「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー




<第142回>
Honda of Canada Mfg.
森本 務 President


今年4月に社長に就任された、ホンダオブカナダマニュファクチュアリング(以下HCM)の森本社長にインタビューをお願いしました。オフィスはトロントより北西部へ車で約1時間の距離にあるAllistonです。

カナダ人にとっても、「アリストンと言えばホンダの工場」として有名な町で、HCMさんは、広大な敷地内に工場を持ち、4200名の従業員雇用、地域へ多大な貢献をされています。商工会の会員も最大数の36名を登録いただいています。カナダを拠点として行われる新しい事業について、森本社長のご経歴やプライベートについてなど、色々とお伺いしてきました。





(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いします。

(森本氏)ホンダオブカナダマニュファクチュアリング(以下HCM)は、ホンダの工場としてCivicとCR-Vの2種の自動車、及びエンジンの生産をしています。稼働開始は1986年で、今年で創立30周年を迎えます。10月に大々的に記念式典を行う予定です。

HCMにおいてPlant1ではCivicを、Plant2ではCR−Vを生産しています。Plant3はエンジンプラントとして、Civicに搭載するエンジンをHCMとインディアナ工場向けに生産しています。

敷地面積は716エーカー、87.6万坪です。東京ドーム21個分と表現すると分かりやすいかと思います。実は私は約20年前にもHCMに赴任をしていたのですが、3年前にこちらに改めて来て、敷地の脇をにあったTottenham Roadという道が移動していたことに驚きました。HCMがエンジン工場を建設する際に西側に移動したんです。

(松田)入口付近にはまだまだ拡大できる敷地があるようでしたね。工場の生産能力について、教えてください。

(森本氏)自動車の年間生産能力は約40万台、エンジンは約24万3000台です。2013年11月にエンジンの生産累計台数が100万台を超えました。また、2015年3月に完成車の累計台数が700万台を達成しました。

ホンダは北米に、カナダ、オハイオ、インディアナ、アラバマ、そしてメキシコ、と四輪工場を持っています。2015年度は北米全体で年間約192万台を生産しましたが、そのうちHCMは約21%に当たる40.2万台を生産しました。北米においてもかなり高いウェイトを占めております。

また、HCMでは約92%の部品を北米内(カナダ30%、アメリカ62%)で調達している、地消地産であるのも特徴の一つかと思います。

(松田)新しくカナダを拠点としてCivicの生産を始められたとのことですが、詳しくお聞かせいただけますでしょうか。

(森本氏)2016年モデルのCivicは、カナダがグローバルリード拠点ということで生産を開始しました。

これまで日本で立ち上げて各地域に展開をしていたのですが、2016年モデルのCivicについては、カナダで立ち上げ、アメリカ、中国、ブラジル、タイ、トルコ等の地域に展開をしていきます。そのため、グローバルリード国として、各現地法人への情報共有やアドバイス等が迅速にできるよう、サポート体制を整えております。

また、今回のCivic生産に際し、設備や工夫を新たに導入しました。パフォーマンスや燃費を向上させるためにパーツを“軽量化”し、高級感を感じられる“意匠性”を取り入れ、パーツをモジュール化することで“生産性”をアップするという3つの切り口により、日本、そしてグローバルで確立された技術を、更に進化させ、高品質な車づくりの基盤をつくりあげていきます。

(松田)カナダがグローバルリード拠点として選ばれたのには、どのような背景があるのでしょうか。

(森本氏)第1に、基本の考え方として「需要のあるところで生産をしていく」ということがありますが、第2に、カナダでは1988年から18年連続でベストセールスを記録しました。そして第3に、カナダの政治や社会的な安定度のおかげもあり、HCMでは操業開始当初より生産を拡大しております。

またHCMでは、過去にもOdyssey、MDX、Pilot、Ridgelineといった北米専用車を立ち上げてきた歴史がありますので、従業員がその歴史によって培われたノウハウや志を有していることから、HCMがグローバルリードとして評価されたのだと思います。

(松田)常に拡張をされているHCMさんですが、御社の強みはどちらにあると思われますか。

(森本氏)我々はもの造りをしておりますので、人材は大変大切です。オンタリオ州には自動車工場が点在しておりますが、他社と比べて北に位置していますが、土地柄もあってか定着率が高いと考えています。もちろん当社では従業員へ働きやすい環境を提供するように努力はしておりますが、当地に工場建設をした先人の知恵を感じております。

また当社では、マネージャー下のスタッフ層からアソシエイト層までが、改善提案、品質改善、安全・作業改善、職場環境改善活動といった各種活動に、主体的かつ連携よく取り組んでおり、それがHCMの競争力の源泉となり、活力のある現場作りに一役買っていると思います。実際にアソシエイトの声を取り入れながら生産の進化を図っておりますし、地域や海外で技術交流を行うなど、社員教育にも注力しています。

