リレー随筆


カナダでの社会人2年目に


真弓 知子

ValueInfinity Inc.



カナダでコンサルタントとして働き始めて今月でちょうど一年になりました。三年前トロントに来た時には予想もしていなかった今の自分ですが、そもそもカナダのビジネススクールで勉強するということ自体、十年前には考えたこともなかったのですから、不思議なものです。

ただ、今振り返ってみると、いくつかの節目となる大きな変化はありましたが、変化の前後で自分のそれまでやってきたこととそのあとに自分がやったことが、すんなり頭の中でつながるので、あれはたぶん自然な決断だったに違いないと、ポジティブにまとめることにしています。

これもまた不思議なことに、あの時こうしていたらもっと良かったのではないかと思うことは無いのです。能天気なだけかもしれませんが。

まだまだ三十数年しか生きていない私ですが、小さいころから何度も聞かされて、私の気持ちの持ちように影響を与えてきた言葉があります。
「ひとつこと十年」

これは両親がよく言っていたもので、一つのことを十年やり続けて初めて一人前になる、ちょっとやってできないからとすぐあきらめるな、というような意味です。試しにインターネットで検索してみましたが、どうもうちの家族オリジナルのようです。

私は高校に入った時に初めて真面目に進路を考えたわけですが、その時生物学をやりたいと志し、最終的には修士を終了するまで九年間(最終的な専門は海の生態保全学)を楽しんで学びました。

卒業後は、迷った末に研究ではなく食品企業への就職を選び、製造部門に配属になったことをきっかけに、その後の私のキャリアのコアとなった「Manufacturing and Operations」を八年経験しました。

そのあたりで多少行き詰り、経営の視点とグローバルな視点を身に着ける必要を感じてMBAコースに留学して二年。多くの人と出会い、新しいことを目いっぱい学び、今度はGlobal Business Strategyの立案とその実践に強い興味を持ち、トロントでの新しいキャリアを選んで今に至ります。

これもまた不思議なことではありますが、一つのことをやり続けておよそ十年で次の大きなステップに移ってきたことに気づくのです。その時その時は必死なので、当然意識してやったわけではないのですが、両親の言っていたことは案外正しかったのかもしれない、あなどれない、などと思うのです。

これからさらに十年後、自分がどんな道を行くのかわかりませんが、「ひとつこと十年」、十年間で何かまた一つ習得して、そしてこれが一番重要なことですが、それを楽しめるようになっていたいと思います。
“When you enjoy working, it is not work anymore” (ビジネススクールの友人のコメントで、私のお気に入りです)








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