リレー随筆


天職

フェリックス 真由子 (Mayuko Felix)



ここトロントへ日本からやって来て早6年が過ぎました。カナダは全く訪れたことがない地でしたので、仕事も家族も友達も離れてトロントへ嫁ぐのはとても勇気のいることでした。

日本では介護の仕事をしており、ここトロントでも何かその関係の仕事ができればと常に思っておりましたが、こちらで生活をしてみて諦めの気持ちが出て来ました。と言うのも私の英語力の無さと特に子供やお年寄りの方たちとの会話ができないのです。

日本でもそうですが、言葉を使うコミュニケーションはもちろんのこと、非言語コミュニケーションも重要な1つです。日本も深刻ですが、認知症の方は4人に1人の462万人ほどいらっしゃるそうで、その中でも言葉を話さなくなられた方もめずらしくありません。

言葉を話されない方は必然的にその方の動作や目のしぐさなどで要求を受け取らなければなりません。日本人同士でも難しいのに異国人同士ならなおさら難しいのではと考えて老人ホームで働くことは無理と考えていました。

そんな時、日系のモミジという自立型高齢者住宅を知り、働いてみたいと思うようになってから約3〜4年後に働かせていただく事になりました。

モミジは約200名ほどの方が生活しておられる、いわばお年寄り専用のアパートです。自立型ですので、自分で掃除洗濯、自炊をされておられる方がほとんどですが、出来ない方たちもいらっしゃるので、その方たちの生活の質を下げないようお手伝いされてもらっています。

ほとんどの人が日系二世のBC生まれで、アパートへ伺ってお手伝いさせていただく度に色々なことを教えていただいてます。平均年齢88歳、私たちが関わられて頂くのは90歳以上という方たちが多いのですが、とてもお元気な方が多く驚かされます。

戦争時代を生き抜かれた方達ですので、様々な苦労を乗り越えらてきた話や日本へ何度か旅行へ行かれた話しなどして下さいます。そして何より家族の写真が沢山飾られているのが印象的です。

ある夫婦はしっかり生活の役割分担があることに私はとても感心しました。ご主人は洗濯と買い物、奥様は料理と掃除という具合です。やはり、日本のお年寄りとは違うなと思わされました。私の老後の参考にしようと思います。

やりたい事を仕事に出来るのはなんと幸せなことでしょう。これからも日系の方達がいらっしゃる限りわたしの出来る範囲で働かせて頂きたく思います。






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