リレー随筆


カナダ人は野球をして育っていない?


鈴木典子

ジャパン・ファウンデーション・トロント


今秋のトロントのスポーツシーンは、22年ぶりにワールドチャンピオンの期待が高まったため、ブルージェイズ一色と言えるほどでした。

22年前と比べると、カナダ唯一のプロ野球チームとして(当時はモントリオール・エクスポズもあった)、全カナダの期待を背負って頑張り、トロントでの試合と投票がかち合った首相選挙で、リベラルに「青を応援する」と言わしめたようです(リベラルのカラーは赤、対抗政党保守党のカラーは青、ブルージェイズが青)。

そのプレーオフ第3戦で、解説者ハロルド・レイノルズが、ファウルボールを観客が採りそこなったのを見て「カナダ人は野球をやって育って来ていない」と発言をして大ブーイングを巻き起こしました。ただ、米国や日本と比べると、この発言はあたっているとも言えます。

2007年にトロントに来てから8年余り、3人の息子が野球を続けてきました。チームメイトの親御さんが、昔はカナダ人の間で野球をする子供というのは、ホッケー、バスケットボールなどには向かない体格の子供だったと言っていました。

そもそも北米では、青少年のスポーツは1年を通じて一つだけに専念するものではなく、野球は夏季だけで、ホッケーやバスケットボール、フットボールなどのオフシーズンにするものの一つにすぎません。マイケル・ジョーダンが最初にバスケットボールをやめた後MLBのホワイトソックスでプレーしたことを記憶している方もいらっしゃるでしょう。

カナダでスポーツ奨学金をもらって米国の大学に行くといえばホッケーのこと。カナダ人でプロ野球選手になるのが夢だという子供は、恐らく多くはなかったのではないでしょうか。

上記の発言に対する反論で、歴史に残るカナダ出身のメジャー選手がいる、というものがありましたが、逆に、殿堂入りしたファーガソン・ジェンキンスを始め、「数えられる」位だともいえます。MLBで現役のカナダ出身選手は20人でメキシコと同数(日本人は12人)、米国以外の出身では圧倒的多数の中南米の選手層に比べれば、影は薄いと言えるでしょう。

しかし、カナダの若者の野球に対する「真剣さ」は、近年とみに高まってきているように感じます。地域のチームがアメリカの高校のトーナメントに参加して優勝したり、ショーケースと呼ばれるトライアウトに米国の大学のスカウトが多数参加したりするようになって来ました。

エリートチームと呼ばれる、将来プロ野球選手を目指し、米国の大学でプレーすることを目標にしているU-18のチームは、現在オンタリオ内だけで77チームに及ぶそうです。

今年の夏、甲子園ではWBSC U-18ワールドカップという高校生の世界大会が行われました。この大会に参加したカナダ・ナショナルチームの30選手のうち11人がオンタリオ出身。今年マイアミ・マリーンズに第1ラウンドで指名されたジョシュ・ネイラーや、ブルージェイズのポンペイ選手の弟などもその一人です。

2年後の2017年、この大会がオンタリオ州のサンダーベイで開催されます。2017年の夏、甲子園を沸かせた高校球児たちがオンタリオ州にやって来て、「カナダで野球をして育った」高校生と熱い戦いを繰り広げるのを、トロントからもぜひ応援したいものです。

http://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/1527978.html
http://worldbaseball2017.com/news/
http://www.japan-baseball.jp/jp/news/press/20150820_3.html








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