「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第103回>
Sleeman Breweries Ltd.
横井 成尚 President & CEO

今回の代表者インタビューは、スリーマンブリューワリーズの横井社長です。横井社長がカナダに来られたのは4年前ということで、ご着任から随分時間が経ってしまいましたが今回インタビューをお引き受けいただきました。
会社の所在地は、トロントから約1時間半のドライブで到着するゲルフ市。オフィスの近くには大きな工場があり、インタビュー後には見学をさせていただきました。工場には直営店も併設されており、グッズも販売されています。横井社長の気さくなお人柄のおかげで笑いの絶えないインタビューでした。


(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いします。

(横井氏)スリーマンブリュワリーズリミッテッドの事業内容は、主としてカナダにおけるビール製造販売です。当社はサッポログループの100%子会社であり、海外ビール製造販売拠点の一つという位置づけになります。

親会社のサッポロホールディングスが運営する事業会社の中で一番規模が大きいのは日本国内のサッポロビール株式会社、そして国際事業を担う事業会社としてサッポロインターナショナル株式会社があり、スリーマン社はその中の一社となります。

従業員数は季節によって変動がありますが、現在約1,100名で、日本人駐在員は6名です。ビール工場は、一番大きいここゲルフ工場、そしてケベック州とBC州に1つずつの計3つあります。

(松田)御社の設立はいつですか。

(横井氏)スリーマンは1834年に始まりましたのでちょうど160年です。サッポロビールは明治9年(1876年)に設立されましたので、サッポロビールより歴史は古いんです。

元々は小さなクラフトブリューワリーでしたが、ケベックの会社やBC州の会社を合併して大きくなっていきました。そしてサッポロビールが2002年にスリーマン社での委託製造のオペレーションを開始し、2006年に100%買収をしました。

そういった経緯のため、当社は大変地域色が強い会社です。“Sleeman”ブランドはオンタリオ州が本拠地ですが、ケベック州では“UNIBROUE”というベルギータイプのユニークなブランドを製造しており、BC州では元々地ビールだった“Okanagan Spring”というブランドを製造しています。それら全てのブランドをカナダ全土にて販売していますが、それぞれの工場に特徴と役割のようなものがあるんですね。

(松田)“SAPPORO”ブランドはどちらで作られているんですか。

(横井氏)カナダ向けのサッポロビールは全てゲルフ工場とBC州で製造しています。昨年までは北米全土向けのサッポロビールをすべてカナダで作っていたのですが、お陰様で売れ行きもよく、昨年の7月よりUSのビール会社に製造委託をし、US分は生産拠点をUSに移しました。ご存知の少し変わった形のシルバーの650ml缶はカナダでしか作れないのでカナダからUSに輸出し、一部はヨーロッパにも輸出しています。

(松田)ご成長されているようですが、御社の強みはどちらにあると思われますか。

(横井氏)当社はカナダ国内では、モルソン、ラバットに続く、カナダ第3位のビール会社です。買収した当時のマーケットシェアは4.9%でしたが、現在は推定データで7.5%ほどになっています。

カナダのビール市場自体はここ10~20年は大きな変化がなくほぼフラットですが、その中で少しずつでも成長出来ているということで、元気な会社と言って良いかと思います。

我々のメインのブランドは先ほど申し上げた“Sleeman”、“UNIBROUE”、“SAPPORO”、“Okanagan Spring”ですが、“Old Milwaukee”や“Pabst Blue Ribbon”など低価格のビールも実は当社のブランドで、売り上げも好調です。

意外に思われるかもしれませんが、“SAPPORO”ブランドは伸び率では一番ですが、全体の売上げ量でいうと一割ほどしかありません。様々な嗜好のお客様に向けた魅力的なブランドが揃っているというのは当社の強みと言えると思います。

(松田)御社では地域コミュニティに対する活動などはされていますか。

(横井氏)United Way Centraideを通じて、全カナダへの寄付や貢献活動を長年行っています。その他には、ゲルフ市に我々がスポンサーとなっている“Sleeman Centre”というホッケースタジアムがあります。OHL(Ontario Hockey League)のGuelph Stormのホームアリーナとなっており、またコンサートやイベントなどでも利用していただいておりますので、地元にも貢献できているのではと思います。

