リレー随筆




家族7人 イーストコースト ロードトリップ

コバヤシ 陽子


私ごとではあるが、今年は結婚15周年という記念の年だ。15年前は、式を挙げたハワイへ子供達と再び~なんていう夢を描いていたが、これを実現するのは難しく、そこで、夫婦で考えたのが、イーストコーストへのロードトリップ。

私の両親もお供に加わり、下は3歳から上は71歳の家族7人の11日間の旅が始まった。今回訪れる州は、ケベック、ニューブランズウイック、プリンスエドワードアイランド、ノバスコシア。

11日間の中で色々あったが、あとで思い返せば、いい思い出!というエピソードをいくつかご紹介したいと思う。きっと、家族以外の人からしたら大して面白くもおかしくもないかもしれないが、ある家族を覗き見したつもりで読んでもらえたらと思う。


「Lunenburg (ルーネンバーグ)」

この名前を聞いて、ご存知の方はいるだろうか?ノバスコシア州のハリファックスを西に98.8km。漁港の街である。海から見ると、岸側に一面、カラフルな色の可愛い家々が建ち並んでいて、どんより霧の多い漁港でこれはひときわ目立つらしい。

なぜ、こんなにカラフルなのか?というと、長い間、家を離れていた(離れる)漁師が、漁船から我が家がすぐ分かるように、 霧中でもよく見えるように、ということらしい。

このようなカラフルな家々は、この辺りの漁港街で見られるらしいが、ここLunenburg は、いまでも、古い家が広範囲に渡りそのまま残されていることから、世界遺産に指定されている。街は、雑貨屋だったり、レストラン、銀行、教会、お屋敷などで、数段階の高さの通りに綺麗に並んでいる。

港から一段一段、上の通りに行くには、かなりの急な坂をのぼる。歩きでも車でも怖いくらいだった。でも、それだけ高低差があるからこそ、海から綺麗に家々が見えるのだろう。 (海側から写真が撮れなかったのが残念…。)

さて、なぜ、ここに立ち寄ることにしたか?それは、数年前にみた日本映画「ハナミズキ」で観たかわいい街並みがここで撮影されたと知ったからだ。映画の内容も良かったような気がするが、私の印象に残っているのが、この街並みと灯台(おそらくカナダのこの辺りで撮られたのではないかと思われる)だった。

しかも調べてみたら、世界遺産!これは、行くしかない!

でも、なぜ首都のハリファックスに寄らずに、ルーネンバーグ???と、みな内心思っていたようだ。特に夫は、「自分はカナダ生まれで、若かりし頃、やはり家族でイーストコーストへロードトリップをした思い出があるが、そんな地名聞いたこともないし、こんな所に世界遺産?」というかなり疑い深い様子。

私も自分で計画しておきながら、もし、大した場所でなかったらどうしよう…こんな遠くまで運転して来て、無駄足だった…となったら…とひやひやしながら、現地へ向かった。

でも、行ってみたら、やっぱり、素敵な所だった!カラフルな古い町並みは、映画の中の一部に入り込んだかのような雰囲気で、世界遺産の割にそれほど観光地化されていない素朴なところも気に入った。パチパチ写真を撮っている間にもあたり一面、すっかり霧に囲まれた。

港沿いの掘っ建て小屋のような気取らない、でも可愛いフィッシュ&チップスの店で夕食。
おススメの帆立貝のフライは、プリプリで美味しかった! お腹も満足、夫も子供達もおじいちゃん、おばあちゃんも満足!やったあ!来て正解!!!


「Cape Breton Highlands National Park of Canada 」

ここは、ノバスコシア州の一番北てっぺんに位置する国立公園で、海沿いに山道をドライブするCobot trail が有名。ネットで写真を見ただけで、私にはとてもここの運転は無理だと思った。

それでも、ノバスコシア州に来たならば、おじいちゃん達だって冥土の土産にドライブで良い景色を見るだけでも…と思って、夫の許可を得て選んだコース。この公園内には、キャンプサイトやビーチ、数多くのハイキングコースが用意されている。

ご存知の通り、我が家の3歳から71歳までが楽しめるハイキングコースとして、先のインフォメーションセンターでは、森の中を抜けて小さな湖にでる往復1時間ほどのコースをすすめられた。

しかし、すでに、ここに訪れたことのある友人に、絶対、挑戦して!と、森の中から、海岸崖っぷちにでるスカイライン ハイキングトレイルという往復2時間半から3時間 のコースをすすめられており、わたしの中では、みんなの体調がよければ、このコースを試そうと計画していた。

当日は、おじいちゃん、おばあちゃんの体調も良く、お天気も良かったので、迷わず人気のスカイライン ハイキングトレイルへ。ふた通りの道があり、一つは比較的歩きやすく舗装されていてストローラーでも通れる道。もう一つは、舗装されていない木の根っこが出ているような森の道(らしい)。そちらの道は、運良ければ、途中でムースに遭遇できる(らしい)。

3歳と老夫婦の体力に合わせ、ストローラー(今回の旅行のために購入したアンブレラタイプ)の通れる道で展望所まで行く事にした。

はじめにトレイル入り口で、この公園内に生息する生き物について説明を受けたり、ムースの角と鹿の角を実際に持たせてもらい重さの違いを学んだりした。ムースの角は、想像以上に重たいようだ。夫でさえ、両足を踏ん張らなければ持ち上がらないほどだった。

