「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー



<第190回>
Honda of Canada Mfg.
ホンダカナダマニュファクチャリング
大江 健介 President

トロントより北西へ1時間強、Allistonにあるホンダカナダマニュファクチャリング(以下HCM)の大江社長にお話を伺って参りました。ドライブの道中、人口1万~3万人程の小さな町を通りながら、この地域で約4200名を雇用しているHCMさんの貢献度の高さを感じました。商工会会員企業としても一番多い36名に会員登録を頂いております。

今年の4月にご着任された大江社長と、2017年モデルのCR-Vと共に写真を撮らせて頂きました。ホンダさんの強さの理由や、会社の取り組み、これまでのご経験やプライベート等、和やかな雰囲気の中じっくりとお話し頂きました。



(松田)御社の事業内容をご説明ください。

(大江氏)HCMは、カナダにおけるホンダ四輪製品の生産部門として、販売部門であるホンダカナダと共に、Honda Canada Inc.(HCI)を構成しています。工場は現在3つあり、1986年に量産を開始したPlant 1ではCivicを、Plant 2ではCR-Vを生産し、Plant 3はそれらに搭載するエンジンを生産しています。今年Plant 2は20周年を、Plant 3は10周年を迎えることができました。

また、ホンダの基本的な考え方として「需要のあるところで生産する」という思想があります。カナダでは、現在16種類の車種を販売しており、それらの北米域内供給率は90%以上と、北米・カナダに根付いたオペレーションを展開している点も、特徴の一つと思います。

(松田)生産能力や生産実績はいかがでしょうか。

(大江氏)完成車の年間生産能力は現在約40万台、エンジンは約24万3千台です。

2017年8月に完成車の生産累計800万台を突破するとともに、2017年12月にはCIVIC単一車種として累計500万台を、今年の2月にはエンジン累計200万台を達成しました。

CIVICは、1988年から20年連続でカナダのベストセールス記録を獲得し続けており、それを記念し今年の4月にはHCIとしてカナダのディーラーの方々を日本にお招きして、日本の文化やホンダについて理解を深めてもらう機会を設けました。お陰さまで今年も現在の売れ行きが維持できれば21年連続を達成することができそうです。

(松田)現在、Plant 1の塗装工程部分の新建屋を建設中とのことですが、経緯や目的を教えて頂けますでしょうか。

(大江氏)一般的に、塗装工場は25年から30年で老朽化対応が必要と言われております。Plant 1は今年で稼動から32年経ちましたので、一部工程を更新するとともに幾つかの改良点を導入することにしました。

第一に、環境に優しい塗料の使用や異なるブランドの塗料の使用が可能となる技術を取り入れました。第二に、自動車の塗装は塗料を塗布し焼き付けて塗膜を形成する焼き付け塗装という工程を何度か繰り返しますが、その工程を刷新することで塗料の使用量を削減するとともに、焼く時間を短縮できる技術も取り入れました。

その結果、エネルギー使用量の削減に繋がり、当該工程で発生するCO2を現在の60%ほどに抑制することができるようになります。コストダウン、作業時間の短縮、資源の削減、そして環境にも配慮した自動車製造が行えるようになります。

設備は一度設置すると改良が難しく、特に塗装工程はブースを含めて一連で入れ替える必要があるため、大変大掛かりなプロジェクトになります。アソシエイト達にとっても、勤務する工場の塗装設備が変わることは、仕事人生の中で最初で最後かもしれません。ベテランから若いエンジニアまで自分たちの意見や技術を取り入れた設備をつくろうと士気が高まっているのを感じます。

もちろん立場上、コストの観点や事業全体の観点から言わざるをえないこともあるのですが、現場では職位にとらわれることなく、自由闊達なコミュニケーションを取ることが当社の強みでありますので、それに引き下がることなく新たなアイデアを次々と提案してくれます。

単に、より良い自動車づくりのためだけでなく、こうした工程を通じてアソシエイトを育ててゆく点、そして弊社のみならず現地の設備メーカーの方々にも協力して頂いておりますので、カナダの経済と人材育成にも僅かながら貢献できているという点も含め、大変有意義なプロジェクトだと感じています。

