「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー




<150回>
加藤 康博 Corporate Advisor
Toyota Motor Manufacturing Canada Inc.

2011年より開始した代表者インタビューは、今回で150回目を迎えました。記念すべき150回目は、トヨタモーターマニュファクチュアリング カナダ(以下TMMC)の加藤康博コーポレートアドバイザーです。

TMMCさんはケンブリッジとウッドストックの2箇所に工場をお持ちですが、今回はケンブリッジ工場を訪問しました。ビジターセンターと工場見学トラムツアーを一般公開されており、私たちもインタビュー前にツアーに参加させて頂きました。

商工会会員企業の中で最多数の8000名以上の従業員がおり、年々成長されているTMMCさんの事業や今後の展望等について、加藤氏はユーモアを交え分かり易くご説明下さり、ご経歴やプライベートについても楽しくお話を伺ってきました。



(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いいたします。

(加藤氏)トヨタモーターマニュファクチュアリング カナダ(TMMC)は、北米に向けたトヨタ車両の製造をしております。カローラ、RAV4、レクサスRXの3車種がメインです。TMMCで生産した車両の約15%がカナダ国内向けで、残りの85%はアメリカに輸出しています。カナダでの販売はトヨタカナダが行い、アメリカでの販売は、カリフォルニア州のトーレンスに本社を持つトヨタモーターセールスUSAが行っております。

会社の基本理念として、1.地域社会、2.お客様とサプライヤー様、3.株主、4.チームメンバー(従業員)の4つの皆様に対して、バランス良く、しっかりとした関係を築いていくことをモットーに会社を運営しております。

(松田)御社の設立と主な歴史について教えていただけますでしょうか。

(加藤氏)1986年にこちらのケンブリッジ工場が設立され、今年で30周年を迎えました。初号車(カローラ)のラインオフは88年です。その初号車は、こちらケンブリッジ工場のビジターセンターに展示されております。

2003年には、トヨタ自動車として初めて日本以外でレクサスを生産する工場として、こちらのケンブリッジ工場が選ばれました。それまでに過去のチームメンバーが様々な形で上げてきた実績が認められてのことですが、海外拠点として初めてレクサス生産に着手する栄誉を勝ち取った工場であるということは、当社のチームメンバーは皆誇りに思っております。

その後2008年にウッドストック工場が設立され、RAV4の生産を始めました。2014年には、レクサスRX450Hというハイブリッド車の生産をカナダで初めて開始しました。そして、今年2016年に、トータル700万台の生産台数を記録いたしました。

(松田)次々と拡大をされていらっしゃいますね。工場についてご説明をお願いいたします。

(加藤氏)ケンブリッジ工場には、カローラを生産するノースプラントとレクサスを生産するサウスプラントの2つの工場があります。敷地面積は160万㎡です。本社が愛知県にありますのでこのように表現致しますが(笑)、ナゴヤドーム33個分で、建屋面積はナゴヤドーム6個分です。

ウッドストック工場ではRAV4を生産しております。倍以上の敷地があり、敷地面積は400万㎡ = ナゴヤドーム83個分ですが、建屋面積はまだ小さくナゴヤドーム3個分です。

また両工場内には、テストトラック設備を設けており、毎日一定数の完成車の運転試験を実施しています。両工場共に、工場敷地内には列車の線路が引いてあり、生産された完成車がそのまま遠方のお客様へ出荷されています。

2つの工場は、距離的には50km程離れておりますが、生産の効率化を図るため、ワンプラントコンセプトという概念の下、一部のリソーセスを共有しております。

例えば設備としては、ケンブリッジ工場のプレス設備で、ウッドストック工場で生産しているRAV4の部品を製造したり、逆にウッドストック工場のプレス設備にてレクサスの部品を製造したり、またケンブリッジ工場のノースプラントとサウスプラントでもプレス設備やバンパー等の樹脂成形設備を共有しております。

設備のみならず組織としても、様々な部門・人材を共有しており、集約した組織にて両方の工場のオペレーションを見ています。このシステムが大変上手く機能しています。

(松田)敷地内に列車の線路が引いてあるとは驚きました。生産能力についてはいかがでしょうか。

(加藤氏)直近の生産台数は、昨年2015年で59万723台です。この台数は、昨年のオンタリオ州に生産拠点を置く自動車製造会社の生産台数の中で、一番の実績です。今後もしっかりと継続して生産をしていきたいと思っております。

