「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー




<第157回>
(個人会員)若狭 輝行President & CEO
Synclex Enterprises Inc.

個人会員として登録を頂いているシンクレックスエンタープライズの若狭社長にお話を伺ってきました。オフィスはダウンタウンにあります。航空事業を中心に、市場調査、マーケティング、ブランド戦略に関するビジネスコンサルタントをされており、航空機調達の裏話など、大変興味深いお話を伺うことができました。

また、若狭氏は、昨年ミシサガで開催され、4万人を集め大成功を収めたJapan Festival Mississaugaの立役者でもあります。昨年及び今年のイベントについてもお伺いしてきました。



(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いいたします。

(若狭氏)シンクレックスエンタープライズでは、航空機の購入・リース・調達等を行う業務を中心に、企業向けに市場調査や分析の提供、ブランド戦略のアドバイスを行う業務をしております。設立は2003年で、社員数は現在10名です。

(松田)会社を立ち上げられた経緯と、ご業務内容を詳しく教えていただけますでしょうか。

(若狭氏)私はカナダの大学で経済とビジネスを学んだ後、航空会社にて客室乗務員として働き、その後地上での業務を担当しました。5年程勤務した後、日本政府の航空規制緩和と1996年にアメリカが提唱したオープンスカイ(航空自由化協定)を受け、今後航空業界が変化していくことを感じ、自分の経験を活かした事業を行う会社を立ち上げ独立をしました。

日本では新規航空会社の参入が始まりかけている時期で、当社は設立したばかりの会社でしたが、そのような航空会社と事業をさせて頂くことになりました。その際に座席数200~250席程、200億円相当の中型航空機の調達業務を担当し、我々がボーイング社と新規航空会社との間に入り、機内の仕様、レイアウト、それらにまつわる保険等一式を含めたコンサルティングを行いました。

ボーイング社の方と、航空会社の航空運送部や客室乗員部の担当の方が集まり、飛行機の青写真を広げ、機内のレイアウトを一から決めていきました。国内用の航空機なので機内設備を簡素化して重量を抑え、燃費効率を求めることを第一に、キッチンの配置場所、お手洗いの個数やメーカー、そして航空機の減価償却、運航効率等と、収支の兼ね合いから座席数を決めました。

各部署の希望や意見があるので、それをまとめるのが大変でした。例えばパイロットはコックピットの座席を自動にしたい、けれどその費用は300万円かかるために客室乗員部、運送部はそれに反対をする、ということが起きて、社内で協議が行われるなどしました。

航空機は、機種にもよりますが、購入すると約1億円程のオプションパッケージが付いてくるので、それを使用して希望のメーカーの機器を入れる等でき、なるべく皆の意見を取り入れた航空機を導入することができました。

元々私は客室乗務員だったため、航空規定作成業務も担当し、客室乗務員のマニュアルなどの制作にも携わらせてもらいました。その時はアジアの航空会社に訓練の委託をすることになったため、その契約内容の調整なども行いながら、電話帳10冊分ほどの運航規程や運送規定類作成業務に従事しました。

立ち上げまでは本当に土日も休みなく徹夜が続き、非常に大変な思いをしましたが、それらの申請書類を、当時の扇千景国土交通省大臣に受理頂いた時は本当に嬉しかったです。

只、それは申請が受理されただけで航空運送事業者としての免許が下りたわけではなく、そこから審査が始まりましたので、また更に大変な日々が続きました。ここの安全性はどうなっている、ここの裏付けが出来ていない等様々なやり取りがあり、晴れて免許をもらうことができた時には、感慨もひとしおでした。

大変な思いもしましたが、3、40年間新規航空会社の参入がなかった日本の航空業界において、新しい航空会社の参入に関わることができたのは自分にとっても大変有意義なものでしたし、とても良いネットワークを培うこともできました。

(松田)このお仕事の魅力はどちらにありますか。

(若狭氏)魅力はたくさんありますが、一つには、モノの流れが見えてくることでしょうか。船便と違い短時間でものを運べる利便性にお客様は高額な費用を支払われる訳ですから、新鮮さが要点になることが多く、お客様には物流関係、貨物関係等さまざまで、また時には移植手術用の臓器を運ぶこともあり、医療関係とお仕事をすることもあります。

