「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー



<第183回>
(個人会員)野口 洋美 /
ファミリー・ロー・パラリーガル
nathens, siegel BARRISTERS LLP

今回の代表者インタビューは、個人会員としてご入会頂いている、野口洋美氏にお話を伺いました。以前はNPOの代表として活躍されてましたが、今年6月よりファミリーロー専門の大手法律事務所 nathens,siegel BARRISTERS LLPへ所属されることとなりました。お子さんを連れてカナダ、バリーへ移住し、パラリーガルとしてご活躍することとなった経緯などお話頂きました。


(平林)今携わっていらっしゃるお仕事の内容をご紹介ください。

(野口氏)オンタリオ州公認のパラリーガルで、ファミリーロー(家族法)を専門に扱っています。オンタリオ州ではパラリーガルは一人ではファミリーローを扱うことはできないため、弁護士と一緒に離婚などの家族問題を抱える日本人をサポートしています。

私の知る限りオンタリオ州には、日本語でファミリーローを扱うことのできる弁護士がいないため、日本語で法手続のお手伝いさせていただいております。

(平林)ファミリーロー専門とありましたが、どういった内容のサポートが多いのでしょうか。

(野口氏)国際結婚の場合、結婚する前に交わされるマリッジ・コントラクト(結婚契約書)の作成が増えています。結婚前に婚姻後の離婚を想定して契約書を取り交わすのは、日本人には馴染みが薄いのですが、カナダでは一般的です。特に子供がある場合の再婚では、子供の相続権を守るためにマリッジ・コントラクトを作成します。

しかし、やはり最も多いのは、離婚を前提としたセパレーション・アグリーメント(別居協議書)の作成です。日本語でのサポートとしては、まず弁護士との面談前に準備しておくべき書類や心構えなどについてお話します。

また、英語が堪能な方であっても法律の話はとても複雑ですので、専門家の立場で弁護士面談に立ち会い、弁護士の法的アドバイスの解説をさせて頂いております。さらに英語でのコミュニケーションが難しい方の場合、お話はすべて日本語で聞かせていただき、セパレーション・アグリーメントの作成に必要な書類の一切を弁護士の指示を受けながら作成します。

(平林)実務を行っていく中で日本とは異なる部分はありますか。

(野口氏)私は日本で法律の仕事をしていたわけではありませんが、日本では離婚の際には双方と保証人がサインをし役場に届けることで離婚が成立するかと思います。

ところがカナダでは、財産、親権、養育費、片方が無職であった場合にはその金銭的なサポートなどかなり細かい内容まで双方の合意がなされない限り離婚は成立しません。法的に離婚をする場合には、離婚をしようと決めた日(どちらかが夫婦としての関係が破綻しているとみなした日、同居・別居問わず)から1年の経過が必要となります。

また日本の場合は、離婚が一方からの申し出の場合、相手の浮気や暴力など原因を立証しないと離婚することは難しいですが、カナダでは明確な理由がなくても離婚が可能で、例えば一人になりたいといった理由でも離婚が認められるという点が大きな違いだと思います。

(平林)日本とは離婚の手続きがかなり異なり、時間も費用もかかりますね。

(野口氏) 日本生まれで成人してからカナダに移住した場合、カナダの離婚手続きに関してまったく不案内であるのが普通です。ですから離婚に瀕して、日本と全く異なる離婚までの長い道のりに圧倒される方がたくさんいらしゃいます。

しかし、別居から1年経って離婚を申請する時には、セパレーション・アグリーメントで決められたことが、そのまま離婚条件として認められ、所定の申請料を添えて申請書を家庭裁判所へ提出することによって離婚が成立します。

(平林)御社の強みはどういった部分だと思われますか。

(野口氏)日本語で離婚の法手続きの実務ができるということです。パラリーガル試験に合格した日本人は他にもいらっしゃると思いますが、実務経験を持つ方は限られるように思います。ファミリーローの分野の知識や経験を持ち、さらに実務に携わったことのあるパラリーガルが法手続きに携わる点が、最大の強みだと思います。

nathens, siegel BARRISTERS LLPには、5人の弁護士がいますが、そのうち二人は、弁護士協会が最も有能で経験値が高いと認定した「スペシャリスト」と呼ばれるエキスパートです。一方、若いジュニア・ロイヤーも所属し、シンプルな協議離婚手続をフラット・レートで提供しています。

有名な大手法律事務所でありながら、リーガルフィーはかなりリーズナブルですし、特に日本人移住者女性に対しては、過去に私が関わっていたNPOとの関係から割引も考慮しています。