当社の用語で、タクトタイムというものがあります。これは簡単に言うとライン(コンベヤー)のスピードで、1台の車が生産されるペースを表します。

TMMCのタクトタイムは、カローラが55秒、RAV4が57秒、レクサスRXが120秒で、つまりカローラは55秒毎に1台というスピードで生産されているということです。現在はお陰様でほぼフル稼働で生産しておりますので、そのスピードで1年間生産し続けると、約60万台を生産することができるということですね。

(松田)55秒に1台の車が生産されているとは、驚愕です。毎年ご成長を続けられておりますが、御社の強みはどちらにあると思われますか。

(加藤氏)先ほど申し上げましたように、昨年の生産台数は60万台弱ですが、カローラを生産し始めた1988年、1989年の年間生産台数は5万台でした。

そこから生産台数を増やし、レクサスやRAV4といった車種を追加しながら現地生産を拡大し、10倍以上まで生産能力を伸ばしました。それに伴いまして、従業員の数もスタート時点は1000人でしたが、現在は8000人強、と8倍以上まで拡大いたしました。

私は、設立当初に小さな所帯でスタートしたことが強みとなり、現在のサイズでもしっかりと運営が出来ている、と思っています。スタート時に日本のトヨタ自動車から出向してきたメンバーとカナダ人のメンバーが、密度濃く、“トヨタのものづくり”を始めることができたのです。

もちろん拡大をすることが出来たのは、その後の経済や市場の状況に恵まれたこともありますが、基盤となるものがしっかりと植え付けられたことで、現在のように成長しても、“トヨタのものづくり”が揺るぐことなくしっかりと育つことができたのだと思っています。

ここで会社のロゴの説明をさせていただきたいのですが、このロゴには2つのアルファベットが隠れているのですが、何か分かりますか。

実は、C(Canada)とJ(Japan)がモチーフとなっているんです。双方の国が心を一つにして、頂点に向かって伸びていこう、という思いが込められています。小さいサイズから始めたために、この気持ちがメンバーにしっかりと根付いて、今のパワーの源になっているのではないかと思っています。

(松田)ロゴに隠された意味も印象的ですが、基本がしっかりとされていることが、御社の強さの秘密なんですね。拡大と共に従業員数も増えていらっしゃいますが、人材教育はどのようなことをされていますか。

(加藤氏)当社では新人の受け入れプログラムが大変しっかりとしています。入社後は、人材育成のための道場にて、製造現場で働くための基本技能を身に着けてもらい、同時に適正を見ながら、各々の適正に合う部署に配属をします。

集合教育後の各配属先でもトレーニングメニューがあり、独り立ちをフォローしています。それらの仕組みは大変高いレベルで確立されておりますが、常にフィードバックを受け、カイゼンの努力も惜しまないようにしています。

(松田)先ほど拝見させて頂いたビジターセンターに、数々の表彰盾が飾られていましたね。

(加藤氏)J.D. Power社という調査会社が、毎年顧客満足度や商品品質に対する調査を世界各地において行っており、TMMCは北米の自動車生産業の中で、工場部門で合計14回、車種部門で12回の賞を獲得しております。

工場部門で14回というのは、北米大陸にある自動車メーカーの工場としては最多であり、世界中のトヨタ工場の中でも、トヨタ自動車九州の16回に次ぐ成績です。工場として長年評価をされているということを、我々は大変誇りに思っております。

その他にも、2016年は、Canada’s Top100 Employers、Waterloo Area’s Top Employers、Canada’s Greenest Employers、Canada’s Top Family-Friendly Employers、Top Employers for Canadians Over 40といった数々の賞を受賞しました。

(松田)従業員の皆様にとっても、働きやすい職場であることの証明ですね。コミュニティ貢献も多くされていると思いますが、どのような活動をされていますか。

(加藤氏)ケンブリッジ工場のあるウォータールー地区、及びウッドストック工場のあるオックスフォード地区のUnited Wayという団体に対して、日本人出向者を含めた当社のチームメンバーが、様々な形でチャリティ活動や寄付を行っています。

United Wayは各地域の健康や福祉、経済成長を支援しておりますので、その活動に協力することで、我々が事業をさせていただいているコミュニティの潤いに協力できればと考えております。

また、University of WaterlooとConestoga Collageという地元の教育機関にも支援をしております。テクノロジー関連分野に傑出している両学校の学生のレベル向上を支援することで、当社とは限りませんが、追々この地域の会社への貢献に繋がると考えております。

他には、Habitat for Humanityという、貧困層や低収入家庭のために住居建築をして自立支援を行っている国際団体の活動に参加しています。

年に1日、仕事を休みにして全員現場に集合し、柱の組み立て、ペンキ塗り等々、割り当てを決め、団体を通して提供いただいた土地と材料を使って、家造りをするんです。私ももちろん、社長も参加し、柱に釘を打ったり、ペンキを塗ったりします。