例えば6月くらいになるとタイから蘭の花を輸送するなど、季節的なものは大変多いです。また、築地から発送される生ものが今どの市場に一番に流れているか等、市場の動きが飛行機一台に搭載されています。

航空会社のスケジューリングを見ると、夜間帯はビジネス客の需要が多いため、ビジネスクラス数が多い機材が導入されている。また、昼間は観光客の利用が多いため大型機材が導入されている、等も見えますし、旅客で言えば、どのような方々がどの到着地を最終目的にしているかということで、ビジネスや経済、そして市場が見えてきます。

我々は航空関連の事業から始まりましたが、そういったモノ・ヒトの流れを見据えながら、マーケティングリサーチ・分析という業務を提供するようになりました。また、所謂ビッグデータと言われるデータを集め、企業のブランディングも行っています。

現在航空業界は、オープンスカイの影響もあり、新興国がLCC、格安航空会社を立ち上げており、市場自体が大変活気づいています。2035年までにあと4万機の飛行機が必要だと言われているほどです。大量輸送時代を担っていた大型ジャンボ機が退役してきますので、そこのリプレイスメントとして新しい小型機が出たり、三菱さんのMRJが出てきたりと、市場としては大きくなっていますので、今後の展開が益々楽しみですね。

(松田)御社の強みはどちらにあると思われますか。

(若狭氏)ネットワークですね。カナダはご存知のとおり、多国籍であり、企業のバックグラウンドも様々です。カナダに所在していることが、市場をリサーチするという面においては、情報を入手しやすく大変有益です。

また、航空機一機を導入する際には、保険の問題、内装機材の入手、機材を保管する格納庫の建設等、航空業界のみならず、様々な業界とビジネスをすることになります。一つの業種に限らず様々な業種の方々とのネットワークを持っていることは、強みであると感じます。

我々のお客様は、日系・非日系の企業、及び個人事業主の方々です。航空機も、旅客機・貨物機・プライベートジェット等、多種多様に対応しております。

近年、航空機は著しく先進しています。例えばエティハド航空のファーストクラスにはリビングルームとベッドルームがあったり、2階に広いラウンジがあったりと、空飛ぶホテルというような空間を演出されており、各航空会社さんもそこで差別化を図っています。アラブの方からプライベートジェットにシャワールームを作って欲しいと要望されたこともありますし、先日サウジアラビア国王が訪日された時に話題となった自動昇降のタラップなどの依頼もあります。

サウジアラビアの王子様は、スターウォーズの映画で見たように、飛行機の機体の真ん中からエレベーターで降りるような仕様にしたいと要望されたりもしたと聞いています。お金には糸目を掛けず、理想を実現させたい、というだけで注文をされるので、それが実現できるのか、というところから入らなければなりませんので、カスタマイズという域は超えていますね(笑)。

ただそのような我々の想像を超えた注文を実現するためには、あらゆる業界の方々の協力が必要不可欠であり、プロジェクト毎に新しいネットワークを培うことになります。我々は大変層の厚いネットワークを構築できていると思います。

(松田)現在の航空機は、技術の凝縮でしょうね。それでは、今後御社が注力されたいことはどのようなことでしょうか。

(若狭氏)我々がこれまでの業務を通じて得た、様々な情報と幅広いネットワークを活用して、様々な企業の方々にお役立ていただけるサービスを提供していきたいと思っています。生の情報が多いため、航空業界だけではなく、様々な業種の企業様のお力になれると思いますので、企業の方々とコラボレートをして、更に発展した未来を築いていきたいです。

また、我々は日本の安心・安全を売りとし、お客様にも信頼をもっていただいております。それらを築いてくださった日系企業の方々に、何らかの形で還元し、ご利用頂けるような立ち位置になっていければと思います。

