「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー




<第158回>
近藤 道夫 President
FUJIFILM Canada Inc.

富士フイルムカナダの近藤社長にインタビューをして参りました。近藤社長には、今期の商工会理事、及び総務部長を務めて頂いております。

オフィスはミシサガにあり、会議室には富士フイルムさんの歴代の製品が展示され、またギフト製品のサンプルも並べられていました。これらのギフト製品は、オンラインや後述の店舗にて注文ができ、オフィスビルに内設される工場にて加工されています。

拡大され続けている富士フイルムさんの事業、Bloor x Spadinaにオープンしたコンセプトストアやお薦めの商品について、また近藤社長のご経歴やプライベートについてもお伺いしてきました。



(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いいたします。

(近藤氏)まずグローバルとしての富士フイルムについてご説明します。富士フイルムは、写真フィルムの国産化を旗印に1934年に設立されました。当初は写真フィルム、印画紙など写真感光材料の製造から生産を始め、印刷用感光材料、機器、医療用X線フィルム、薬品等領域を拡大していきました。

2000年に入ると、デジタル化が急速に進展し、フィルム市場が急速に縮小、会社としては大変な危機の時代を迎えました。その時にそれまで培ってきた技術を棚卸しして、強みを活かす事のできる多角化を推進しました。

そのうちの一つはヘルスケア分野で、従来はX線フィルム等の診断領域からビジネスをスタートしていましたが、多角化にあたり、機能性化粧品や、サプリメントといった予防の領域に参入、そして2008年には日本の創薬メーカーを買収し医薬品事業に本格参入、最近ではIPS細胞を開発、生産する会社の買収など治療分野への参入と領域を拡げてきており、トータルヘルスカンパニーを目指して、変革を遂げてきています。

私は2年前まで富士フイルムノースアメリカにおりました。ここでは既存の写真関連事業である、デジタルカメラやグラフィック製品を取り扱っているのですが、アメリカにはそれ以外に現在14社の関連会社で、ヘルスケア関連の会社やインクジェット用のヘッド製造を行っている会社等、様々な事業を行っており、富士フイルムのグローバル化に大きく関わってきていると感じられます。

富士フイルムカナダでは、既存の写真関連事業に関するものを取り扱っています。現在事業の3つの柱は、写真用の材料や機材を扱うイメージング事業部、デジタルカメラが中心のデジタルイメージング、印刷用の材料・機材といったグラフィックシステム、の3事業があります。富士フイルムカナダの設立は1979年です。

(松田)前回取材をさせて頂いた2年前から、何か変化はありましたでしょうか。

(近藤氏)2年前からの変化と言いますと、販売製品構成の変化が顕著かと思います。2年前はコンパクトデジカメの売り上げが下がり始め、レンズ交換式等のハイエンドカメラへのシフトを進めていました。現在は防水カメラ等に汎用コンパクトカメラのラインアップを絞り込み、Xシリーズの名称で、レンズ交換式のミラーレスカメラとプレミアムコンパクトのハイエンド機が中心です。

また、日本では“チェキ”という名前でご高評頂いているInstaxというインスタントカメラが、この2年で年率約3割と売り上げが大変伸びました。カメラの普及率が上がるにつれて、フィルムの売り上げも増えています。

写真の世界でいうと、ギフト用製品の比率が増えてきています。人気のあるフォトブックだけでなく、アルミにプリントする事で光沢が美しいメタルプリント、ブランケットやTシャツ等のテキスタイルプリント、マグカップ等の陶器やスマートフォンケースにも写真プリントができ、これらの商品はパーソナライズドギフトとして好評を頂いています。

(松田)ギフト製品は私も気になるものが多いです。それでは、御社の今一押しの商品をご紹介いただけますか。

(近藤氏)デジタルカメラですと、昨年発売されたXシリーズのフラグシップのX-T2という商品です。文字通りミラーレスは内部にミラーが無く、一眼レフに比べると構造的にカメラのサイズを小さくする事ができるので持ち運びにも不便が無く、一方でフィルムで培った技術を活かした、高級一眼レフにひけを取らない高画質に評価を頂いており、現在最も人気のある商品です。

X-T2はフラグシップなので価格もボディが2000ドル近くとそれなりになってしまうのですが、もう少し気軽に楽しみたい方に入門機としてお薦めなのが、新製品のX-A3です。ボディが800ドル以下で比較的手に入れやすい価格ですが、レンズ交換式で、色々なレンズを使って撮影を楽しんで頂くことができます。そこまでカメラに詳しくないという方でも、オートモードを使えばシャッターを押すだけで色々なものを綺麗に撮影でき、本格写真を楽しんで頂くには絶好のカメラです。

近年、日常の撮影はスマートフォンという方が増え、カメラを買われるのはカメラ好きの方、という状況になってしまっていますが、カメラは撮影するものに応じてレンズを変えたり、レンズにこだわってみたり、シャープに撮ったりぼかして撮ったりと、スマホで撮るのとは楽しみ方が違います。そしてやはり仕上がりが全然違いますので、少しでも満足のいく写真を記録に残すためには、是非一度良いカメラを試していただきたいですね。

