リレー随筆


家族への手紙


餌取 学

Listowel Technology Inc.



前略
親父、お袋、博(弟)、元気ですか?
こちらも元気でカナダの生活を満喫しています。
おそらくメールで送っても、親父もお袋もメールの開け方がわからないでしょうから
手紙にしておきます。

さて、今年の夏に3人がこちらに来るとのこと、今から楽しみにしています。
ただ、何ぶん、親父達は初めての海外旅行、我が家までの道中で戸惑うこともあるかもしれません。なので、簡単に道案内がてら、カナダがどんなところなのか伝えておきます。

ピアソン空港から自分の住むListowelの町までは、距離にすると東京から静岡あたりまで余裕であります。周囲はのどかな農場が一面に広がっていて、ほぼ牛と馬ばかりいる田舎です。

道中、ナビが「次の曲がり角まで70㎞」とか平気で案内してくれますが、どうか気にしないでピクニック気分を楽しんでください。ええ、気のせいですとも。

それでも、だんだん不安に感じてくるようでしたら、「ドナドナ」の曲でも小一時間、心の中で歌っていると気が晴れてくると思います。

それにしても、日本にいたときはペーパードライバーだったので、車の運転については随分心配をさせてしまいすみませんでした。今は全くNo Problemです。(カナディアンがニコニコしてこの言葉を使ったときは大抵「問題アリ」だったりします。英語って難しいです。)

もちろん、当初は運転に慣れるまで大変でした。ただ、ドライバーの方は皆フレンドリーで、「401」という高速道路を走っている時、トラックの運転手の方が親切にも中指を立てて挨拶をしてくれたことも2回ほどありました。こちらでは親愛の情をこんな風に表現するみたいです。ちょっぴりシャイで、心温まる異文化交流です。

そうそう、途中「Tim Horton」という店にトイレ休憩で立ち寄ろうと思います。どんな店かというと、一言でいうと、「カナディアンのハートを鷲掴みにしているコーヒーと軽食のあるファーストフード」です。なお、ここカナダでは「マック」は影も形も見当たりません。

さて、店のカウンターに行くと店員さんが機関銃のような英語でまくしたててきます。
ここは怯まず「ミディアム?ダボダボ?」とでも言っておきましょう。あとはニコニコして首を縦に振り続けていれば、多分何とかなります。

かくいう自分も以前、赤ベコのようにカクカク首を縦に振っていたら、とんでもない量のドーナツが出てきたことがありました。きっと誰でも通る道…のはず。

しかし、出された食べ物は残さないのが我が家の躾、泣く泣く完食しました。こんなところでも、親父たちの教えはちゃんと活かされていますね。

最後に、スカンクという小動物はおそらく知っていると思います。臭いで有名なやつです。
が、実際に見たことはありますか?まず、横浜にはいないはずです。

移動中、多分車内に強烈な臭いがたちこめてくることがありますが、そんな時は道端に、スカンクの轢死体が転がっているはずです。どのくらい臭いかは説明のしようもありません。いい機会なので嗅いでみて下さい。
悶絶すること請け合いです。

前置きが長くなりましたが、何が言いたいかというと、カナダに来てまで不毛な犯人捜しはやめましょう。
親父「お前やっただろ?」
弟「この臭いは兄貴に違いない、そもそも、いつも肉ばっかり食べてるから(以下略)」
こんないつもの展開にならないようにお願いしますね。
きっとそれはスカンクのせいです。はい。

さぁ、これだけキチンと案内を書いておけばカナダに来ても万全ですね。
あとはこちらに来た時に、積もる話をしましょう。

何せ2年半分です。一晩でも二晩でも語り尽くせないほど、話のネタはあります。

それまで3人とも、体調に気をつけて過ごしてください。

草々








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