リレー随筆


カナダと日本で働いて思うこと



Beeline Interactive Canada, Inc.
世古 学


私はモバイルゲームの開発をする会社の代表としてトロントで7年半仕事をさせていただきました。以前にも米国で勤務経験があり、都合12年間を北米で過ごしたことになります。

現在は日本で仕事をしておりますが、日本と北米という遠く離れた二つの場所で働かせていただいた経験を基に、働くということの捉え方の違いについて述べたいと思います。

「いいねえカナダ人は毎日夕方には帰れて」時折、カナダの人の働き方を見た日本人が冷ややかに言うのを耳にします。私も以前はそう思っていました。しかしカナダ人が聞いたら何と言うでしょう。「じゃあなぜ日本人は毎日残業してるんだ?仕事が趣味なのか?人手が足りないのか?」と質問攻めにあうかもしれません。

そのような時、私は「日本人はこのように世界一勤勉に働き、焼け野原から世界一の経済大国を作ったんだ」と胸を張って言います。しかしその一方で、実はどこかぼんやりとした自信の無さを感じてしまうのです。

私は様々な外国人と仕事をした経験から、日本人は真面目でよく働き、仕事の質も世界一高いと実感しています。しかし「労働生産性国際比較」を見ると、日本の順位は米国やカナダよりも下位に甘んじ続けているのです。

つまり、日本人より早く帰るカナダ人は実は日本人よりも仕事がデキると国際的には見られているのです。日本の価値観からすると受け入れ難いことかもしれません。

カナダの人たちはその日の仕事が終わると会社を出ます。もちろん終わらなければ残る人もいるし持ち帰って家で仕事をする人もいます。ランチを食べず夕方までぶっ通しで仕事をする人もいますし、会議中に居眠りをしている人はいません。つまり効率が良いといえばその通りです。

別の側面として、カナダの人は仕事が終わってから、それぞれいろんな別の顔を持っているように思います。家庭、ボランティア、趣味、勉強といった、仕事以外の自分の人生において重要と考えることに、しっかりと時間を割いているように見えます。私はこれこそがカナダが労働生産性で日本を上回っている大きな理由の一つなのではないかと考えます。

私も若い頃は長時間労働を存分に経験しましたが、そんな日々でも、今夜はデートだという日は、限られた時間の中で一日分の仕事をいかにして早く終わらせるかということに必死で、仕事の効率が大変高かったのを覚えています。

考えてみると、仕事以外の部分に人生の比重をしっかり置くカナダの人は、言わば毎日が、私の例で言うデートという状況(ちょっと極端過ぎますが敢えて)で仕事をしているのだと思います。

働く時間(ワーク)と自分の時間(ライフ)の時間配分がしっかりと個人の価値観に根付いているからこそ、仕事は時間内に終わらせるものであるというゆるぎない基盤があるのだと感じます。

私はこれこそが、最近言われるワーク・ライフ・バランスの最も重要な部分であると感じます。労働時間を短縮するために仕事そのもののやり方を変えることは大変重要で尊いことであります。しかしながらカナダでの仕事や生活の経験から、仕事面だけの効率化では決して十分でないと私は感じています。

日本において多くの人が、仕事の外での自分に価値を見出し、それが大切であるということを自覚し、そこに時間を配分してコントロールすることができるようになれば、ワーク・ライフ・バランス活動も自然発生的に進むと思いますし、それがこれからの日本の国力を持ち上げる鍵になると考えています。



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