源産業、観光業だけではなく、情報通信やクリーンテクノロジーといった先端技術分野であることは、意外と知られていない事実かも知れません。

実際、我々の携わっているコンピューティング技術分野に関して言えば、AIや量子コンピュータの分野で、カナダの企業や研究機関が世界を相手にしのぎを削っています。

例えば、AI分野で注目されているディープラーニング(深層学習)の研究では、トロント大学のジェフリー・ヒントン教授やモントリオール大学のヨシュア・ベンジオ教授は、それぞれ「ディープラーニング界のゴッドファーザー」 、「ディープラーニングの生みの親」 として知られており、コンピュータサイエンス分野のノーベル賞とも言われるチューリング賞を2018年に授与されています。

それに加えて、カナダ政府や各州政府の積極的なIT研究投資への強力な後押しもあり、既に(弊社以外にも)多くの企業がトロントやモントリオールに進出しています。そういった土壌の中で、様々なバックグラウンドを持つ世界中の優秀なAI研究者が集う一大コミュニティーが形成されている、と言えるでしょう。

余談になりますが、皆さんの日常の生活やビジネスの周囲でも、「AI」という言葉を聞かない日が無いのではないかと思われます。

既にお気付きの方は多いとは思いますが、現在主流の「AI」技術は、全ての問題に対して「完璧な答え」を出してくれるコンピューティング技術ではありません。単純に言えば、「だいたい合っている答え」を出すものです。飛躍が過ぎるかもしれませんが、少々おおらかでのんびりしたカナダの国民性こそが、AI研究の発展の原動力ではなかろうか、と思う今日この頃です。

ちなみにトロントは、「AIのコスモポリタンシティ」というだけには留まりません。金融や医療などの多くのドメインにおいて、最先端のコンピューティング技術が現場で適用され、「疾走し続けている街」であることが、我々のコンピューティング技術の研究開発には大きな糧となっています。

冒頭で触れたセミナーに参加した際に、他の日系企業の方々とカナダでの取り組みにおける様々な苦楽を共有させて頂きました。業種の違いこそあれ、現地の研究者・技術者と言葉を尽くして議論を行い一緒に汗をかき、まさに一体となって課題に取り組んでいく姿勢の重要性を強調される方が多く、しみじみと共感を覚えました。

そのような観点を常に心に留めて行動していくことで、我々の取り組みが実を結び、社会貢献の一助となる技術が、いつの日か世に送り出されることを夢見つつ、これからも研鑽に励んでいこうと思っています。

注1: 現在、共同研究で注力しているのは、AI(人工知能)システムの一環として富士通が開発し最適化問題に特化した「Digital Annealer」技術です。トロント大学とのパートナーシップ、及びDigital Annealer技術の解説については、下記URLを御参照ください。


日本語サイト
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2017/09/20.html
https://www.fujitsu.com/jp/digitalannealer/news/201804-tronto-lab/
https://www.fujitsu.com/jp/digitalannealer/



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