「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー




<156回> 
林 泰寛 COO
UNIQLO CANADA Inc.

昨年11月に商工会にご入会いただいた、ユニクロカナダの林最高執行責任者にお話を伺って参りました。オフィスはクイーンストリートとスパダイナの交差点近くにあります。皆様もご存知のとおり、ユニクロさんはトロントイートンセンターとヨークデールモールの2店舗をトロントに構えられております。

林COOは大変明るくエネルギッシュで、ご自身の信条とされる“率直さ”通りの方という印象でした。ユニクログローバル化の一端を担われている林COOより、店舗オープニング時のエピソードや、ユニクロの独自の魅力、過去のご経験などについて、大変フレンドリーにお話し頂きました。



(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いいたします。

(林氏)当社はアパレル小売事業を営んでおり、ユニクロというカジュアルウェアをカナダで販売しております。2016年9月に店舗1号店をイートンセンターに、10月に2号店をヨークデールモールにオープンいたしました。社員数は、2店舗で店舗スタッフも含めると、約800名で日本からは11名が派遣されております。

(松田)現在店舗の設立から半年ほど経ったところですが、カナダという市場にはどのような印象をお持ちでしょうか。

(林氏)トロント以外の都市についてはまだ良く知らないのですが、トロントに関して申し上げれば、着任前から、移民国家であり様々な文化が混在するモザイク都市だということは聞いていましたが、実際に来てみると、想像していたよりも多民族で、多文化が共存・共栄していると感じました。今の世界情勢から考えても、他には無い素晴らしいことだと思います。

店舗のオープニングキャンペーンでは、“Uncommon Thread”というコンセプトを元に、キャンペーンを行いました。直訳すると“共通項のない糸=衣服”ですが、同じ服を着ていても着方によってその人自身の個性が出る、多様性を大事にする、でもトロントという糸でつながっている、という意味を込めています。トロントには、H&M、ZARA、GAPなど、いくつかのファストファッションブランドがありますが、このようなテーマを掲げているブランドは他にはありません。

また、ユニクロはグローバルブランドでありながらも、トロントを始めとした世界中の各都市に根付き、受け入れられる“Good Neighbor”であるブランドを目指しています。単にグローバルブランドがトロントに来た、というのは違うと思っています。

Good Neighborになるためには、ローカルのカルチャーを理解し敬意をはらい、彼らが大事にしていることを、我々も大事にする、ということだと考えております。 従って、オープニングキャンペーンでは、ローカルの方々、例えば普段はトロントでショップスタッフをされている方などをモデルとしてキャスティングしました。

オープニングキャンペーンのポスター


(松田)TTCの電車やストリートカーなどにも貼られていたポスターですね。店舗が開店した際は、日系、アジア系のみならず、あらゆるバックグラウンドの方による大行列ができて、ローカルニュースやSNSなどでも大変話題でした。新規参入にも拘らずここまでの話題を呼んだ理由はどちらにあるとお考えですか。

(林氏)ユニクロには“Made for All”というコンセプトがあります。他のアパレルブランドでは、例えば「20代女性」、「ワーキングエグゼクティブの男性」等々、ターゲット層がはっきりしています。ティーンエイジャーのトレンドファッションを提供しているForever 21に、私のような40代男性は、まず買い物のために入店することはありません。仕事のためにはたまに立ち寄りますが…。

ターゲット層のセグメンテーションはブランドマーケティングの基本だと思いますが、ユニクロでは顧客をセグメンテーションをせず、ファミリー、ティーンエイジャー、老夫婦、ワーキングエグゼクティブなど、幅広い層に向けた商品構成をしています。

欧米のブランドはセグメンテーションをしっかりとしていますので、セグメントをしないユニクロのコンセプトは、多くのお客様にとって受け入れやすく、最もユニークな点だと思います。

(松田)立ち上げの際に、一番印象に残っている出来事はどのようなことでしょうか。

 
 イートンセンター店オープニング日の様子
(林氏)ユニクロのイートンセンター店は、イートンセンターの増床区画に出来ました。そのため、増床と開店準備が同時進行で行われていたんです。発表した開店日までに増床工事が完了するかが直前まではっきりせず、最も肝を冷やしました。

オープンの日には、弊社社長の柳井、Toryトロント市長(当日は急遽不参加)、Cadillac FairviewのCEOの3名が参加しセレモニーを行う予定で、絶対に日程を変更することが出来ませんでしたので、トロント市に連絡をしたり、日本でお世話になっていた在日カナダ大使館に連絡したりと、本当にありとあらゆる人脈を使い、多くの人に頼りました。