(松田)2015年より、カナダがグローバルリード拠点としてCIVICの生産を開始されましたが、現在のご様子はいかがでしょうか。

(大江氏)PLANT1で生産しているCIVIC、PLANT2で生産しているCR-Vの2機種は、世界中の様々な国で販売しており、ホンダの中でもグローバル基幹機種と言われております。2015年にHCMがCIVICのグローバルリード拠点として生産を開始し、現在順調に生産を行っておりますが、モデルのライフサイクルである5~6年先を見据えてCIVICとCR-Vの後継車を立ち上げるために既に段取りを開始しています。

自動車というのは技術の進化と共に、5~10年先を見越したデザインの進化やニーズの進化を踏まえて開発をする必要があります。その進化を現在と同じ設備では作れないこともありますので、設備の入れ込みを含め、早めに行動していく必要があります。

特にカナダは冬場の工事がしづらいので、より早めに動き始める必要があります。そのような点も含めて、アソシエイト達も北米全体を牽引しているという志を強く持って業務を遂行してくれています。

(松田)ついこの間立ち上がったばかりと思ってしまいますが、既に次の事を始められているのですね。御社は従業員の方の職場づくりにも力を入れていらっしゃるとのことですが、どのようなことをされていますか。

(大江氏)作業効率を向上させるために自動化設備を取り入れたり、作業負荷軽減のためにエルゴノミクスの観点から改良を行うなど、活力溢れる生産活動が出来るようにアソシエイトの働く環境づくりに取り組んでいます。

例えば、車のボンネットを開いたところをイメージして頂くと、骨格があるのが想像できるかと思います。

従来の機種は、溶接で強固な骨格を先につくり、そこに様々な部品を組み付けていく方法を採っていました。下からエンジンを入れ込んだり、上からネジを締め付けたりという作業を行うのですが、ボンネットは広いため、アソシエイトは身体全体を伸ばしたり、車体の下から上を見上げて作業をせざるを得ませんでした。

そのため、最初に部品を組み付けてから、後で骨格を結合しけて一つにする方法に変更しました。そうすることで、無理な姿勢を強いる必要はなくなり、身体に負担のかかる作業を無くすことができました。

骨格の設計を変えるというのは、車の仕様を設計する段階から変えなければなりませんので、研究開発拠点を含めた大プロジェクトで、かなりの時間を要しました。ホンダは現在この製造工程を全世界的に展開中です。

ホンダフィロソフィーの一つに、「買う喜び」「売る喜び」「創る喜び」と『三つの喜び』を掲げているのですが、つくる人にもできる限り楽しく、充実感を持って仕事に励んでもらえるようにと、当社はこうした開発にも力をいれています。

私は前職では研究開発拠点のボディエクステリア設計のマネジメントに就いていましたが、正に先ほどの申し上げた設計変更の推進をしておりました。今までは開発側として全世界のホンダの生産拠点に展開をかけてきましたが、奇遇ながら今度はその受け側として導入することになりました。アソシエイトが働く姿を見ながら、良いことをしたなぁと1人で密かに思いながら、モチベーションをあげています(笑)。

(松田)これまでも何度かホンダフィロソフィーについて触れられていますが、企業理念や経営哲学がこれほどまでに根付いている企業は多くないと思います。その秘訣はどこにあるのでしょうか。

(大江氏)ホンダフィロソフィーとは、教育されて覚えるものだけではないと我々は考えています。もちろん研修も大変充実しており、そこで学ぶことも必要ですが、多くの部分は日頃の仕事の中で実際に目にして経験して培われていくものと捉えています。

例えば、入社1日目の新人から社長まで、アソシエイト全員が着ているこの白い作業着ですが、白い作業着ですと汚れが目立ちます。お客様の車に触れる作業着が汚れていてはいけない、汚れが目立てば汚さないように努め、設備も綺麗に使うようになる、といった本田宗一郎氏の想いが込められています。