これは一つの事例であって、他にも地域や自然保護区の清掃等に参加しています。先ほど申し上げた当社の基本理念の一つである、“地域社会への貢献”の一環として、寄付のみでなく労力としても支援をし、一人ひとりが参加できるような活動を行っております。

(松田)それでは御社は今後どのような展望をお持ちでしょうか。

(加藤氏)ご存知のように、近年、北米の自動車産業は南下傾向がございます。つまり、アメリカ南部やメキシコ等の、より労務レートが安価な土地へ、自動車製造業が移動するという現象が起こっています。TMMCも2019年より、カローラの生産をメキシコに移すことになりました。その後は、TMMCでは現在需要台数の一部を輸入品で賄っているRAV4を増産していくことになります。

以前は競合相手が隣人だけでしたが、現在は世界中におり、地球規模で争わなければならなくなっています。

そのようなビジネス変化の中でより競争力を持つためには、レクサスを生産している“品質の良さ”という強みを維持しながら、当地でビジネスを行う上で課題となっている高価な労務レートを補える、堅実なものづくりを、カナダ人チームメンバーと共に知恵を絞って行っていくこと、そしてまた次の30年に繋げていくことが、今後大切なことだと考えています。

(松田)加藤さんのご経歴についてお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらでしょうか。

(加藤氏)生まれは岐阜県です。小さい頃に愛知県の名古屋市に移り、その後は愛知県で過ごしました。学生時代から車が好きだったため、何らかの形で車の製造に関わりたいと考えておりましたが、エンジニアとして完成車製造メーカーを希望し、TMMCで最初のカローラが「おぎゃー」と産声を上げた1988年に、トヨタ自動車に入社しました。

入社後は、海外生産技術部に配属され、海外、特に発展途上国の工場にて新車立ち上げの仕事を5年間行いました。インドネシア、インド、タイ、ベネズエラといった国々に出張ベースで行き、溶接の設備を作ったり、新車の立ち上げやモデルチェンジを行いました。
 
その後、国内の生産拠点で仕事をしたいと自ら希望し、愛知県にあるトヨタ自動車の工場のうち、高岡工場に異動させて頂きました。そして、トヨタのものづくりの本流である国内の生産現場に身を置き、1996年まで勤務をしました。

(松田)その後1度目の海外赴任をされるんですね。

(加藤氏)アメリカ・カリフォルニア州のロングビーチにあるトヨタの部品工場、TABCに初めて海外出向をし、5年間務めました。

2001年に高岡工場に戻り、その後10年近く、しっかりと国内のものづくりを経験しました。

そして2010年にカナダに参りましたので、現在6年が経ったところです。TMMCに出向してから2度役職が変わりましたので、少し長めの駐在ですね。

(松田)これまでで一番印象に残っているお仕事についてお話しいただけますか。

(加藤氏)2007、8年頃に高岡工場に勤務していた頃の話ですが、高岡工場は、1966年に設立され今年で50周年を迎えた、トヨタ自動車の中で老舗工場です。そこで、プレス、ボディ、塗装、組み立て、といったほぼ全てのラインを入れ替え、トヨタの新しいライン造りをしよう、というプロジェクトの担当を致しました。

当時の最先端技術をあらゆる箇所に導入し、理屈上では、品質の良い車を、以前より短時間で廉価に生産することができるようになるはずで、私を含めメンバーも期待を胸に作業を進めていたのですが、現実はなかなか上手くいかなかったんです。予想をしていた水準に持っていくまでの日々の改善の積み重ねに、かなり苦労をしました。

その業務を通じて一番勉強になったのは、例えば、良いゴルフの道具をいくら持っていても、使う人が上手でないと良い結果は出ませんよね。それと同じで、いくら良い設備を導入しても、それを使う我々、人が、その心を分かってものづくりをしていないと、最終的に良いものは出来上がらないということです。

また、私たちは良い車を一台作れば良いという訳ではありません。今つくった一台と、次に作る一台、明日つくる一台、一週間後につくる一台、一年後につくる一台、これらの全てが同等の品質を保たなければならず、それをつくり続けることの難しさも身に沁みて学びました。

