「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー




<第136回> 
MIT Power Canada Investment Inc.
桑原 研三 President & CEO

MIT Power Canada Investment Inc. の桑原社長にインタビューをして参りました。
MIT Powerさんは、発電所の管理・運営をされております。長いこと電力事業に従事されている桑原社長のお話を通して、日々何気なく使用している電気を、発電させ、必要量を供給・管理するのに、色々な技術が使われ、様々なところで働かれている方々がいることを再認識しました。過去に海外で経験された出来事や、136回となるこのインタビューの中で初めて伺うご趣味についてもお伺いしてきました。




(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いします。

(桑原氏)MIT Power Canada Investment Inc. は、三井物産の100%子会社で、2008年10月に運転を開始しました。オンタリオ州西部のSarnia市の近くあるガス焚き火力発電所(Greenfield Energy Centre)の事業運営を行うための会社として設立され、私が社長として5代目となります。

Greenfield Energy Centreは三井物産とアメリカの会社で50:50%で運営され、出力1,005MW(メガワット) のカナダ最大規模のGas Combined Cycle発電を行っている発電所です。

また、2012年に三井物産がカナダの再生可能エネルギー(Renewable Energy)事業に参画し、そちらの運営管理もしております。社員数は現在10名で、内三井物産からの出向者は私を含め3名です。

(松田)Green Field Energy Centreのガス火力発電は、どの程度の電力需要を賄われているんでしょうか。

(桑原氏)電力需要は、春夏秋冬の季節や1日の時間帯においても季変動します。電力需要に対して電力供給のうち固定された部分をベースロードといいますが、オンタリオ州ではベースロードは半分以上を原子力発電、その次に水力発電が担っています。

さらにベースロードに自然エネルギーである風力発電や太陽光発電などが加わります。電力需要をベースロードと風力・太陽光発電の供給量のみで賄えることもありますが、夏場や冬場の電力需要が高まる時や一日の中で電力消費が著しい時間帯はベースロードと風力・太陽光発電だけではカバーできません。

また原子力発電が停止し供給が落ちたり、風が弱まって風力発電が減少したりした際に予想より供給量が落ちることがあります。

ガス火力発電が、ベースロードでは足りない部分あるいは供給が落ち込んだ際に発電して全体の電力需要と電力供給のバランスを取るという役割をしています。

Greenfield Energy Centreは競争力ある大型火力発電所として、それら需要に合わせて運転するため日々起動・停止を繰り返しています。そのため、常にメンテナンスを欠かさず、必要なときに運転ができるように備えていくことが最も重要なことです。

(松田)Green Field Energy CentreのGas Combined Cycle発電について、ご説明いただけますか。

(桑原氏)Gas Combined Cycle発電というのは、ガス燃料でガスタービンと蒸気タービンの2種類のタービンを組み合わせた大変効率の良い発電方法です。Green Field Energy Centreでは3台の大型高効率のガスタービン、1台の蒸気タービンとそれぞれの発電機という構成となっています。

Gas Combined Cycle発電を簡単に説明しますと、圧縮空気の中でガス燃料を燃やしてガスを発生させ、その圧力でガスタービンを回して発電します。ガスタービンを回し終えた排ガスはまだ十分な余熱があるため、それを利用して熱交換器で蒸気を作り、蒸気タービンを回して発電します。

排ガスも無駄なく使い、2重に発電する大変効率の良いシステムです。 燃料がもっているエネルギーをどれだけ効率的に発電で取り出せるかを熱効率と呼びますが、従来の蒸気タービンのみを使用する発電方法の熱効率は40%程度ですが、Gas Combined Cycle発電は50%以上でさらに高効率化が進んでいます。また、使用する燃料もガスですのでCO2の排出が少なく環境にも優しい発電方法です。

原子力発電は今後も維持されていくと思いますし、風力、太陽力、バイオマスなどのRenewable Energyは今後より一層増えていくことが予想されます。

ただ、ガス火力発電は環境負荷が低く安定して電力を供給できますし、燃料のガスも入手しやすく扱い易いです。特に効率的なGas Combined Cycle発電は今後も世の中で使われていくであろう発電方法だと思っています。

(松田)Gas Combined Cycle発電の利点がとてもよく分かりました。再生可能エネルギーの事業についてもお伺いしたいと思いますが、いくつくらいサイトをお持ちなのでしょうか。

(桑原氏)カナダ4州(BC州、ON州、NB州、PE州)で合計12箇所に発電所を持っており、その内10箇所が風力発電所で残り2箇所が太陽光発電所です。発電設備容量は合計で680MW、内太陽光発電が20MWです。

先程申し上げたGreen Field Energy Centreに比べると規模が少し小さいように感じられますが、再生可能エネルギー(Renewable Energy)としては680MWは大きな規模です。

本Renewable Energy事業は欧州系の会社が主体的に開発をし、三井物産は30%出資し参画しています。発電設備がきちんと稼働するようにパートナーと共に運営管理しているところです。

