「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第97回>
Honda of Canada Mfg.
斉藤 尋昭 Senior Vice President

ホンダオブカナダマニュファクチャリング(以下HCM)の斉藤氏にインタビューをお願いしました。HCMさんには2011年10月にも取材をしております。オフィスはアリストン、トロントから約1時間30分のドライブです。
東京ドーム約21個分(!)という広大な敷地の中に3つの工場を持ち、従業員は約4300人と大変大規模で、商工会会員の中で一番多い45名の構成員を登録頂いております。社内レクリエーションセンター内には、なんとNHLサイズのホッケーリンクも備えられているそうです。
北米での駐在が17年目となる斉藤氏のご経歴やプライベートについてお伺いしてきました。



(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いします。

(斉藤氏)本田技研の事業内容は、二輪車、四輪車、芝刈り機や船外機といった汎用製品の生産です。またヒューマノイドロボットのASIMOの開発や、ホンダジェットという小型ビジネスジェット機の生産にも力を入れております。

世界各地域で生産販売をしており、昨年(2013年)は年間で世界の約2700万人以上のお客様にお買い求めいただきました。

その中でも総売上高の77%を占めている四輪車は、世界販売台数の40%以上を北米地域で販売しており、他地域に比べて群を抜いた台数の売上げを誇っております。

また北米では、現在8工場10ラインにて13車種の完成車を生産しており、年間に192万台の生産能力をもっています。ホンダオブカナダではそのうち年間約40万台の四輪車を生産し、生産拠点として重要な位置づけとなっております。


(松田)本田技研さんは積極的に拡大されていらっしゃるようですが、最近のニュースについてご紹介ください。

(斉藤氏)生産拠点を2013年から2014年にかけてかなり拡大しました。北米地域ではメキシコに第二工場を立ち上げ、2014年2月より量産を開始しています。また市場が急速に拡大しているアジアではインドネシア、インドにそれぞれ第二工場を設立、マレーシアでも既存工場の生産能力を拡大しました。

日本にも、人と環境に配慮しかつ最先端の生産技術をもつ工場を設立することをコンセプトに、埼玉の寄居に新工場を立ち上げ、世界トップクラスの省エネルギー工場を実現しています。

また、2013年からダカールラリーに参戦し、2015年からF1に復帰することも決まりました。ホンダジェットも来年(2015年)にはお客様へのデリバリーを開始する見込みであり、モビリティカンパニーとしてHondaならではの活動を幅広く展開しています。


(松田)この1年間にそれだけ多く新しい工場を立ち上げられたというのは他にはあまり例がないかと思います。このような拡大を続けるために、ホンダさんでは社員に対する教育はどのようにされていらっしゃるんでしょうか。

(斉藤)本田技研にはHondaフィロソフィーという独自の理念と企業風土があります。「自分のために働け」「2階にあげて梯子を外して火をつける」「松明は自分の手で」「ノープレー・ノーエラーを排せ」「技術の前では皆平等。問題はアイディアの中身」などたくさんありますのでここでは割愛させていただきますが、個々の“自立”“平等”そしてそこから生まれる“信頼”を育む内容です。

私も若い頃はこのように先輩方に育てられ、ホンダの社員にとって迷ったときにはここに立ち返るような指針となっています。

また、Hondaフィロソフィーを象徴するものとして、“白い作業着”があります。私も現在着用していますが、この作業着には「汚れが目立てば汚さないように努め、機械本体もきれいに使うようになる」「商品に傷がつかないよう、ボタンやファスナーは覆った仕様で」という、創業者の本田宗一郎氏のこだわりが込められています。

また、これには皆が平等であるという意味も込められており、日本人スタッフも現地従業員も皆同じ作業着を着用し日々業務を遂行しております。

Hondaグループには、一人ひとりが夢をもち、それに向かって個性や能力を生かして挑戦するという風土が備わっており、それが新しい創造を生み出し、皆様からの評価につながっていると考えています。


(松田)Hondaフィロソフィーの中には少し驚くものもありましたが、さすが世界に名だたるグローバル企業であるホンダさんという内容ですね。

それでは、Honda of Canada Mfg.(HCM)のご紹介もお願いいたします。

(斉藤氏)HCMはエンジン工場を含めた3つの工場をもっており、年間生産能力は約40万台です。Plant1ではCivicの2ドアと4ドアを生産しています。以前は一日800台の生産量でしたが昨年より820台の生産が可能になりました。

Plant2ではCR-Vの生産(800台/日)をしており、エンジン工場であるPlant3ではCivic搭載用のエンジンを生産(1000台/日)しています。

HCMは品質についても高い評価をいただいています。アメリカの調査会社J.D. Powerが毎年実施している全米の車メーカーや車種を対象とした顧客満足や品質についての調査で、2013年にHCMのPlant2が全米67工場の中で3位に表彰され、また、Civicがコンパクトカーの中で1位、CR-VがコンパクトSUVとして1位に表彰されました。