(松田)若狭社長のご経歴についてもお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらでしょうか。

(若狭氏)出身は福岡県福岡市です。4人兄弟の末っ子として育ちました。小学校5年の時に父が脳梗塞で倒れて半身不随で寝たきりになってしまい、その後25年程母と姉がずっと介護をしていたのですが、外出も余りできなかったために母が不憫に思ったのか、中学生の時に初めての海外としてオーストラリアに連れていってくれました。そこで海外に行きたいという思いを持ち、高校卒業後にバンクーバーに行き、大学で経済やビジネスを学びました。

(松田)その後、航空会社へのご就職、そして起業されるんですね。これまでのお仕事の中でどのようなことが一番印象に残っていますか。

(若狭氏)日本で求める繊細さ、緻密さを理解してもらうことが難しい、文化の違いというのは強く感じますね。

航空機に載せるものは、例えステッカー一枚でも難燃証明書というものを取得しなければいけません。座席に貼ってある救命胴衣の案内のシールにも端の方に番号が記載されているので見てみてください。

その他、機内にあるものは様々な審査、試験、検査を行い、証明書を取得しなければなりません。しかし、そういう審査を取り損なっており、そのために製造過程に大幅なスケジュール遅延が起きることがあります。

また、発注したものの仕上がり具合にずれがあるという事もあります。カーテンの色やヘッドレストの素材等も、お客様のニーズに可能な限り沿ったものを予算内でご提供するようにリサーチをするのですが、我々が求める繊細さ、正確さに理解が得られないためにやり直さなければいけない、ということは多々あり、大変ですね。

(松田)航空機は特に緻密さが求められると思いますので、大変でしょうね。

(若狭氏)そういった不条理なことへの対応法は、客室乗務員の頃に鍛えられたのかもしれません(笑)。長時間のフライトですし、酔っぱらわれるお客様もいらっしゃいましたし、天候により遅延して空港で何時間も拘束されてしまったり、整備不良のため航空機内で何時間も缶詰めになってしまって、お客様からお叱りを受けるということは珍しいことではありませんでした。

また、緊急着陸を体験した際は、それまでは私も訓練でしか行ったことがなく初めての経験で、着陸時のすごい衝撃とその後発生した大量の煙の中、お客様に落ち着いて頂く、お客様を安全に誘導する、という業務に必死で対応しました。大変緊張もしましたが、私の一つの糧になったと思います。

フライト中に具合が悪くなってしまった方のためのドクターコールもよくあることでした。高校生のお嬢様と一緒に旅行をされていたお父様が心臓発作を起こしてしまい、出発地に戻ることになりました。人命が掛かっているというのに、すごい剣幕で怒られているお客様もいて、しかしお嬢様はまだ若いのに涙ながらに他のお客様に謝られていました。そのように様々なドラマ、人間模様も垣間見てきました。

客室乗務員時代は、お客様からお嬢様のお見合い写真を見せられた経験なども含めて(笑)、様々な経験をさせて頂きました。

(松田)まだまだ興味深い秘話をお持ちだと思いますが、お時間が足りず残念です。それでは、若狭社長がお仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(若狭氏)信頼関係を築くことが一番大事だと思っています。お仕事を頂けているということは信頼されているということだと思っています。頂けるお仕事に対しては誠意をもってお応えし、愛を持って、情熱を持って対応する、ということは、社員一同常に心に留めております。

我々は人命を預かる航空機というものを取り扱っていますので、間違いが起きてはなりません。データ分析についても、ミスがあっては甚大な被害を起こしてしまうことになってしまいます。

お客様の話をよく聞いて、何を求められていらっしゃるかを正しく理解して、我々がそれに対してベストなものを提供し、相手の方と誠意をもって取引をしていく、ということはとても大切であり、今後もしっかりと行っていきたいと思います。

(松田)それでは、プライベートについてもお伺いしたいと思いますが、好きなスポーツやご趣味はありますか。

(若狭氏)高校時代は野球をしておりました。今年の春の選抜に母校が久しぶりに出場しました。私はベンチ入りをしていなかったのですが、高校1年生の時にも甲子園に出場したほど、野球ではそこそこ名の知れた高校でした。そのため、やはり野球が好きですね。