(松田)昨年Bloor x Spadinaにオープンした、コンセプトストア“Annex Photo by FUJIFILM”について、お話を頂けますでしょうか。

(近藤氏)現在、富士フイルムではコンセプトストアを世界各地でオープンしており、2017年5月現在で世界20カ国に36店舗を展開しています。ブロアの店舗もその一つです。第1号店は2014年2月に、東京の原宿にオープンしました。

コンセプトストアを設立するに至った理由の一つには、デジタル化の発展、またスマートフォンやSNSの普及により、写真を現像することなくSNSでシェアするのみといった方が増えたため、写真プリントの需要が伸び悩み、既存の写真店さんが苦労されていたことが背景にあります。

元々写真店さんやプリントショップは、お客様から同時現像でフィルムを受け取り、現像機で写真を現像し、できた写真をお渡しする、という写真を現像する機械さえあれば良いといったご商売でした。

しかし、デジタル化が発展し、ギフト製品と呼ばれるフォトブック、布製品やマグカップ等、様々な素材への印刷に需要がでてくると、それに対応するには、まずソフトウェアや機械などのインフラを整えなければなりません。しかし写真屋さんも過去に経験のない事業に対してなかなか投資をできない、という状況がありました。

そのために当社では、富士フイルムの様々な製品とソフトウェアを置き、お客様に実際に試して頂ける場所、コンセプトストアを作ることで、“我々の製品を使用することでどのようなサービスを提供できるのか”、そして同時に来店されるお客様の生の声を集め、“どのようなサービスを提供すればお客様に喜んでもらえるのか”ということをモデルケースとして示すことにしました。

当初は、メーカーである富士フイルムがお店を始めてしまうと、既存の写真店の方々から不満がでる可能性があるかもしれないということを心配していましたが、オープンしてみると、「よくわかるし参考になる」と写真店からも歓迎をしてもらえ、実際に意味がある事業だということを実感しました。

そのため他国にも展開していこうということになり、2号店をコロンビアに出店し、その後中国、スペインのバルセロナを始め、アジア、欧州、ブラジル等世界各国に展開、2016年にはニューヨークのマンハッタンにもオープン、直後にカナダでオープンしました。各国で、その国に合わせた写真商材をご紹介しています。

(松田)コンセプトストアをオープンされて、新しく発見したことや驚いたこと等はありますか。

(近藤氏)お客様の趣向が直にわかりますので、国や年代による違いが見えるのは面白いですね。特に若い世代の趣向というのは興味深いです。

例えば写真というのは、皆さんご存知の長方形で、光沢があるGlossyという質感の需要が90%です。しかし今の若い世代の方々は、形も正方形だったり、昔よくあった白い縁取りのあるもの、また光沢のないマットの質感のほうが、アーティスティックで良い、という風に思われるようです。実際にコンセプトストアでは、我々の予想に反して正方形のマットの写真の方が良く売れており、驚きました。

私もできる限りお店に足を運ぶようにしていますが、やはり実際に見てみると、何故この商品が人気があるのか、という理由が明確になり、「なるほど」と納得することが多々あります。そういったことを理解することで、写真店の方々に教えて差し上げられますし、生の情報を活用していける場ということで、コンセプトストアは大変有意義な事業だと思っています。

(松田)それでは、御社が今後力を入れていかれることはどのようなことですか。

(近藤氏)メインで行っている既存の3事業を伸ばしていくということは、引き続き注力していきます。また、先ほどお客様の趣味趣向について申し上げましたが、特に若い方の興味は流れが速いです。私は東京や工場を含め、様々な場所で勤務しましたが、ここでの役割の一つは、出来る限りお客様の生の声を拾い、今後の製品展開に反映させていくことであり、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。

写真関連事業は、数年でも大きな変化が起こりえます。どういうものがこれから受け入れられるのかをきちんと聞き、お客様に喜ばれるものをお届けしていくこと、そして新しいことを行うためには、今までと同じやり方だけでは不十分ですので、どのようなものをどのような方法で提供していくのかを考えていかなければいけないと思っています。

(松田)近藤社長のプライベートについてもお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらでしょうか。

(近藤氏)出身は兵庫県神戸市で、学生時代はずっと神戸におりました。私の入社当時はバブルの終わりの方でしたので、どちらかというと売り手市場でした。金融関係が人気でしたが、私は感覚的にメーカーに興味を持っており、様々な企業を比較した時に富士フイルムに魅かれ、入社をしました。特別にカメラや写真がとても好きだったという理由ではなかったんです。

入社後最初の配属地は大阪でした。当時は磁気材料部と言っていましたが、コンピューター用の記録メディアの営業に配属されました。その後東京に異動になり、東京でも同じ営業担当でしたが、その後工場に移りまして、工場の生産管理の仕事をしばらく行いました。

生産管理を行う中で、アメリカ・サウスカロライナにある工場の事業管理担当として、初めての海外赴任をしました。アメリカで6年間過ごし、一度日本に帰った後は写真関係の仕事をするようになりました。海外マーケティング担当ということで、北米・南米の米州担当を4年行い、ニューヨークに赴任しました。ニューヨークでも引き続き写真関係を担当し、そして2016年8月にカナダに着任しました。