(松田)それは素晴らしいですね。HCMさんはカナダでも多くのイベントや活動に支援協力されているようですが、どのような活動をされていますか。

(斉藤氏)地域社会貢献活動の一環として、2004年よりEarth Rangersという団体と協力して、子供たちの地球環境保護に対する意識を高める活動をサポートしており、今年までで30万人以上の子供たちに参加頂きました。

また、6~12歳の子供たちを対象にオフロードバイクに触れ合う機会を提供したり、子供たちの科学に対する興味を高めるための活動を支援する教材を提供するなど、カナダの子供たちに学び体験する機会を提供するため、環境、教育、文化、スポーツに特に力を入れています。

また、環境保全活動にも力を入れていて、2007年には埋め立てごみゼロを達成しました。地域環境活動とコミュニティ貢献として社内からボランティアを募り、植林・植樹活動も続けています。これまでで7万6千本の樹を植えました。


(松田)御社の社員数は約4300名とのことですが、社員の方々に向けたイベントも何かされていますか。

(斉藤氏)社員に向けたイベントは定期的に開催しています。毎年6月には社内BBQを行います。このBBQでは日頃の働きへの労いと感謝の意を込めて、日本人も含めマネージャー以上が食事などを振舞うようにしています。

毎年日本人チームは焼きそばを作っており、ごま油を垂らしたりと工夫を凝らすのですが、その焼きそばが現地社員に好評で食堂のメニューにもなりました(笑)。

他にはオープンハウスやKids to Work Dayなど、工場の中や普段作業を行っているところを見学してもらうイベントは設立当初から継続的に実施しており、小さなお子様も連れてきてもらえるクリスマスパーティーも毎年行っています。


(松田)何もかもが規模の大きなものでしょうね。それでは、斉藤さんのご経歴についてお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらですか。

(斉藤氏)出身は、福岡県北九州市です。1980年に本田技研に入社しました。入社した理由は、第一にもの造りがしたかったということ、“能力実力主義”なところ、フェアな企業文化だと感じたことなどです。

また学生時代はバイクが好きでホンダのナナハンに乗っていたため、身近に感じていました。


(松田)入社後はどのようなお仕事をされましたか。

(斉藤氏)入社以来ずっと生産技術を担当していました。初めは埼玉製作所に配属され、1985年からアメリカのオハイオ工場に6年間赴任しました。1991年に帰国してからはまた埼玉製作所にて生産技術の仕事をし、1997年にまたオハイオ州に赴任し、ホンダオブアメリカのオペレーションオフィス(北米のヘッドクオーターのような役割)に配属となりました。

そこで新工場の企画を2年半ほど行い、新工場建設の土地選定や調査をしました。それが今のホンダオブアラバマのアラバマ工場です。その後2000年からそのまま新工場建設プロジェクトのためアラバマに異動し、新会社設立と、エンジン工場と車体工場の2つの工場建設と立ち上げに携わりました。


2008年からはオハイオ州のイーストリバティ市にある工場でプラントマネージャーを4年ほど務めました。その工場は設立から25年ほど経っておりましたので、老朽化した設備や生産技術を新しいものに変え体質改革を実施しました。そして2012年よりホンダオブカナダに配属となり、今丁度2年が経過したところです。

ホンダには多くの工場がありますが、メアリズビル工場、アラバマ工場、イーストリバティ工場、そしてカナダと、北米の四大工場、グランドスラム達成といったところですね(笑)。


(松田)海外経験が大変長い斉藤さんですが、これまでで一番思い出深いお仕事はどのようなものでしたか。

(斉藤氏)やはりアラバマでの新工場建設・新会社立ち上げは印象深いです。企画から携わっておりましたので、思いもひとしおです。土地選定では、全米約300箇所を調査し選出しました。設立の際も全くゼロの状態でしたので、工場のレイアウトをどうするか、というところから始まりました。

アラバマ工場はHCMのPlant2をモデルとして建設したこともあり、建設時はHCMやオハイオから多くの人を集めた大規模なプロジェクトでした。その中で私はコーディネーターをやっていたのですが、何もなかった平原に工場が建設され、21ヵ月後に最初の完成車がラインオフされたのを見た時は本当に感動しました。

そしてその後2004年には第二工場が完成しました。最初の頃は、従業員駐車場で見かける車は古い車が多かったのですが、徐々に新車を見かけるようになり、街もきれいになるのを見て、ホンダの工場進出が人々の暮らしを豊かにしていると実感しましたね。そういう意味でも良い仕事が出来たなと心から感じました。


(松田)一つの会社設立がその地域全体の暮らしを変えていく姿を目で見ることができるというのはすごいですね。他にもご苦労もあったと思いますが、印象に残っていることはありますか。

(斉藤氏)1985年からオハイオで生産技術を担当していた時に、塗装ラインの有機溶剤量の削減規制ができました。もちろん規制には則りましたが、そのために塗装の色や質感があまり良くないと社内で指摘を受け、それを改善する為に技術向上に奮闘しました。

