「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第95回>
Japan National Tourism Organization
中澤 秀朗 Executive Director

独立行政法人 国際観光振興機構(通称:日本政府観光局)の中澤所長を取材させていただきました。オフィスはトロントダウンタウンのSt. Patrick駅のすぐ近く、大変アクセスの良いところです。

オフィスの入口には、英語やフランス語で書かれた日本そして各都道府県の地図やパンフレットがずらっと並んでおり、あまりの種類の豊富さに驚きました。インタビューでも触れていただいていますが、これらの地図や案内、日本のポスター等は、ご希望があれば無料で分けていただけるそうです。その他、中澤さんのブラジル、ドイツでのご駐在経験やご趣味についてお伺いしてきました。



(松田)事業内容のご紹介をお願いします。

(中澤氏)日本政府観光局(JNTO)は、海外における日本への観光宣伝、そして訪日客への観光案内をする政府機関です。我々は、カナダ国内にオフィスを構え、カナダにいる方々を観光のために日本へ誘致する活動をしています。

(松田)現在、事務所は世界にいくつお持ちですか?

(中澤氏)14箇所です。大変少ないと感じます。例えば隣国の韓国は、韓国にとって日本が一番のお客さんというのはありますが、日本国内だけでも4箇所、合計で30箇所の事務所を持っています。観光に対する予算も我々の10倍ほどお持ちで、韓国は観光業に対して大変力を入れています。そのため、一年間の訪韓外国人数は日本を超えて1200万人となっています。一方日本は2013年に1,036万人です。

面積は日本の約5分の2、人口は日本の約3分の1であり、同じような島国と言える状況でありながら、訪れる外国人数が日本よりも多いというのは、日本が真摯に反省するべき点だと思っています。

訪日経験者に対する調査では、大体の方に、日本人は礼儀正しい、街が綺麗、といった日本に対する良いイメージを強くして帰っていただいています。来てもらって初めてその国に対する理解が増えますし、逆に行ったことがない国では正しくないイメージが先行してしまう可能性があり、そのため偏見も持ちやすいと思います。日本の正しく良いイメージを世界の方に理解していただくためにも、日本はもっと観光産業に力を入れるべきだと思います。

(松田)JNTOさんの設立はいつになりますか。

(中澤氏)我々の機関は、明治26年に設立された貴賓会が前身となっており、そこから数えますと100年以上の歴史があります。

しかし、現在の形態としての設立は、日本観光協会の外国部として設立された1959年と言うのがより正しいかと思います。その後正式名称である国際観光振興機構の前身である国際観光振興会は1964年に設立されました。

日本は戦前から訪日観光促進を行っており、当時は鉄道省の管轄としてタイのバンコクなどに事務所をもっておりましたが、それらはどちらかというと海外に日本政府の職員を配置する方便のための機関だったようです。

戦後は外貨獲得を目的に、米国やカナダ等、比較的余裕のある地域に事務所を置くようになり、トロントの事務所は1957年に開設されました。

(松田)JNTOさんの活動の目的はどちらにあるのでしょうか。

(中澤氏)我々の活動の目的は、訪日外国人旅行者を増大させることにより、国民経済の発展と国際相互理解の増進に寄与することです。

日本国内において観光というのは“遊び”というイメージがあるように感じますが、実際は大変重要な産業の一つです。日本の外貨収入は、半導体や自動車などの輸出が牽引していますが、観光客からの外貨収入は、実は品目別輸出額で10位となる家電製品にほぼ匹敵する年間1兆3千460億円(2010年)と、かなり高い収入になります。

また、国際親善としましては、東京―箱根―京都・奈良―広島のいわゆる「ゴールデン・ルート」ばかりでなく、それ以外の地方にも、もっと外国人が訪れるようにと力を入れています。そうすることで、地元の方々が地元を見直すきっかけになったりと、金銭以外での地域の活性化にもつながり、また、外国の方々と積極的に交流を育もうとする方々が出てくるなど、国際交流の促進にもつながります。

(松田)今後、貴局が特に力を入れてやっていきたいことはどのようなことでしょうか。

(中澤氏)カナダの多様性に合わせたプロモーションを心がけたいと思っています。
私を含めて局員数4名の小さな団体ですが、次長は中国人で英語はもちろん中国語が堪能、また、フランス語が堪能なスタッフもおり、カナダの多様性に対応できる環境が整っています。