(平林)今後取り組んでいきたいことはありますか。

(野口氏)パラリーガルは近い将来、弁護士がいなくとも、ある程度の離婚案件をお受けできるようになることが内定しております。法改正後は、今まで以上に幅広くサポートさせて頂けると思います。

(平林)パラリーガルになろうと思ったきっかけはありますか。

(野口氏)私自身がカナダで離婚を経験した頃から、日加タイムズ(*廃刊)の連載で離婚や一人親の子育てをテーマにしたコラムを書かせて頂いておりました。それをきっかけに色々な方が声をかけて下さり、離婚に関するご相談を頂くようになりました。

そのような相談にきちんとお応えできるようになるには、経験だけではなく知識が必要だと考え、末の子が高校へ入ってから大学へ戻り心理学を学びました。卒業後、修士課程に進み、ハーグ条約にまつわる日本人移住者女性と国際離婚に関する修士論文を発表しました。

修士号取得後に、私に何が出来るのだろうと考えた時、やはり原点に戻って国際離婚を経験した日本女性たちをサポートしたいと思いました。そこで離婚を経験した女性たちと一緒にNPO:APJW(Association of Post-divorce Japanese Women )を立ち上げました。

NPOの活動を通じて、離婚に瀕する日本人が最も必要としていることは、日本語による法的支援であることを再確認しました。これが直接のきっかけとなり、再度大学に戻り法律の知識を得た後、オンタリオ州のライセンス試験に挑戦しパラリーガルになりました。

(平林)今までに何かご苦労はありましたか。

(野口氏)ご相談者の方が望まれた結果が出せた時はやりがいを感じます。ただ先ほどもお話したとおりカナダと日本ではかなり法律も異なりますので、望みが叶わない場合もあります。身近な例としては、離婚後に子供を連れて日本へ帰りたいと望まれるケースです。

カナダでは共同親権が一般的なため、父親の同意なく子供を連れて帰ることは難しいとお話しますと、何か手立てがあるのではないか、何とかならないのかとおっしゃいます。残念ながら法律を変えることは出来ませんので、カナダの法律や国際私法(ハーグ条約)のことを丁寧にご説明させて頂きます。

(平林)では出身から今までのご経歴をお願い致します。

(野口氏)岡山の倉敷市に高校までおり、その後大学で東京へ上京し、カナダへ来るまで東京におりました。1991年にほとんど英語を話せない状況で子供を連れて移住しましたので、駐在員の奥様がされるのと同じような経験をしてきたと思います。

また滞在地がトロントから100kmほど離れたバリーという場所でしたので、日本人もほとんど見かけることなく、言葉も出来ず、人から孤立してしまうような状況で、唯一日本語が話せるのは娘だけという状態でした。そのため子供を連れて生活が大きく変わることや、一から英語を学ぶ辛さも身をもって経験しています。

(平林)今まで携わったお仕事の中で印象に残っていることはありますか

(野口氏)ライターとしてのキャリアと本の出版です。来加当時、日加タイムズでリポーターを募集していることを知って、バリーでできるアイスフィッシングやクロスカントリースキーなどの情報を投稿するようになりました。そして、離婚してから数年経ってその経験を綴り投稿したところ、編集長から連載のお話を頂き、日加タイムズの廃刊まで掲載を続けさせて頂きました。

その後、日系ボイスでも連載、今もTORJAで連載させて頂いています。カナダに来てからずっと雑誌や新聞に記事を書かせて頂き、インクで活字になるというのはとても特別なことだと今でも感じています。ですから日加タイムズで連載していた「離婚駆け込み寺」を日本の新聞社から出版出来たことが、とても印象深いことです。

(平林)お仕事を進める上で大切になさっていることはありますか。

(野口氏)きちんとNOと言えるように心がけています。出来ないことはしっかりNOと伝えて、次のステップはどう進んで行ったらいいのか、きちんと説明するようにしています。

(平林)好きなスポーツや趣味などはありますか。

(野口氏)冬はスキー、春夏秋はカヌーやパドルボード、ハイキング、マウンテンバイクなどをしています。自宅からスキー場が近いですので、冬はよく行きますね。もともと体育会系で、今でも身体を動かすことが大好きです。

(平林)最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願い致します。

(野口氏)仕事の上では、会員の方々とはご縁がない方が良いですよね。けれども、もし家族の問題で法的なお手伝いが必要になった時、例えばお友達にたずねられた時など、日本人パラリーガルのいるファミリーロー専門法律事務所があることを心の片隅に覚えておいていただければと思います。

(平林)インタビューは以上となります。本日はお時間をいただき、ありがとうございました。










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