様々な苦労がありましたが、その後、本田宗一郎氏がオハイオに来られたことがありました。本田さんには仕上がりの良い車を見せたいとピカピカの車を用意していたのですが、本田さんはその車には見向きもせず、端に並んでいる量産の車を一つ一つじっくりと見て回られました。

その頃はもう技術も熟成しており本田さんに「良い塗装の車を造っているなあ」とコメントをもらい、その場で本田さんと関係者とで肩を組んで記念写真を撮りました。大変な思いもしましたが、この出来事で努力が報われ、大変印象に残っています。


(松田)斉藤さんがお仕事を進める上で大切になさっていることは、どのようなことでしょうか。

(斉藤氏)3つありますが、まずは、相手を尊重し信頼すること。色々な立場や様々な目線で仕事をしている者がいますので、どのような提案や報告がきても必ず全て最後まで話を聞いて、良い点や改善点をあげるようにしています。

次に、オープンコミュニケーションに努めること。従業員に出来る限り情報をシェアして、壁のないコミュニケーションができるように心がけています。ホンダのオフィスでは、世界中どこでもどんなに高い役職でも、個室は持ちません。社長も含め皆が大部屋で仕切りのない机に座っているんです。

最後に、現場・現物・現実をよく観ること。紙の報告だけでなく、確認したいことは必ず現場に赴き、担当者と話をし確認するということです。HCMでは社長と副社長は週に3回必ず3つのプラント工場に出向くようにしています。

現場担当者が決めたテーマに沿い、改善したところや費用がかかったところなどを毎回説明してくれます。これは大変良いことなので、これからも続けていきたいと思っています。


(松田)オフィスを拝見させていただきましたが、本当に広々と壁のない空間で皆さん仕事をされていて、社長さんもそこに並ばれているのはなかなかないことだ思います。斉藤さんは座右の銘はお持ちですか?

(斉藤氏)座右の銘は「境遇変われば魂は進化する」という言葉です。これは、1997年にアメリカ赴任が決まったときに、上司が色紙に書いてくれた言葉なんです。

新しい環境・新しい仕事・新しいテーマに取り組めば人間の本質の部分が成長していく、という意味と私は捉えていますが、ホンダフィロソフィーにもあるチャレンジスピリットにもつながり、大変好きな言葉です。


(松田)それでは、プライベートについてお伺いしたいと思いますが、ご趣味はなんでしょうか。

(斉藤氏)音楽が好きで、特にジャズが好きですね。高校ではR&Bのバンドを組んでいて、大学時代はジャズ研でベースを弾いていました。ベースはこちらにも持ってきていて時々弾いています。

トロントでも既に20回以上はジャズライブを聴きにいっています。これからの時期はジャズフェスティバルも始まりますので楽しみですね。定例のところでは、トロントにある“Jazz Bistro”や“The Rex”に行ったり、あと日本食レストランの“一力”で2ヶ月に1度行われているジャズライブにもほぼ毎回顔を出しています。

また、トロントは意外とアナログレコード店が多いんですね。既に結構見つけましたが、ビンテージのものを発掘したいと思っています。


(松田)何かスポーツはされますか。

(斉藤氏)中学時代は陸上部で一番辛いと言われる中距離で800mを走っていました。現在も時々ジムで走っていますが、今はもっぱらゴルフですね。年間25ラウンドのペースで行っています。カナダでももっと色々なコースを回りたいと思っています。

また、スポーツ観戦も全般的に好きですね。先日のブルージェイズのオープン戦も観に行きました。サッカーやアメフト、ラグビー観戦も好きです。

また、絵画を観るのも好きで、ドイツ、オランダ、ベルギーなどに出張したときは週末の度に美術館巡りをしていました。


(松田)多趣味でいらっしゃいますが、今後カナダでやっていきたいことはありますか。

(斉藤氏)電車で旅行をしたいと思っています。昨年モントリオールとケベックに行く予定にしていたのですが、急遽キャンセルせざるを得なくなってしまったので今年は実現させたいですね。特に秋の紅葉の時季に行きたいと思っています。

あとは、日本に帰ると必ず温泉に行っていて、ここのところ四国、京都、神戸、伊豆など毎年行っているのですが、温泉ではないかもしれませんが、ブルーマウンテンにも露天風呂があるようなので一度行きたいと思っています。


(松田)もう2年間カナダにいらっしゃいますが、まだまだ楽しんでいただけそうですね。それでは最後に、商工会会員へメッセージがありましたらお願いします。

(斉藤氏)震災を経験して、日本人は結束感が強まったと思います。カナダには様々な日系企業が集まっていますが、業種を越えてお互いにインスパイアし合える関係を築き合えればと思います。日系企業同士で日本を盛り上げられるよう、頑張っていきましょう!


(松田)インタビューは以上となります。本日はどうも有り難うございました。



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