12歳の息子と10歳の娘がおりますが、息子が遺伝子を引き継いだようで野球が大好きです。メジャーリーグの大概の選手名は言えるくらいに夢中になっています。私は今はほとんどプレイはしませんが、息子の相手が出来る限りは相手をしようと思っています。

他には、料理が好きです。作ることでストレス発散にもなっていますね。娘がそれを見て好きになったようで、最近一緒にクッキーを焼いたりカレーを作ったりするようになりました。

休みの日は出来る限り家族と一緒の時間を過ごすようにしています。子供たちも飛行機が好きなので、時間があれば旅行にも行くようにしています。近いのでカリブの方にも行きますが、子供たちにどこに行きたいか聞くと日本に行きたがってくれるのは嬉しいですね。

(松田)お子様達と一緒に楽しめるご趣味があるのは、お子様達も嬉しいでしょうね。それでは、若狭社長が発起人として活動されている、昨年のJapan Festival Mississaugaと今年のJapan Festival CANADAついて、ご紹介頂けますでしょうか。

(若狭氏)昨年のJapan Festival Mississaugaは、我々が予想していた2万人を遥かに超える4万人の方に来ていただきました。日本の食・文化・テクノロジーといった幅広い文化紹介を出来たと思っています。イベント後にはバンクーバー等他地域からも評価を頂きました。

特に面白いと思ったのは、カナダに住む移民の方々が、母国の言語でSNSに記事を挙げられた際に、カナダからのアクセスよりもマレーシアやインドネシア等、東南アジアからのアクセス数がかなり多かったことです。その波及効果がカナダらしいですね。今年も丁度夏休みの時期なので、合わせてカナダに来たいというコメントも見られ、大変楽しみです。

今年はJapan Festival CANADAと題し、カナダ建国150周年の記念式典と合わせて8月25、26日の2日間、昨年と同じミシサガの会場で開催します。カナダ各地や日本からも様々な参加や支援を頂いています。

土曜日は夜11時まで開催してJ-POPやアニメソングに通じたDJの方を呼ぶ等、サブカルチャーを紹介し、日中は日本文化や日系コミュニティの皆様の紹介の場として、1日を通してファミリー層から若い世代まで楽しんで頂けるイベントになる予定です。2日間で8万人の集客を目標としており、北米でも最大規模のイベントとなるように鋭意準備を進めています。

(松田)ご業務とは別にこれだけの規模のイベントを開催されるのは大変だと思いますが、モチベーションはどちらにあるのでしょうか。

(若狭氏)元々は、日系・非日系の様々な企業の方々とお話をする機会を通じて、日本のブランディング、日本のものをカナダから発信したい、ということを念頭に動き始めたイベントです。カナダの方々、特にアジア系カナダ人の方々は日本のものに非常に興味を持たれています。そして、企業の方々も業種を超えて他企業とコラボレートをされたいと思われる気持ちを持たれているように感じています。

イベントでは、B to B向け企業様にも、普段触れ合わない方々に技術や会社のご紹介を頂き、幅広い年齢層に興味をもってもらい将来の雇用に繋げて頂けるようブースを持って頂いております。こういった活動から、「企業同士の新しいビジネス」など企業的な発展と、日系コミュニティの発展の両方に少しでも寄与できればと考えています。

(松田)昨年は私も伺いましたが、本当に大盛況でした。更に規模が拡大し、ご準備は大変だと思いますが、今年も楽しみにしています。最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いいたします。

(若狭氏)まだ入会してから1年程の新参者ですが、もっと早くに入会すべきだったと後悔しています。様々なイベントに出席させて頂き、会員の皆様とお話をする度に、有益な情報を頂き、また大変刺激を受けております。

まだまだこれからではありますが、カナダには20年程おりますので、これまでに培ったリソースなどを皆様と共有できればと思っています。カナダに拠点を置き根付いている企業として、そのネットワークや情報を活用し、ご期待に沿えるようなサービスを提供させて頂きたいと思っておりますので、これからも何卒宜しくお願い致します。

(松田)インタビューは以上となります。本日はお時間を頂き有難うございました。



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