そして、当社では社長でも個室や指定の駐車場はありません。そして、先ほども申し上げたように、当社には新入社員でも自分の意見を出して、上の役割の人もきちんとその意見を聴き、その上で一番良い意見を採用する、という文化が根付いています。

また、本田宗一郎氏の語録の中に「失敗からしか良いものは生まれない」というものがありますが、失敗の報告もきちんと行える環境が出来ています。もちろん失敗をした時は叱り飛ばす時もありますが、その後にフォローを入れたり、失敗を今後の糧にできるようにと支えてくれる良き先輩が周りにいます。

実際に私も若い頃に上司からそのような行動を示されてきましたので、あらゆる局面で同じような行動や判断をしてきています。そのような好循環から全員が自然とフィロソフィーを体得しているところが、ホンダの強さかもしれません。

カナダ人は、真面目で人に優しく面倒見が良いという基本的な気質があります。そしていくつになっても意欲的に色々な活動に取り組み、後輩や新人へもしっかりと行動で示してくれています。ホンダフィロソフィーとカナダ人気質が上手く融合し、設立から32年間で着実に根付いていることを感じます。

(松田)長い歴史の中で自然と受け継がれてきたからこそ、身体に染み入るように浸透されているのですね。では、大江社長が今後注力していかれたいことはどのようなことでしょうか。

(大江氏)HCMは、これまで支えてきてくれたアソシエイトのおかげで、北米中の生産拠点の中でも収益体質や生産効率が良く、第三者機関やホンダ内の評価で各種アワードを受賞するような非常に良い状態でおります。

しかしながら、関税や新たな競合の参入、環境規制など、自動車業界を取り巻く環境は今後さらに厳しくなっていくと認識しています。そのような状況下で、末長くカナダで仕事をさせて頂くためには永続的に努力していかなければなりません。

具体的には、お客様に喜んで頂ける車、品質が安定しバラつきのない車を提供し続け、すべてのお客様からカナダで作られた車は良いものであると認識して頂けるようになることを念頭に邁進していきたいと思います。

そのためには、アソシエイト一人ひとりが与えられた役割に対して、自分の持っている力を最低でも100%出し切って仕事をしてもらうようお願いしています。

これだけ大きい会社ですと、細かな調整作業やサポート業務など裏方として働いてくれる仲間もたくさんおりますが、どのような役割であっても各々がその道のプロフェッショナルになり、プロとして誰からも誇られ自らも誇れるような、そのような気持ちで仕事に取り組んでもらえると嬉しいです。1人の力では足りなくても、4000人のアソシエイトの100%を合わせれば、強くなれるということを伝えていきたいと思っています。

(松田)それでは、大江社長のご経歴についてお伺いしたいと思います。

(大江氏)出身は栃木県で、大学を卒業後に本田技研工業㈱に入社しました。ホンダの四輪研究開発拠点は栃木県にあることもあり、栃木に戻り車の設計や開発をすることを望んでいたのですが、配属先は埼玉製作所でした。

自動車は約4万点の部品から作られていますが、その内約80%はお取引先様から購入しております。それらの部品を安定的に供給して頂けるように品質や配送を管理する仕事をしていました。その後は工場内の検査工程のマネジメントや、事業企画をする業務にも携わりました。その後、入社した時の夢が23年かかって実現し、5年前に栃木の研究開発拠点で開発業務に携わることになりました。

入社以来、開発業務、工場での品質業務、マネジメント業務など様々な仕事に携わらせて頂いたことは弊社の中でも珍しいことで、車を作り上げるための様々なプロセスを一通り経験させて頂き、大変有り難く思っています。そして、初めての海外赴任で2018年4月にカナダに着任しました。

(松田)ご赴任としては初めての海外なのですね。カナダに来られてみて感じたことは何でしょうか。

(大江氏)ホンダの主要拠点であるアメリカ、新興拠点であるアジアは出張として何度も訪れましたが、カナダは初めてでした。仕事を通じて、カナダ人は大変協調性と主体性があり、人に優しく、正直驚きました。街中でも道を聞けば本当に丁寧に教えてくれますし、安全面も含めて非常に良いところだと感じています。