(松田)一番印象に残っているお仕事のエピソードを教えて頂けますか。

(近藤氏)初めての海外赴任のサウスカロライナでの経験は、不安も大きかったですが新鮮でした。当初は一体何をやればいいんだ、という気持ちで行き、それなりに理解ができるようになるまで多少時間を費やしました。その右往左往した最初の1年間程のことは特に印象に残っていますね。

私が配属される前から、工場に問題が発生し、製品を作る原材料が枯渇していたんです。通常その材料は入荷されるまでに数か月かかるもので、それが入ってくるまで工場が動かせないという状態でした。

そんな状況下で着任したのですが、従業員も疲れ果てていますし雰囲気も良くないんですね。私も初海外でしたし英語もそこまで得意ではなかったのもあるかと思いますが、私が何を聞いても、「急に来た者が何なんだ」みたいな対応をされてしまいました。時間はかかる、何も進まない、雰囲気は悪い、という本当に辛い状況だったのをよく覚えています。

そうは言っても、数字は万国共通なので、自分はこういう事をしたいというのを伝え続けて、時間はかかりましたが上手く回るようになりました。その後日本に戻ってからは管理職になったこともあり、ローカルスタッフと直接コミュニケーションを取って、自分で考えて、自分で形にして、ということをあまりしなくなってしまったんです。

管理職ももちろん面白味はありますが、その時の自分で考えて、自分で解決してといった経験は、やりがいもありましたし、形となって残っているんですね。辛い思いもしましたが、良い経験が出来たと特に印象に残っています。

(松田)近藤社長がお仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(近藤氏)どういうことであっても、“自分が貢献できることを探す”ことを心がけています。要は、相手にとって何が一番役に立つのか、ということを一番に考えるということですね。それは小さいことでも大きいことでも良いんです。そして相手も個人でもチームでも組織でも構いません。

どういう立場にいてもどういう状況に置かれても、“自分が貢献する”ということを基本に考えて行動することが大切であり、そうすることで、これまでの経験から、おのずと結果が付いてくると思います。

(松田)それでは、近藤社長のプライベートについてもお伺いしたいと思いますが、好きなスポーツやご趣味はありますか。

 
 ハミルトンの滝にて
(近藤氏)学生時代から野球をしており、社会人になってからも草野球のチームに入り、毎週土日どちらかはプレイをしていました。只、2年半前に日本を出てからは出来なくなってしまったんですが、野球観戦も好きなので、ニューヨークにいる時はヤンキースの試合を観に行ったり、トロントでもブルージェイズの試合を観に行っています。

今は家の周りを走るといった簡単なジョギングは続けていますね。今住んでいるところがトロント大学ミシサガ校舎の近くなのですが、大きい公園があり川沿いにトレイルがあるので、そこを1時間くらい走ったり時々歩いたりしながら運動不足を解消しています。

(松田)今トロントにご着任されて9か月が経ったところですが、カナダにご在住中に挑戦したいことはありますか。

(近藤氏)日本にいる時から、ハーフマラソンでも良いのでマラソン大会に出たいと思っていましたので、こちらで実現させたいですね。

あと、今単身赴任なので、結構料理に挑戦しています。スーパーに行ってお買い得な商品を購入し、クックパッドで検索して作るのですが、先日タンシチューを作ったら絶品でした。近所にStarskyという大きなスーパーがあり、肉や魚のセレクションが豊富なんです。そこで牛タンを発見し、野菜のペースト、グレービーソース、赤ワインを入れて、電気プレッシャークッカーを使って調理したんです。肉もすごく柔らかく、とても美味しかったです。

単身赴任は2年半ほどになり、結構板についてきました(笑)。これからも新しい料理に挑戦して美味しいものをもっと作りたいですね。

(松田)タンシチューを作られるとは驚きました。今度ご馳走して欲しいです(笑)。それでは、最後になりますが商工会会員へメッセージをお願いいたします。

(近藤氏)現在理事を務めさせて頂いております。トロント商工会は、会員企業の方を中心に様々な情報を提供したり、役に立つイベントを開催したりと、大変活発に活動している良い組織だと感じています。

理事会では、会員やコミュニティに対して商工会として何ができるのか、という話をしていますが、今後、会員日系企業同士がコラボレートして、一つの会社のみではできないことを協力し合って行う機会が作れれば良いと思っています。

日本やアメリカでは、会社の規模が大きく、会社数も大変多いので、会社対会社で何かを行うというのが難しい場合が多いですが、当社も含めカナダにある企業は、サイズ感として大きくはないですが小回りが利いて決定も速く、すぐに柔軟に対応できる、という利点がある企業が多いかと思います。

そういった利点を活かし、日系企業間で協力し合うことが増えれば、企業間の結びつきも強まり、日本の会社をコミュニティにアピールすることもできると思います。今後、商工会がそのような機会と場を提供し、商工会を通じて行うことができるように、活動したいと思っています。

(松田)商工会の更なる活性化のため、今後もご協力をどうぞよろしくお願いいたします。インタビューは以上となります。本日はお時間を頂き有難うございました。


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