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第59回 コンベア ベルトのはなし--意外と知られていない用途

重工業委員会
Connect Conveyor Belting Inc. 白井 則夫



コンベアベルトというとどのようなものを思い起こすでしょうか?

私自身もベルトメーカーに就職するまでは、学生時代にアルバイトで入った工場ラインで利用されていた右から左へと物を運ぶベルトを思い浮かべただけで、ここに特別な技術などがあるとは思ってはいませんでした。おそらく多くのみなさんも同じだと思います。

ところが、驚くほど様々な用途で、それぞれに応じた性能を満たすための技術・品質などが求められ、世界中で利用されています。

ベルトコンベアにはどんな性能が求められると思いますか?という質問をしてみるとよくある回答として、表面のグリップが高いもの。強度が強いもの。といったところが返ってきます。

もちろん間違いではありませんが、もしベルトメーカーの営業マンが何も考えずに同じ回答をすると叱られてしまいます。

例えば表面のグリップについては、傾斜があるコンベで下から上に物を運ぶ用途ではグリップの高い材料が利用されますが、物流の仕訳ラインで段ボールに入った荷物がコンベア上で仕分けられる際には、スムーズな仕分けを行うために滑り性の良い材料が必要となります。

強度については、長くて重いものを運ぶコンベアでは強いものが求められるということで良いのですが、同時に曲げにくくなってしまいます。ベルトはプーリと言われるローラの上に巻き付いて動くので、ベルトが硬いということは、このローラーを大きくする必要があったり、繰り返される曲げに対する寿命が短くなってしまいます。強いだけだけでなく、柔軟性も求められます。

身近なところにあるお金を出し入れするATMの中にもベルトが利用されているのですが、例えばこの用途に高いグリップ力と強度が高いベルトを利用しようとするとどうなるでしょうか?

ATMの中にはお札が貯蔵されている金庫があり、このお札の出し入れをする際に上下のベルトで挟んでお札を運んでいます。機械の中には偽札を判別する機構や異なるお札用の金庫があり、お札の流れるラインは一つではありません。

小さな機械、限られたスペースの中で真っ直ぐ運ばれるわけではなく、何度も曲げられながらお金が出し入れされています。

 
 ATMの内部で利用されるベルト


この中で、上下で挟んだベルトのグリップ力が高すぎると、ローラー上で発生する速度の違い(外側のベルトが早くなります)よにってお札がクシャクシャになって引っかかってしまう(ジャム)が発生してしまいます。

また、強度が高すぎると省スペースで部品を小型化したいのに利用できなくなってしまいます。こういった用途には、グリップ力が高すぎず・低すぎない材料で、強度も用途に応じて必要なレベルに抑えて伸縮性のある材料を用いて、レイアウトが固定された複雑な機構の中でも取付がしやすいものが利用されています。

ATMは日本国内ではエアコンのある場所で動いていますが、海外ではお金の出し入れは屋外もしくはそれに近い環境で利用されていることがあり、カナダやヨーロッパなどの寒い地域から、東南アジアなどの高温多湿の中でも問題なく動く必要があります。

他にも、郵便区分機と言われる、年賀状などの郵便物を大量に処理するための機械や、紙管巻、トイレットペーパーの芯、チップスの容器などは、紙を何層も重ねながら送り出して製作しており、外側からしっかりと圧力を加えながら送り出すためにベルトが利用されています。

   
 郵便区分機の内部で利用されるベルト  紙管を巻きつけるベルト


ベルトは、本当にさまざまな用途に利用され、工場や日常の中でそれぞれの仕様に応じて利用されているのです。

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