リレー随筆


美味しい宝物


大倉 真喜子 The Hospital for Sick Children,
Arthur and Sonia Labatt Brain Tumour Research Centre, Research Fellow


私が日本で通っていた大学では、1年生の間は全員寮生活でしたので、人生初の寮生活を経験しました。8人部屋で、2段ベッドと勉強机がある2人用寝室が4つ、スポーツ学部と医学部の学生が一緒に1年間を過ごします。

朝稽古に出かけていく友達をベッドの中から見送る毎日(私にはそれまで朝稽古という言葉にさえ縁がなかった)。環境の異なる高校生活を送ってきたそれぞれが大学で一緒に生活することは、それぞれの個性を知り、理解し尊重し、そして助け合える貴重な時間でした。

卒業後はそれぞれ自分の道へ進み、なかなか8人で集まる機会がなかったのですが、私がトロントに行くことになった際に、壮行会と同窓会を兼ねて初めて8人そろって集まることができました。
7人からの贈り物の中の一つに『A Dictionary of JAPANESE FOOD』という外国人のための日本料理事典をもらいました。この辞書を片手にカナダでこれから出会う友達に日本の料理を知ってもらうんだと私なりの野望を抱いてトロントへやって来ました。

初めての海外生活が始まって3年目。多くの新しい友人達に囲まれて、とても充実した生活を送っております。大学を卒業してからは、医療関係者以外の人と友達になる機会がほとんどなく生きてきた私にとっては、トロントで出会う友達がとても新鮮で貴重な存在です。

さらに英会話学校で出会った友達、仕事を始めてからできた友達と、カナダ人にとどまらず、国境を越えて世界中に広がっています。

カナダは今、ヘルシー嗜好なのでしょうか?驚いたことに、みんな日本食に大変興味を持っています。私は時々、ポットラックパーティの時に煮物を作り持っていきますが、とても好評です。甘いお醤油味、好きなのかもしれません。

私の周りの友人は、食いしん坊でお料理上手。お互いの料理に興味を示し、作り方、隠し味、コツを勉強し合います。そんなとき、日本から持ってきた日本料理事典がとても役に立っています。

日本の食材を英語で伝えるって、意外と難しい。当たり前のように使っているといざ日本語でも説明できないものもあります。そんな時、この辞書はとても役に立ちます。トロントで出会った海外の友達に食事を通して日本の文化や歴史を知ってほしいし、私も友達の国の文化や歴史を、食事を通して知っていきたい。

お互いのバックグラウンドが異なるからこそ興味深い個性、そしてその国の文化。自分が持っていない個性を持つ友人との出会いに幸せを感じます。どこに暮らしていても、大学の寮生活の時と同じように、新しい出会いに対する思いは同じなのかもしれません。

私の当初の野望は日本の料理を伝えることだったわけですが、友達の母国の料理に興味を持った私は、友達の家庭料理を再現しようと試み、友達にお料理のコツを教えてもらい、今では彼女達の国の料理にいろいろと挑戦してみたいという欲求にかられています。

フランス人の友達は私の肉じゃがに魅了されて、今や自分で肉じゃがを作っています。そして私はその彼女からガトーショコラを教わりました。今まで食べた中で一番美味しく、おもてなしケーキに最適です♪また韓国人の友達にコツを聞いてサムゲタンに挑戦したり、私も一歩一歩前進中です。

トロントではお総菜を買うことができないので、食べたい日本食は自分で作らなければなりません。そんな環境も私の料理への興味と腕を(おそらく)上げてくれていると信じています。










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