特に、ケベック州及び中華系へのプロモーションにこれまで以上に力を入れていきたいと思っています。フランスでは数年前より日本がブームになっており、訪日フランス人数は他のヨーロッパ諸国に比べて伸び率が大きく、2013年には訪日カナダ人数すら抜いています。フランス人はグルメですので最初は日本の食から入ったのですが、今は漫画やアニメの人気が高く、パリで行われる日本関連のイベントにはフランス人が何十万人と訪れるそうです。

以前からケベックにはフランスのブームが何年か遅れて来ると言われていますので、そろそろケベックにも日本ブームが来るのではないかと予想しています。そのため今後ケベック州に注目していきたいと思っているわけです。

逆に、中華系は、本国や香港、台湾の流行がリアルタイムで来るそうです。カナダにいる中国人は中国圏で流行っているテレビ番組等を当地のテレビやインターネットなどでリアルタイムで見るためだそうです。そのため中華系の方々に対しては、私共の香港や台湾の仲間に教えを請いながら今現在のトレンドを全面に出していこうと思っています。

(松田)具体的な目標はお持ちですか?

(中澤氏)昨年、2013年の1年間で日本を訪れたカナダ人は15万2800名ですが、それを今年は17万名に増やしたいと思っています。皆様既にご存知とは思いますが、3月30日から全日空の羽田 – バンクーバー線が就航し、全日空が初めてカナダの地を踏みました。そして今年の7月からはエアカナダが既存のトロント - 成田線に加え、トロント – 羽田線を就航させます。

エアルートが広がり、供給座席数も広がります。カナダ人にとってより日本に行き易くなるということで目標の17万名は超えるのではと見越していますが、この目標をクリアすべく、さまざまな事業を進めていきたいと思っています。

(松田)今は追い風傾向なので楽しみですね。JNTOさんのホームページには、日本に関する面白いテーマの記事が英語で掲載されていて、大変楽しく拝読させていただきました。

(中澤氏)我々は日本の国の機関ですので、使わないと損だと思って積極的に活用頂きたいです。例えば、我々が所有している日本のポスター、日本国内の地図、観光案内のパンフレットなどは無料で配布しております。それらは英語やフランス語、中国語のものもあり、東京や大阪など主要都市のみならず、東北、北陸、九州など各エリアや都道府県のものが用意されています。

ご友人に日本を紹介するときやもちろんご自身が日本国内旅行をされる際にも大変便利です。ポスターもたくさんの種類がありますので社内に貼って頂いたりと活用頂ければと思います。在庫がある限り、いくつでもご用意できますので、お気軽にお問い合わせください。

また、ウェブサイトのこちらのページ(http://www.jnto.go.jp/ )では、日本のオフィシャルガイドとして、日本を紹介した読み物を14カ国語に翻訳し、世界の方々に向けて幅広く日本を紹介しております。日本人にとっても大変面白い内容ですので、是非読んでみてください。

(松田)それでは中澤さんのご経歴についてお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらでしょうか。

(中澤氏)出身は横浜です。海外経験はこれまでで、ブラジルのサンパウロに3年半、ドイツのハノーファーに1年、フランクフルトに5年、そしてトロントは現在4ヶ月です。

サンパウロに赴任したのはかなり昔のことですが、大変住み易いところでした。日系人が150万人いて、日本国外で日本語が一番通用するところなんです。

特に食べ物が良かったですね。私は納豆とお豆腐が大好きなんですが、現地の方が作っている手作りのものを簡単に手に入れることができました。食品だけでなく本なども日本にあるものは大抵手に入れることができました。

また、ブラジルって暑いイメージをお持ちだと思いますが、サンパウロは標高800mの場所にあるので、軽井沢のような気候で大変過ごし易かったです。ただやはり治安は良くはなかったですね。けれど、私は3年半おりましたが危険な目に合うことはありませんでした。責任ある行動をし、危険なところに近づかないなど、日々気をつけていれば問題なく過ごせます。

また、とにかく日系人が尊敬されていました。「ジャポネーズ・ガランチード」という言葉があるのですが、「日本人・日系人が作ったものなら大丈夫だ」という意味で、その言葉がそこかしこに提示されているんです。これは大変嬉しく有りがたいことでして、日本の良さを改めて見直しました。今でも大好きな国ですね。

(松田)ドイツではいかがでしたか?