(松田)職場環境づくりにも大変力を入れられているそうですね。

(森本氏)ホンダフィロソフィーの一つである“平等”な職場環境づくりを行っています。今現在私が着用しているこの白い作業着は、社長であろうと入社1日目の社員であろうと、皆同じものを着用します。ホンダの夢の出発点であり、創業者・本田宗一郎氏のこだわりが込められています。

また、ホンダのオフィスには、例え社長であろうと個室はありません。皆が同じフロアに座り、オープンな意見交換ができる環境を作っています。同じように、社長であろうと指定の駐車場はありません。

他にも、工場内での作業効率を向上させるために自動化を導入したり、作業負荷を軽減させるために、人間工学に基づいた作業姿勢のアドバイス、歩行帯の整備など、従業員の働く環境を整え、活力溢れる生産活動ができるように取り組んでいます。

(松田)御社は環境活動や地域社会活動にも積極的に貢献されているということですが、ご説明いただけますか。

(森本氏)我々は工場運営をしておりますので、地域住民への環境配慮は、大変厳しく取り組んでいます。環境ファクターについても、更なる改善を進めています。社会に存在を期待される企業でありたいというのが、ホンダの思いです。

地域社会活動については、地域ボランティア支援や、バリーマラソンやトロントマラソン等のイベントへの積極的参加・支援、また子供達にオフロードバイクに触れ合う機会を提供するイベント等、多岐に渡ります。

その中でも、2004年より12年間行っている植樹は現在累計約8万本を超えました。工場の裏地に植えられているのですが、この植樹がなければここに木は一本もなかったのではないかと考えると、植樹の大切さを感じます。

このイベントはもちろん社員のボランティアなのですが、10年以上連続して行っている社員には2年前より表彰をするようにしました。当日は、子供達が大変積極的に参加し、働いてくれるんです。社員にも根付いており、今後も継続して行っていきたいプロジェクトです。

(松田)地域と地球の未来を考え取り組まれている姿勢に、心から感嘆します。森本社長は社長として、どのような目標や展望をお持ちでしょうか。

(森本氏)HCMがこの地で事業を始めてから、地域の人たちを始めとする従業員には、社会の背景から多くの会社が南部に移動している中、大変長く勤めて頂いております。工場はお金を払えば建てられますが、従業員を買うことはできませんから、その人たちを大切にして、ずっとこの地でもの造りをして行く、というのが私の目標であり、実現したい想いです。

(松田)広く、長い目線で物事を見られているんですね。それでは、森本社長のご経歴についてお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらでしょうか。

(森本氏)出身は島根県です。1984年に本田技研に入社しました。モノ造りの仕事が好きだったということと、数台のバイクを乗り継ぐほどバイクが好きだったのが主な理由ですね。

入社後は、埼玉製作所にて生産業務や生産技術を行い、1997年にここカナダのHCMに赴任しました。メープルプロジェクトというカナダらしい名称のプロジェクトだったのですが、Plant2の立ち上げプロジェクトの塗装部門として、企画検討から工場の建設、設備の段取り等を、アソシエイトと習熟しながら実行しました。

その後、新工場で新車種の立ち上げをしました。ホンダ技研として初めての大型ミニバン(ODYSSEY)の生産を行ったのが、ここHCMなんです。日本でも作ったことのないような大きな車を作ったというのが、HCMの大きなマイルストーンですね。当時、トラックの生産をしてくれたアソシエイト達は、今現在も働いてくれています。

そして6年後にまた埼玉製作所に戻り、塗装、溶接のマネージャーを経験し、その後スタンピングや溶接を行うボディ工場の工場長を3年ほど務めました。そして、2013年にまたHCMに戻り、Plant1とPlant2の工場長兼SVPを務め、本年4月より社長として就任しました。

(松田)10年ぶりにカナダに戻られたということですが、特別印象深いこと、また10年前と比べて変化は感じられましたか。

(森本氏)1972年に誕生したCivicの10代目が、2016年カーオブザイヤーを獲得しました。Civicとしては2006年ぶりとなります。Civicは、ホンダを支えてくれたビッグピラーですから、その車をHCMで作れていることは大変有難く、HCMの皆は誇りに思うべきだと思っています。

私自身も、カーオブザイヤーを獲得した10台目Civicの生産に携わっていたということは大変幸運であり、喜ばしいことだと有難く感じています。

また、10年ぶりにカナダに戻ってきて、従業員のスキルが上がっているということが一番印象が強かったです。そうしたこともあり、着任した3年前は、各部門のマネージャー職に現地社員と日本人駐在員の双方が就いていましたが、2年前から、日本人駐在員はマネージャー職を離れ、アドバイザーとして、将来の企画戦略等に注力をするように体制を変更しました。