さあ、おトイレを済ませ、いざ出発。道は歩きやすく、行きはどちらかというと登りより下りが多かったように感じた。三連休の土曜日とあって、家族連れや恋人たちがたくさんいた。時々、木陰のある山道は、とても気持ちが良かった。久々のハイキング。末っ子も時々、ストローラーから降りて歩った。

さあ、友人が言う”頑張った先に待っている素晴らしい景色”とはどんなものなのだろう?とワクワクしながら、先へ急ぐ。途中一箇所、用意されていたミニ展望台みたいなところも眺めがよかったが…。

ハイキングコースのつきあたりにあった木の階段を数段登ると板階段がずっと海沿いの丘にそって続いていた。そして、その先には、ほんと、息を呑みほどの絶景が待っていた!!なだらかな丘の向こう一面に海、海、海。ものすごいパノラマで目に飛び込んで来た。

緩やか丘は途中で終わり、そのまま山裾の下まで板階段は続いている。しかも、下に行くほど、階段の角度も急になっているように上からは見えた。感動と恐怖で、思わず「わああ~」と声をあげてしまったほどだ。

それというのも、板階段脇には、くさりもなければ、ガードレールのようなものもない。板階段を踏み外したら、きっと、いっきでないにしても、ころころと丘を転げ、下の海へ落っこちてしまうのではないか…?

この絶景を保つには、余計なガードはない方がいいのかもしれないが、今まで怪我をした人はいないのだろうか??無邪気に何十段か下にいる夫に向かって走る(夫は振り返って娘の来るのを見守ってはいたが)末っ子の足取りにヒヤヒヤしたのはいうまでもない。

その絶景に少々怯えながらも、ここまでよく皆んな頑張ってたどり着いたなあと感動し、景色を目に焼き付けた。

帰りは、夫と上の子2人は、ムースに会えるかも…と期待しながら山道コースを選び、私は、少しその山道コースに後ろ髪を引かれながらも、末っ子もいるので、元来た舗装されている道を戻った。帰りは、思ったよりも急な上り坂があり、ストローラーを押して進むのもやっとであった…が、今日の目標を1つ達成した満足感で頑張れた。

駐車場に戻って来た山道コースの3人は、きつかったけどムースが見れたー!と興奮しながら、かなりズームの先に映るぼやっとしたムースくんを見せてくれた…良かったね。


「ロブスターをワイルドに…」

帰りは、ノバスコシア州から、ニューブランズウイック州のモンクトンに戻って来て、行きに通った山道でなく、東海岸沿いAcadian Coastal Driveを通ってEdmundston (ケベック州との境)に行くことにした。

計画では、途中の宿泊にBathurstを選んていたのだが(帰りは宿を取っていなかった)、朝食に入ったファーストフード店で知り合ったオンタリオ州から来たというカップルが、Miramichi (ミラミチ)で宿泊すると言う情報を得、我が家もそこに泊まることにした。
聞いたこともない日本語みたいなこの街も、Acadian が多く住んでいて、古い街中には、彼らの象徴の旗(フランス国旗に星1つがアクセントになっている)とカナダ国旗、州国旗が掲げられ、大きな川沿いの公園には、カナダの歴史を物語る像が建てられていた。

そこに一泊し、立つ日の朝、銀行へ行ったと思われた夫がいきなり、「ロブスター、もっと食べたい?買って行く?」と聞く。「ええ~?今夜は、7時間先のEdmundstonだけど…」と私。「フィッシュマーケットの人、すごくいい人なんだよ。値段だって、すっごく安いよ! 一緒に来てよ!」と夫。

見るだけ行ってみようと言うことで、子供達も一緒にお店へ。お店のおかみさんは、フレンドリーで子供達に生きたロブスターを掴ませ写真を撮らせてくれた。聞けば、フレッシュなロブスターを茹でてすぐに冷凍した物があると言う。解凍すればそのまま食べられる。7時間先にちょうど解凍するように発泡スチロールにアイスパックをいれてあげるから心配ないよ!と。

値段は、1b $10。レストランにはおろしてなく、地元の家庭にだけ提供すると言う。それでも、今年はあまり量が取れず、高いらしい。その街のsubway の定員が、今年はロブスターの値が高く、毎年季節限定のロブスターサンドが出せなかったと言うから、そうなのであろう。

そのロブスターを約4b購入し、言われた通り、その店の並びのダラーストアで、かなづち、カニの身をすくうスプーン、頑丈そうなハサミ、箸、お皿などを調達した。7時間後のホテルに着いたときには、まだひんやり、でもちょうど解凍されて食べごろになっていた。

そして、このロブスターを解体したのは言うまでもない私だった!机の上で、バン!といこうとしたら、机を壊すよ!と冷静に夫に言われ、床に袋を敷いて思いっきり叩いた。粉々になったロブスターのハサミのカラをとり、背中をハサミで切って全部の身を取り出す。脳みそもぎっしり。

PEIのレストランでの洒落たロブスターも格別だったが、今日のワイルドなロブスターも美味しかった! でも、今日このロブスターが味わえたのも、あのレストランで綺麗な解体の仕方を教えてもらったからこそなのだ。ごちそうさま。



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