 
 ルクセンブルグの古城にて

(中澤氏)ブラジルの特に南部は敗戦国からの移民が多かったため、日系人、ドイツ人、イタリア人が多かったんですが、その中でもやはりドイツ人と日本人の作るプロダクトはしっかりとしていて信頼することができましたが、ドイツ本国でも同じでした。

製品だけでなく、例えば、鉄道運行の正確さや、お店でのサービス、人を信用できるなど、日本と同じように生活することができました。

ドイツ人は冷たい、機械的、みたいなイメージを持っている方もいるかもしれませんが、行ってみて初めて分かりましたが、ドイツ人は非常に親切です。ある意味日本人より親切かもしれません。例えばお年寄りにとても優しくて、私の母が遊びに来てくれたときには、荷物を運ぶなど通りすがりの方が皆で手伝ってくれました。

ビールが美味しかったですね(笑)。正直、食事はそれほどではなかったですが(笑)、カナダに赴任する直前までフランクフルトにいましたが、今だに戻りたいと思ってしまうことがあります。

(松田)実際その国に行ってみないとわからないということはたくさんありますね。それでは、中澤さんがお仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(中澤氏)住んでいる国を好きになること、です。その国を好きにならないと、日本に来て欲しい、日本を宣伝したいと思えなくなりますから。
初めてサンパウロに行った最初の1年間で痛感しました。

業界の人は皆英語をしゃべると聞いて行ったのですが、それは全くの嘘で、3年半いて英語をしゃべるブラジル人は5名しか知りません。皆ポルトガル語しかしゃべれないのでポルトガル語の出来なかった私は日系人しか相手ができず、最初の1年間はブラジルを好きになるのが難しかったです。

そうなるとなかなか仕事にも身が入りませんでした。そのうちポルトガル語を話せるようになり、ブラジルが大好きになると、日本の良さももっと知ってもらいたいと積極的になりました。

 
 ご存知ナイアガラにて

カナダもまだ4ヶ月ですが、どんどんとカナダの良いところを見つけています。元々カナダに良いイメージはもっていましたが、人の良さ、治安の良さは来てみて心から実感しています。夜どんなに遅くなっても、地下鉄で不安になることなく家に帰れるというのは世界の中でも驚くべきことだと思います。

世界中の治安の良さを数値に表したランキングがあるのですが、日本は6位、カナダは8位でした。私はドイツもとても治安が良いと思っていたのですが、ドイツは15位でした。因みにそのランキングでアメリカは99位でした。隣国でも大違いで、カナダに来れて良かったと思っています。

(松田)数字に表すと、カナダの治安の良さを実感しますね。それではプライベートなこともお伺いしたいと思いますが、ご趣味はなんでしょうか。

(中澤氏)山歩きが好きです。ドイツにいた時も色々な山を歩きました。ワンダーフォーゲル、ピッケル、アイゼンなどの山岳用語はドイツ語ですし、ドイツ人は非常に自然に親しむことが好きなんです。カナダ人も同じようですね。まだ寒い時期だったのでカナダでは出かけていませんが、車で1時間も行くと自然がたくさんありますので、暖かい時期になるのを楽しみにしております。

(松田)他にもご趣味はありますか?

 
 欧州中央銀行とフランクフルトの市電

(中澤氏)鉄道が好きです。特に路面電車が大好きなんです。トロントは北米で最大の路面電車網があるんです。TTCのストリートカーですね。オフィスの部屋からストリートカーが見えるのですが、見ているだけで落ち着きます。

(松田)路面電車のどのようなところが魅力なんですか?

(中澤氏)路面電車が走っていると、人間が安心して暮らせるところだという気持ちになるんです。電車の線路が引いてあるというのは、モビリティが確保されているということですよね。バスだともしかしたら明日無くなってしまうかもしれないですが、線路があるとそう簡単には無くなりませんので、安心感を感じるんですね。

好きになったきっかけは、私の育った横浜には路面電車がたくさん走っていたためです。小さい頃は市電の運転手さんになりたいと思っていました。残念ながら今は廃止してしまい、本当にもったいないことだと思っています。

(松田)私も次からトロントのストリートカーを見る目が変わりそうです。では最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いいたします。

(中澤氏)繰り返しになりますが、我々は日本の政府機関です。使わなければ損だと思っていただいて、是非活用してください。皆様からのお問い合わせをお待ちしております。

(松田)本日はどうも有り難うございました。インタビューは以上になります。



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