また夏は本当に気持ちよいですね。短いですが(笑)。先日は11月なのにマイナス24度という洗礼を受けましたが、そのような中でも季節ごとの楽しみを知り気持ちが安らげるのは、カナダ人の気質の良さが影響しているのかと思います。

(松田)大江社長がこれまでのご経験で最も印象に残っているお仕事についてお聞かせ頂けますでしょうか。

(大江氏)研究開発拠点での開発業務は私にとって大変大きなターニングポイントでした。開発業務は、ともすると5年10年さらに先を見据える一方で、足下も見ていなければなりません。

ホンダフィロソフィーの良いところでもあり難しいところでもありますが、「私はこれをやりたい」、「お客様のためにはこれをしなければならない」など、色々な想いや考えを持つ者がそれを言葉にします。

しかし全て叶える訳にはいきませんので、時代の潮流を読みつつ現状も見据え、お客様のニーズの優先度など様々な要素を摺り合わせながら戦略的に決断をすることは、難しさもありながら面白みもあり、大変良い勉強になりました。お客様に喜んで頂ける商品をつくることの難しさを肌をもって感じたことは、その後のキャリアの大きな糧となりました。

(松田)大江社長がお仕事を進める上で心がけていらっしゃることはどのようなことでしょうか。

(大江氏)自分自身に対してもアソシエイトに対しても常日頃言っているのは、「お客様のために」ということです。外観を少しでも良く、売価を少しでも安くなど、どのような形でも、迷った時の判断の軸として「これはお客様のためになるのか」ということをまず考えることを基本としています。

また、先ほども申しましたが、大小様々な役割がある中で、自らの役割に対して最低でも100%の力を発揮すること。100%力を出していると新たな成長や次の一手など色々な気づきが出てきます。そうした気づきを各々が咀嚼し、更なる成長に繋げて欲しいと思います。

そして、その役割のプロになること。例えその役割が期間限定だとしても、その期間中はその役割のプロを目指すことを指導しながら、自らにも言い聞かせています。これも自分の中で体得した自分なりのホンダフィロソフィーなのかもしれません。

(松田)プライベートなことも少しお伺いしたいのですが、ご趣味は何でしょうか。

(大江氏)趣味はゴルフです。埼玉にて現場のマネジメントを始めた40代前半頃から始めたのですが、成績が出ずに悔しくて夜中に練習場に通ったこともありました。毎日のように練習場に行き、毎週末コースを回っていた頃に比べるとカナダに来てからは忙しく、今シーズンは20回くらいしか回れませんでした。来シーズンを今から楽しみにしています。

ただ、冬場はゴルフができないのが悩みどころです。コンドミニアムにジムやプールが付いていますが、単純な運動だと飽きてしまうので、学生時代にしていたテニスを始めるなど冬場の過ごし方に今試行錯誤しています。

(松田)運動以外のご趣味はありますか。

(大江氏)美味しいお酒を飲むのも大好きです。どんなお酒でも飲みますが、ここ数年好きなのは芋焼酎で、屋久島の「三岳」です。今は家内が帯同してくれていますが、カナダ赴任前は5年間単身赴任をしていましたので、和食を自分で作って家飲みをするのが好きでした。それを肴に焼酎をお湯割りで飲むとたまらないです。冬場にやることがなく、昼間から飲み始めないように気を付けたいと思います(笑)。

(松田)冬場は家に籠りがちになってしまいますので、危険ですよね。最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願い致します。

(大江氏)我々は、今後もカナダに根付き、カナダの人たちと共存共栄で事業運営をしていきたいと思っています。皆様からも知恵を貸して頂き、様々な形でご協力を頂ければと願っております。是非協力し合い、日本とカナダの経済発展に貢献していきましょう。

(松田)インタビューは以上となります。本日はお時間を頂きありがとうございました。




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