現地マネジメントのレベル向上のためと、カナダの会社であるHCMが当地で営業をしていく上で、本来あるべき姿にすべきだと考えたためです。それ以来、現地マネジメントのレベルは向上していると感じています。その分、日本人駐在員のスタンスの取り方や、価値の置き方というのは難しくなってきていますが、それらは今後我々が越えていかなければいけない壁ですね。

(松田)御社では、ここ数年現地社員の方が社長職を務められていましたが、今年4月に森本社長が就任され、日本人社長に戻ったという形になりますが、森本社長の役割はどちらにあるのでしょうか。

(森本氏)当地で事業をする限り、当地に足のついている者が社長をするべきだというのは変わらないと思います。ただし、世界に多くの拠点があり、それぞれの拠点の世代が変わっていく中、全ての準備ができてはいないという事実があります。今回の人事は、アメリカ人、カナダ人、日本人などではなく、今いるマネジメントの中で、最適配置をした結果だと私は思っています。

決して日本人でなければならない、というわけではなく、当社がどうしたら良くなるか、ということを考えたマネジメントであるということは変わりません。大切なのは、今ある人材を永遠につなげていき、どれだけ良いモノ造りができるか、ということだと思っています。

(松田)森本社長が、お仕事をする上で、大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(森本氏)私の座右の銘は、「ただ 語らず まず歩め」です。あれこれ言うよりも、やっぱり足を前に進めないとダメだということが、私がこれまでやってきて一番思うことですね。机上で色々言うのは良いが、我々はものをつくってなんぼなので、造ることに挑戦し、失敗し、また挑戦し続けなければならないと思っています。

マネジメントをする上では、3つのことを心がけています。1つ目は、“もの造りの基本を実直に守り”、皆さんが安心して自分の仕事ができる環境とプロセスを作ること、2つ目は、“現場で現物を観て判断すること”、3つ目は、“もの造りの現場に敬意を払うこと”。

我々の生業はもの造りですから、何千人という現場の社員たちが作ってくれています。財産は経験から学んだ人たちです。

また、私は“異質の人たち”を大切にしています。我々も入社当時は社会から新人類と呼ばれ、「なんだそれ」と反発心もありましたが、新しい、ユニークな考えをもった人がいる、ということは、周囲に影響を与え、一番の原動力になるのではないかと思っています。

これからも、異質の人たちのそれぞれの価値を見出し、伸ばすことができるような環境を整えていきたいと思っています。

(松田)大変興味深いご意見をたくさん伺えました。それでは、プライベートについてもお伺いいたしますが、森本社長のご趣味はなんでしょうか。

(森本氏)サッカーを小学3年生からしていて、入社してからも会社のサッカーチームに所属しました。入社後3年間くらいはサッカーがあったおかげで会社生活を楽しく過ごせた気がしますね(笑)。

今もプレイをしたいんですが、きっと怪我をしてしまう気がしますのでやっていません。今回カナダに来る前までやっていましたので、できれば私もサッカーチームでプレイしたいという願望はあるんですが(笑)。

(松田)今はお休みの日などは何をされていますか。

(森本氏)今はもっぱらゴルフですね。カナダではプレイできる期間が短いですが、これからの季節思いっきり楽しみたいと思います。

美術館巡りも好きですね。トロントだとROMに行ったり、また、Vaughan市にあるMcMichael Canadian Art Collectionが、とても静かで良かったです。自分でも不思議なほど、その時の気分や状況によって、行くたびに興味を引く美術品が違うんですよね。それも魅力の一つです。美術館内でコーヒーを飲むのも気持ちが落ち着いて好きですね。先日からROMで浮世絵展が始まりましたので、観に行きたいと思っています。

また、先日、40年前に欲しかったオートバイをケベックで見つけたんです。CB400Fというモデルなんですが、当時は高根の花で、購入など到底無理だったんですが、今回購入することとしました。けれどキーもなくなってしまっており、乗るには結構色々なパーツを変えなければいけないので、今はもっぱら鑑賞をするだけですが、それを見ながらビールを飲むのも楽しいですね。

ゴルフを楽しまれる森本社長 40歳のCB400F



(松田)40年前に欲しかったものを今手に入れられるなんて、素敵ですね。それでは、最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いします。

(森本氏)今年は商工会のイベントとして、夏に当社の工場見学を実施しますので、是非ご参加ください。もしイベントに参加できない方でも、多少人数を集めていただければ、個人の方々でも見学いただけます。是非カナダでもの造りを行っている現場を見ていただければと思います。そして、引き続き、ホンダのファンになっていただければ幸いです。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

(松田)インタビューは以上となります。本日はお時間をいただき有難うございました。




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