大変で辛い思いもしたと同時に、大変勉強になったプロジェクトでした。

(松田)加藤さんがお仕事を進める上で心がけていらっしゃることはどのようなことでしょうか。

(加藤氏)第一に“現地現物”です。同じ現象を、画像や紙面で確認して次の手を判断するのと、起こっていることを現場で見て、五感で感じて判断するのとでは、全く違います。これはトヨタ自動車では皆が叩き込まれることですが、私たちが率先して現地に足を運ぶことで、しっかりと未来にも引き継がれていって欲しいと思っております。

第二に、先ほど苦労した経験についてもお話しましたが、大変な状況にあっても、“どうせやるなら前向きにやろう”ということを心がけています。

第三に、“言葉のキャッチボール”です。例えば、自分が球(言葉)を投げた時、相手が取りづらそうだった場合は二球目は取り易そうなところに投げたり、もしも取ってくれなかった場合には次の球を優しめに投げたり。

そして相手から球が返ってくる時も、ただ受け取るだけではなく、それがどのような球かを感じ、強い球が返ってくる人にはこちらも強い球を返せるし、返ってくる球が弱めだった場合にはこちらも弱めの球を投げれば良い。しっかりと球を取れる人にはわざと暴投してみて、「お、こんな球も取れるんだ」と確認してみたりもします(笑)。

そうすることで投げる自分も含めて、一緒に仕事をするメンバーの成長も感じられますし、相手のその時の状態なども感じることができます。単に“コミュニケーション”として話をするのではなく、キャッチボールのように、一球一球お互いの言葉を意識して感じ、関係を築くことを心がけています。

(松田)プライベートについてもお伺いしたいと思いますが、好きなスポーツは何でしょうか。

(加藤氏)スポーツは、ゴルフとスキーをします。ゴルフのデビューラウンドは、インドネシアのジャカルタでした。

入社直後に発展途上国の仕事をしていた時、一緒に出張をする上司から「ゴルフをやるか」と聞かれたんですが、私はその当時はゴルフなど全くやる気がなく、「そんな止まっている球を打つようなつまらないスポーツやる訳ないじゃないですか」と返答してしまったんです。

ゴルフが好きだったその上司からは「もうお前の面倒はみない!」と怒られてしまったのですが(笑)、私はまだ20代半ばで、初めての海外出張でドキドキしていましたので、この人に捨てられたら生きていけない、と思ってその翌日にゴルフクラブを1本だけ買い、出張までの間、近くのゴルフ練習場のレッスンに参加して練習をしました。

そして出張の前日にクラブを一式買い、ジャカルタで初ラウンドをしたんです。最初はそのように仕方なく始めたのですが、今は時間さえあればやりたくて仕方ないですね。カナダに来てからは暖かいシーズンはエンジョイしています。

(松田)スキーはどのくらいされているのですか。

(加藤氏)スキーは学生時代、日本でスキーが盛んだった頃に遊びでやっていたんですが、大学の時に競技スキー部に入部し、回転・大回転・ジャンプ等をやりました。冬季の一番多いシーズンは、年間100日雪の上にいた年があります。どうやって卒業したんだと不思議がられますが(笑)。

社会人になってからもしばらくはやっていましたが、少し離れてしまった時期もあり、カナダに来てまた始めました。オンタリオ州には大きなスキー場はあまりありませんが、小さいスキー場がたくさんありますよね。冬場は近くのローカルスキー場へ家族と共に通っています。車で15分くらいでゲレンデに到着し、2、3時間滑って帰る、という風に気軽に出来ますし、雪のコンディションがとても良いので、お陰で上手に滑れる気がして(笑)、楽しんでいます。

(松田)夏はゴルフ、冬はスキーと一年中プライベートも充実されているようですね。では最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いいたします。

(加藤氏)当社の日本からの出向者は、ほとんどが家族連れで来ております。もちろんカナダの治安や政治・経済が安定していることもありますが、補習校を含めた商工会の様々な活動が充実しているお陰でもあると思います。つまり家族を含めたメンバーが、様々なところでお世話になっているということであり、日頃のサポートに対して感謝を申し上げます。

また、各会員企業の方々が日本からカナダに来てビジネスをされておりますが、皆様現地に溶け込み、根付いた形でビジネスを築こうと、ご尽力されていることと思います。そういった日々の暮らしの中、我々出向者にとって商工会の活動というのは、日本人同士が集まり協力し合える、ほっとできる空間でもあります。

当社を含めた会員企業、今後海外進出をされる日系企業の皆様にとってのオアシス的な存在として、情報提供やイベント開催を継続して頂きたいと思いますので、どうぞ宜しくお願いいたします。

(松田)インタビューは以上となります。本日はお時間を頂き有難うございました。


戻る   過去の新代表者紹介インタビュ一覧はこちら