無事に予定通りオープニングを迎えることが出来ましたが、進捗はかなりタイトで、大変プレッシャーも掛かりました。しかし同時にそのような状況も、なかなか無いチャンスなので、楽しもうと思って楽しみながら進めることもできました。

(松田)そのような状況で楽しめるというのは、過去のご経験があってこそですね。御社が今後注力されたいことや、目標は何でしょうか。

(林氏)トロントに2店舗をオープンしましたが、まだまだブランド認知も低いですし、認知層はアジア系が主流です。ユニクロのロゴの下に、“LifeWear”というタグラインがあるのですが、ユニクロが“本当に良いものを、手に入れやすい価格で提供する”ということを浸透させ、ブランド認知を上げ、一人でも多くのお客様にご購入頂き、ファンを増やすことに注力したいと思っています。

例えば、ジャケット一つをとっても、少しストレッチが入っていて動きやすい、ということや、有り難いことにほとんどの日本人に知ってもらっているヒートテック、ウルトラライトダウン、エアリズムといった当社の製品は、カナダ人にとっては全くの新しいものです。新しい、知らないブランドに対して購買意欲を持ってもらうには、コミュニケーションを取っていくことが大事だと考えます。

ユニクロの服は、特別なデートのための服ではなく、大きなイベントの日に着るような服ではありません。もちろん来ていただいても構いませんし、来て頂けるとうれしいですが…。けれど、世の中の95%くらいの人の1年間のうち350日くらいは普通の日(日常)なんですよね。そして日常が一番大切で、当たり前のことなのですが日常によって人生は作られていて、日常を快適に過ごしてこそ、特別な日をしっかりと成し遂げることができるんです。

ユニクロの服は、特別ではない350日、つまり日常が少しでも楽しく、より快適に過ごすために着ていただける服、なんです。そのためにストレッチが入っていたり、軽かったり、薄かったり、暖かかったり、洗濯しやすかったり、1つ1つは小さいことですが、そこにこだわっているからこそ、気軽に着られる服なんだと思います。

やはり、どんなにデジタルやいろいろ発達しても、好きな服、心地よい服を着ると、元気が出たり、よし今日も一日頑張ろう、と思えるじゃないですか?こういう服に対する我々のこだわり、真意が自然と伝わって、トロントの人たちがいつの間にかユニクロのジーンズを持っていたり、ユニクロのシャツを着ていたり、気づいたら「これユニクロだったんだ」というくらい、自然に生活の中に浸透することが目標ですね。これが出来たら、私は本当に幸せです。

(松田)林COOのご経歴についてお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらでしょうか。

(林氏)生まれは岡山県です。3歳から9歳まではロサンゼルスで過ごし、その後は関西圏に移り、大学以降は関東圏で過ごしました。また大学在学中に1年間ワシントンDCに交換留学をしました。大学院を卒業後、外資系の金融機関に就職しましたが、全く合わず1年間で退職しました。

その金融機関では、機関投資家のお金を預かって増やす仕事のお手伝いをしていたのですが、お金持ちを更にお金持ちにしても楽しくない、と思い、次の就職先を考えた時に、直接お客様の顔が見える小売業に興味を持ちました。シンプルに、自分も一消費者だし、いいものを買ったらうれしい。お客様の顔が見える仕事がしたい、と思ったんです。そして転職活動をした中で、一番ユニクロに共鳴したため、2000年に入社しました。

(松田)ご入社後はどのようなお仕事をされましたか。

(林氏)最初は店舗スタッフから始め、店長代行のようなことをしていたのですが、店舗では花開かず、その後人事部に異動となりました。当時人事部の下にあり、日本でようやくCSRのようなものが取り入れられ始めた時期だったので、CSRの先駆けのようなことを2001年から2007年頃まで行いました。その後、経営者になりたいと思い、経営計画部に異動となり1年程務めました。

2009年にシンガポールの立ち上げのお話を頂き、シンガポールではマーケティングや出店の責任者として、2010年にはマレーシアの立ち上げもさせて頂きました。2012年にインドネシアのCOOとして、インドネシアの立ち上げを行いました。そして2015年の11月にカナダ進出するということでCOOとして辞令を受け、2016年7月にトロントに着任しました。 

(松田)アジア圏での立ち上げを多くされていたんですね。特別印象に残っている出来事はどのようなことでしょうか。

(林氏)インドネシア・ジャカルタで0店舗から10店舗までオープンしました。インドネシアはイスラム教徒の多い国なので、厳格なイメージ、特に女性は控えめなイメージを持っていたのですが、意外とファッションを楽しまれている方が多かったのが印象的でした。