(松田)お写真を拝見するだけでも、太陽光発電用のパネルが広がっている光景はすごいですね。大きいところだとどれくらいの広さがあるのですか。

(桑原氏)太陽光発電はパネル1平方メートルで0.1~0.15KW発電出来ると言われています。この写真の太陽光発電所はパネル面積だけで300m x 300m弱ぐらいの広大なものです。また、100m以上の高さの風力発電の風車が並んでいる姿も圧巻ですよ。

ただ、Renewable Energyは規模を大きくしていくには風況・日射条件が良く広大な土地が必要です、また自然にも左右されます。 地球の未来のため、環境負荷がより少なくするには、Renewable Energyをより上手く取り組む技術やより効率の良い発電方式を開発していく等今後も継続して考えていく必要があります。

(松田)こういったご尽力と環境対策が、私たちの便利な生活を支えてくださっているのですね。それでは、今後桑原社長が特に注力されたいことはどのようなことでしょうか。

(桑原氏)まずはGreenfield Energy Centreをしっかり事業運営・管理すること、そしてRenewable 事業がしっかり運営されるように管理していくことが我々の最大のミッションです。

加えて、私自身は、三井物産にて全世界で発電事業含むインフラ事業を展開するプロジェクト本部の出身ですので、地場のカナダやオンタリオ州の特に電力分野での新ビジネスの可能性を追求していきたいと思っています。

(松田)桑原社長のご経歴についてお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらですか。

(桑原氏)出身は岐阜県岐阜市です。高校まで岐阜におり、大学からは東京です。

就職活動の際、漠然と民間でも世の中にしっかり関わった仕事がしたいという希望がありました。その中で三井物産は幅広い分野に関わっており、様々な仕事をする機会を与えてくれそうだと感じたため、入社しました。実際は、入社してからずっと同じ分野に携わっていますが(笑)。

(松田)入社してからはどのようなご経歴をたどっていらっしゃいますか。

(桑原氏)入社後は、機械部門の中で蒸気タービン等発電所に使用される電力機械を扱う部に配属されました。最初はメーカーの代理としてメキシコやコロンビア等中南米に発電機械を輸出する業務でした。

その後名古屋に転勤したり、本社に戻ったりしながら、国内の電力会社向けのメーカーの代理店業務を主にして行ってきました。名古屋には3回、計15年勤務しました。

海外勤務はサウジアラビアに3年間、研修という形でアメリカのサンノゼに1年間、の計2回です。今回トロントには名古屋の三井物産・中部支社から2015年4月に赴任しております。

(松田)サウジアラビアでのご駐在時はどのようなお仕事をされていたのですか。

(桑原氏)サウジアラビアは1998年10月から2001年12月まで機械部門の責任者として駐在しました。機械全般ですので発電機械に加え、自動車も含め様々な機械を担当し良い経験になりました。

サウジアラビアの人はフレンドリーで根が優しく、日本人を同じアジアで成功した国の勤勉な国民として尊敬してくれますので、親しくなるのは難しくなく、またどんな偉い人でもアポ取れ、その意味では仕事はやり易かったです。

ただ、約束の時間には偉い人もだれもが遅れてきます。言い訳が皆決まっていて駐車スペースが見つからなかったからと、その分早く出てくればと思うのですが、そこは国民性でしょうか。 

(松田)イランにも行かれたことがあるとのことですが、お話しいただけますか。

(桑原氏)イランに行ったのは、入社3年目の1983、4年の頃です。大型蓄電池を輸出する商売のために数度1、2ヶ月の間出張に行きました。ちょうどイラン・イラク戦争のときで、イラクが制空権を握っており、民間機でも撃墜すると宣言していたので、唯一就航していたイランエアラインで入国しました。

私が行った期間だけたまたまイラクが空爆を停止していましたが、前後の期間ではイラクから夜ミラージュ戦闘機の編隊が来て爆弾を数発落として帰っていき、1発あたり家1件くらい完全に破壊されたそうです。

そして来襲したイラク機に対してイラン側が対空放射で応戦する光景をみていたと現地の駐在員が教えてくれました。駐在員の人達は肝が据わっていましたね。私も若かったからでしょうが、今考えると自分でもよくそのような時に行ったなと思います。

(松田)空爆が停止されていた時期とはいえ、大変なご経験ですね。それでは、桑原社長がこれまでで一番印象に残っているお仕事はどのようなものでしょうか。

(桑原氏)2011年3月に起きた東日本大震災の時、私は三井物産の100%関係会社に出向し、電力機械取扱い部門の責任者をしておりました。
電力会社さんが、震災で多くの発電所含め設備が損傷した状況で、需要が高まる夏場に備え電力供給力を確保するために必死で対応されている中、私たちも何か役に立つことができないか懸命になって検討し電力会社さんに提案し、結果海外から緊急電源を持ってくる等を行いました。

福島の発電所向けにも事故復旧に向けて設備の緊急輸入等を行いました。

個人的な感想も入りますが、入社後30年ほど電力業界にお世話になってきたご恩に報いる意味でも、この未曾有の震災時に三井物産としてどのような協力ができるのか、どうしたら力になれるのか、ということが常に頭にあり、自分なりに日夜一生懸命がんばったと思います。