(松田)ホッケースタジアムは地元の方々に愛されていそうですね。それでは今後御社が特に力を入れて進めていきたいことはどのようなことでしょうか。

(横井氏)サッポログループには「潤いを創造し、豊かさに貢献する」という企業理念があります。我々のビジネスは「安全・安心で、美味しいビールを製造、皆さんにお届けして、喜んでいただく」というとてもシンプルなものです。カナダに所在するサッポログループメンバーとして、カナダの皆様の豊かさに貢献する、というグループに共通した理念を貫くことが我々の役割であると考えています。

実はカナダの方ってすごくビールを飲むんですね。統計上(参照:Kirin Beer University Report Global Beer Consumption by Country)では国民一人当たりのビール消費量が、日本人の1.5倍ほどとなっています。

ビールの好きなカナダの方々の中で我々も成長させていただいて、皆様に愛されて指名していただけるブランドをつくり、カナダの方々の豊かさを育むことに貢献できればと思っています。大きな夢ですが、いずれカナダで一番のビール会社になれるといいですね。

(松田)それでは、横井社長のご経歴についてもお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらでしょうか。

(横井氏)出身は北海道です。札幌市で生まれましたが、父が転勤族だったので小さいころは北海道内をあちこち転々としました。そして大学も北海道で、サッポロビールに就職しましたが、今のところ会社人生32年間一度も北海道勤務はありません(笑)。

私は元々は技術畑で、会社人生の約3分の1は研究開発、ビールの品質向上に関する研究や、新製品開発、研究所と工場がタイアップしたプロジェクトなどに携わりました。残りの3分の2は生産現場で働き、群馬、千葉、静岡などの工場に勤め、カナダに来る直前は九州の工場で工場長を務めていました。

私はそれまで国際業務に携わってきませんでしたので、カナダに来るように言われた時はとても驚きましたね。

(松田)それまで海外勤務につながるようなお仕事は全くされていなかったのですか。

(横井氏)強いて言えば、ビールの世界的な学術団体がアメリカやヨーロッパにある為、研究開発に携わっていたときは、業務に関連する論文を書いて海外の学会で発表したり、委員会メンバーになったりしていました。初めての海外出張は、1986年にアリゾナ・ツーソンであったアメリカ醸造科学会の年次学会でした。地平線まで続く砂漠に背の高いサボテンが生えていて、ここがアメリカかと感嘆しましたね。

(松田)ビールの研究開発というと、例えばどのような内容ですか。

(横井氏)酵母細胞に関する研究、分析技術に関する研究、ビールの香りや味を醸造過程で制御する研究、原料の研究など色々なものがありますが、私はビールの基本的な品質に関する研究、例えばビールの泡の研究、ビールの泡をいかに長持ちさせるか、という研究を結構長くやりました。

カナダの方は泡を気にしないので泡が数ミリしかない生ビールを目にしますが、日本では品質のひとつとしてビールの泡は大切です。富士山の雪のようにきれいな泡が長持ちしないとお客様からご指摘を頂戴してしまいます。そのため、品質向上の一貫として、泡を持続させるために技術的にどうすればいいのかという研究などもしていました。

(松田)今までで一番印象に残っているお仕事にはどのようなものがありますか。

(横井氏)印象に残っている仕事というと、やはりここスリーマンですね。突然1,000人のカナダ人従業員のいる会社のトップをやりなさいという事で、言葉も含め様々なことをゼロから勉強しました。幸い素晴らしい社員にも恵まれ、お陰様で成長路線をたどることができておりますが、私の会社人生の中で、間違いなく最大の出来事ですね。

(松田)特にどのようなことに取り組まれましたか。

(横井氏)会社の中に入ってみると色々な課題がありましたが、一番は自分たちが何を拠り所にして日々の仕事を進めていくかということを社員と共有することだと考え、「ビジョン・ミッション・バリュー」(写真下)を作りました。手探り状態で、現地の幹部社員と膝を突き合わせて時間をかけて作ったのが2年前です。