ピンクやスカイブルーのヒジャブを着けていたり、オレンジ色のレギンスパンツを着ていたり、制限されているからこそファッションをより楽しもうという心意気のようなものが感じられました。驚きと発見と共に、東京にいては知ることのない文化を知ることができ、自分が大きな勘違いをしていたことも含めて感慨深く、今でも思い出します。やはり現場にいくと、必ず新しい発見がありますね。

(松田)ユニクロさんでは、そのように各国の文化や宗教に対応された服も作られているのですか。

(林氏)ムスリムの方にもユニクロの服を楽しんで頂くため、Hana Tajimaさんという日本人とイギリス人を両親に持つロンドン在住でイスラム教を信仰しているデザイナーのラインをコレクションとして販売しています。

女性の身体のラインがあまり出ないシルエットの服をモデストウェアと呼びますが、元々ユニクロが販売していたモデストウェアがムスリムの方々に人気が出て、コレクションとして販売するようになりました。

トロントでも2月からHana Tajimaコレクションの販売を開始しました。販売前からテレビ、新聞、雑誌など、現地メディアにも非常に多く取り上げて頂き、非常に高評価を頂いております。アメリカの政権や世界情勢からかんがみると、こういうコレクションも大事だと改めて痛感しました。

(松田)林COOがお仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(林氏)常に本音であること、率直であること、です。ただ、率直に突然いうと相手を困惑させたり傷つけたりしますので、必ず「これから率直な意見を言うので、失礼に聞こえるかもしれないし、傷つくかもしれないし大変申し訳ないが…」といった前置きをしてから伝えます。

特に北米の人たちは“褒めて欲しい”という気持ちが強い人が多く、言い過ぎると「そこまではっきり言わなくても…」といったフィードバックを受けることがあります。

しかし、それを受け入れなければあなた自身の成長にはならない、あなたがこの会社で成長したいのなら、やりたいことがあるのなら、自分は出来るということ、あなた自身が本気であることを証明して欲しい、と伝えます。そして、それを見せてくれれば、私は必ずこういう風にサポートをする、といった具体的な対応法を提示し、必ずその通りにします。

率直さはプラスに働くこともあればマイナスに働くこともあると思いますが、真の成長のためには結局はプラスに働くことの方が多いと思います。「本音で率直に言うので、率直に答えてくれ」ということが私の信条で、これまでもその通りにやってきており、これからもその通りにやっていこうと思います。

一番、良くないのは、率直にいわないでいて、あとで「実は…」とかはいうのは、相手に対して失礼ですし、信頼関係もつくれないですし、上司としても失格だと思います。常に、本音で率直に。でも、これは個人の成長のためであり、個人の成長が会社を成長させるので、双方のためであると思うんです。

(松田)プライベートなこともお伺いしたいと思いますが、ご趣味はありますか。

(林氏)趣味はないですね。仕事が趣味といった感じになっています。やればやるほど出来ていないことが見えてきて、仕事ばかりになってしまうのが課題ですね。2人の子供がいるのですが、休みの日は息子をトロント市のスケート教室に連れて行ったりと、少しは普通の父親をしようと頑張っています。

(松田)現在トロントに来られて9か月程ですが、今後ご在住中に挑戦したいことはありますか。

 
 冬のナイアガラ小旅行
(林氏)トロントに着任してから今までは仕事ばかりをしていたため、全くレジャーを楽しむ機会がありませんでした。夫や親としては0点だと思っています。仕事とプライベートのバランスを取っていくことが私の課題ですね。これがなかなか難しいのですが…。

今後時間が出来たら、家族で野球観戦やホッケー観戦、また旅行などに連れていきたいですね。イエローナイフにオーロラを観に行ったり、モントリオールもトロントとは雰囲気が異なる良いところのようで、行ってみたいです。ジャカルタが大量排気ガスのため空気が悪く、子供があまり外で遊べなかったので、カナダの自然を満喫させてあげたいと思っています。

(松田)今後暖かくなり過ごしやすくなりますので、是非カナダを楽しまれてください。最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いいたします。

(林氏)着任してからこれまでの期間は、店舗のオープニングのためだけに費やしてしまい、まだカナダのことも詳しくありません。新参者ですので、今後皆様にお会いして情報交換等できれば嬉しく思っています。お会いした時には、どうぞ宜しくお願いいたします。

(松田)インタビューは以上となります。本日はお時間を頂き有難うございました。

トルドー首相と共に



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