もちろん、被災者の方や直接復旧にあたられた方々からしたら、比にならない苦労ではあったと思いますが、我々ができることを本気で模索し、電力会社さんや関係する会社にアイデアを提案し、必死で実行しました。

会社としても復旧に向け少しでも力になることができたのではと思っています。この出来事が私にとって今までで一番印象に残っています。

(松田)数々のご経験をされた桑原社長が、お仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(桑原氏)実は私はある時期までは、この仕事は本当に自分のやりたかったことなのかと疑問に思いながら過ごしてきました。

長年電力業界に携わってきましたが、先ほど申し上げた環境に優しい効率的な発電方式とかは技術者の皆さんが開発されてきたものです。自分が果たして何ができるのかと考えた時期もありました。

ただ、電力という世の中にとって非常に重要な分野に携わってこられたことは、世の中に関われる仕事がしたいとの当初の思いにも沿っていて有り難く感じています。

仕事を進める上で思うのは、ありきたりに聞えるかもしれませんが、やはりお客さんにせよ社内にせよ信頼関係を作ることが重要だと思います。 自分がお客さんから信頼されていると感じられると素直に嬉しいものです。 そのためには人と人とのつながりを大切にし、嘘偽りのない心からのコミュニケーションをとることが必要だと思っています。

(松田)これまでのご経験が基になっていらっしゃるのですね。それでは、プライベートなこともお伺いしたいと思いますが、好きなスポーツはありますか。

(桑原氏)スポーツは自分がやるのはあまり得意ではないですが、ゴルフは最初に名古屋に赴任した際に始めました。以前のお客さんで「ゴルフの下手な者とは仕事も付き合いたくない」とおっしゃった方がおられまして、その時は一所懸命練習しました。

それなりに上手くなったのですが、しばらくしてまた元の下手に戻ってしまいました。今も練習も嫌いですし、熱心なゴルファーではないですね。けれどトロントでは清々しくプレーできるので、今年ゴルフをするのを楽しみにしています。
スポーツ観戦は昔から大好きで特にサッカー日本代表の試合は欠かさず観ています。

(松田)ゴルフもスポーツ観戦もカナダでも楽しんでいただけそうですね。他にご趣味はお持ちですか。

(桑原氏)こちらに赴任する前は三井物産・中部支社で名古屋3回目の勤務だったのですが、当時の支社長が小唄の会に入っておりました。

私も副支社長として名古屋財界の方々と仲良くしたいという思いもあり、小唄の会に入会し、2年半ほど続けました。その間欠かさず毎週1回お師匠さんのところに通ってお稽古をして、自分で作った練習ノート三冊で30曲以上を習いました。

年2回、その小唄の会のお弟子さん全員集まって“おさらい会”が行われます。各人が日ごろ練習してきたものを発表する会で、先輩弟子や卒業された方やお師匠さんのお師匠さんのお弟子さんとか、いずれにしても皆様錚々たる財界の偉い人の前で隣のお師匠さんの三味線に合わせて歌います。

団体もあって特に団体ではその時の新入会員が毎回5から6人ですが、一緒に“正調名古屋甚句”という名古屋名物の唄を歌います。諸先輩の方々はこれを楽しみにしていて、「今回の甚句は良いな」とか「今一だなあとか」とか判定されてしまうので、お師匠さんから徹底的に仕込まれます。

歌詞やリズムのみならず、三味線の調子にも合わせて覚えなければならず、皆一所懸命練習します。私も直前の練習から本番とあの時ほどプレッシャーを感じたことは仕事でもなかなかありませんでした(笑)。

でも、新入同期は甚句同期といって、苦労を味わった仲間として偉い人であっても関係なく大変親しくなりました。

NHK大河ドラマの「花燃ゆ」で、高杉晋作役の役者が三味線を弾きながら「三千世界」を唄ったのですが、自分も練習した曲だなあと思い出しながら聞いていました。カナダにきてからは一切していませんが、自分でも2年半も毎週欠かさず時に集中して練習したものはなかったので本当に思い出深いです。

(松田)一度聞かせていただきたいです。練習ノートも拝見させていただきましたが、たくさん書き込まれていて一生懸命練習されていた様子が目に浮かびます。
それでは、今後カナダで挑戦されたいことはどのようなことでしょうか。

(桑原氏)長いこと電力業界におりますが、海外の発電事業を運営管理するというのは私にとって初めての経験です。1年近く経ちますがまだまだ勉強しなければいけないことが多々あると感じています。
プライベートで何か挑戦するというよりも、まだ仕事を覚えてしっかりできるように努力していかなければいけないと思っています。

(松田)お休みの日はどのように過ごされていますか。

(桑原氏)単身赴任なので、料理を作ったり、掃除をしたりと家事に時間取られていますね。春になれば今年はゴルフを、より力を入れたいと思っています。

(松田)最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いします。

(桑原氏)ご挨拶が遅れましたが、当社MIT Power Canada Investment Inc.は、設立から11年以上トロントで活動しております。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。

(松田)インタビューは以上になります。今日はお時間をいただきありがとうございました。


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