この中にある“Better Beer for All”や“Getting Better”という言葉が社員とのEmailの中や会話の中で出てくると、何か一つの大きなハードルを越えられたような気持ちになり、思い出に残る仕事のひとつですね。


(松田)それでは、横井社長がお仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(横井氏)現在、会社の代表をやらせていただいておりますが、ひとりの人間ができることというのは限られています。私にできることは、会社の中をよく見て、各社員の良いところや強みを組み合わせて、逆に苦手なところも理解し、社員の力を最大限に発揮できるようにすること、その結果として皆に大きな仕事をしてもらうということです。社員を信頼して会社の力としていく、ということを常に意識しています。

ビールの存在価値って世界共通ですよね。ビールを飲むと、皆さん、楽しい気分になったり疲れが癒されたり、笑顔になるんですよね。それが我々の仕事の生業ですので、“お客様を笑顔にする”という同じ想いで社員とビジネスの土俵に立っているということが私にとっても非常に力強い支えになっています。

(松田)プライベートなことも少しお伺いしたいと思いますが、好きなスポーツはなんでしょうか。

(横井氏)私は北海道生まれなので、小さい頃からスキーをしていました。北海道生まれの子供って皆そうだと思うんですが、生まれて初めてスキーをした記憶ってないんですね。中学生までは競技スキーをしており、ヘルメットとレーシングスーツを着て、小さな大会などに出ていました。

高校に上がると親に「スキーばかりしていないで勉強しなさい」と言われるようになり(笑)、どうしてもスポーツは好きなので代わりにテニスをするようになりました。高校、大学、社会人と今度はテニスばかりしていて、地域のトーナメントに出たりしていました。

そして某工場で働いていた時に、今度は工場長に呼ばれて、「テニスばかりするんじゃなくて、もう少し小さいボールのスポーツをしなさい」と言われて始めたのがゴルフです(笑)。ゴルフを始めたのは30代後半なので早くはないのですが、カナダに来てからは環境も良いですし友人に誘っていただいて頻繁に行っています。

(松田)カナダで思い出に残っているゴルフ場はありますか。

(横井氏)このオフィスから車で5分くらいで行けるゴルフ場があるんです。値段も安くてとても良いゴルフ場です。ティータイムの20分前くらいに出れば十分に間に合うので、少し早めに出勤して仕事を早めに切り上げて仲間と行ったりしています。

他にもたくさん良いゴルフ場や良い成績が出たゴルフ場もありますが、オフィスのすぐ側という恵まれた立地はカナダならではで、一番印象に残っていますね。

(松田)ゴルフ好きの方にとってはとても恵まれた環境ですね。他にご趣味はありますか。

(横井氏)あとは、音楽が結構好きで、アコースティックギターを弾きます。自己流で習ったこともないので他人に聴かせるようなものではないのですが、指を動かすのは頭の体操、ということで続けています。最初に始めたのは中学生の頃なのですが、ビートルズに憧れて、中学1年生のクリスマスに親に安いギターを買ってもらったんです。そして冬はスキーで夏はギターばかり弾いていました。

社会人になってからはギターからはすっかり遠ざかっていましたが、40代の頃にたまたま銀座の歩行者天国でオーストラリア人のソロギターパフォーマンスを見かけて、その翌週にギターショップに駆け込みました(笑)。昔のことを思い出して再度始めて今も続けています。

(松田)夏はゴルフ、冬はギターということで充実されていますね。今度演奏を聴かせてください。では最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いします。

(横井氏)各社の皆様は当地で大変なご苦労をされてお仕事をされているとお聞きしております。スリーマンはカナダの日系企業になってから歴史が浅く新参者です。また同業他社と比較して日本での売上に依存する比率がまだ一番高いのがサッポログループで、国際事業もまだまだこれからですが、ステークホルダーの大きな期待を背負っていることは間違いありません。

今後も国際ビジネスの進め方など、色々と教えをいただきたいと思っておりますので、宜しくお願いいたします。また、激務の間には是非ビールを飲んでいただき、リフレッシュしてお仕事に励んでいただければと思います。

(松田)インタビューは以上になります。本日はどうも有り難うございました。




戻る   過去の新代表者紹介インタビュ一覧はこちら