「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第87回>
TORJA Japanese Magazine
Publisher / Chief Editor 塩原 修  


皆さんご存知トロントの日系情報誌「TORJA」の発行人兼編集長の塩原氏にインタビューをお願いしました。塩原氏には今年7月に商工会にご入会いただきました。オーストラリアからカナダに来られ、来加からわずか6ヶ月でTORJAを発行されたそうです。オーストラリアでのご経験やTORJA制作のウラ話などを聞いてきました。


(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いします。

(塩原氏)事業内容は3つあります。1つめは日本語情報誌「TORJA」の発行、そして2つめに日本語情報のオンライン発信、こちらは3ヶ月前にウェブサイトを大幅にリニューアルし、今までの取材で蓄積してきた情報やWeb独自の記事などが満載です。是非皆さん訪れてみてください(TORJA ウェブサイト: http://torja.ca/ )。そして3つめの事業として、企業や団体が作成する小冊子のリサーチ・編集・制作の請負や各種印刷物の制作、ホームページの作成などをしております。

設立は、2011年の4月末です。社員数は、私を入れてフルタイムスタッフが4名です。他にパートタイムスタッフ、外部委託スタッフ、インターンシップやボランティアでお手伝いしてくれる方々がおり、その中には日本やオーストラリア、ニュージーランドに在住している方たちもおります。TORJA一号分の制作には、部門に分かれた総勢15名ほどが携わっています。

(松田)TORJA発行の経緯を教えていただけますか?

(塩原氏)2011年1月末に妻の仕事の関係でオーストラリアからカナダに来ました。以前私が日本で広告営業の仕事や、オーストラリア全土で日本語新聞を発刊する企業のビジネスマネージャーをしていたことがあったため、トロントに住んでいる友人に勧められ、トロントを色々と見て回り、発行を決めました。きちんとした事業計画があって…、という訳ではないためお恥ずかしいんですが(笑)。幸い周りにも一緒にやりたいという人たちがいましたが、デザイン経験や将来出版業界で働きたいという志はあるものの、誰も一冊の雑誌を一から作った経験はなく、まず動き出そう、走りながら考えよう、という感じで始まりました。

(松田)TORJAを発行される上で、特にこだわられたことはありますか?

(塩原氏)読者の皆様にも評価をいただいているのですが、「紙質と印刷クオリティ」には妥協をしないようにしています。

トロントに来てから、子供の学校、医療、不動産から、法律、会計、ビザのことなどあらゆる情報を調べたのですが、英語やフランス語はあっても、日本語の情報はとても手に入りづらいと感じました。もちろん探せばあるんですが、一般の方が書いたブログだとか、2008年の情報がそのまま載っていたりとか、現在の正しい情報がどれだかわからない。

トロントに来る前、トロントとシドニーは同じ多民族国家で在留邦人の数も同じくらいで、とても似ていると聞いていたのです。ですが、シドニーと比べると、街を歩いても日本人に出会うことはとても少なく、また日本人相手のビジネスもほとんど目にしませんでした。後で分かったことですが、トロントエリアは広いため、人口が分散しているんですね。

そういった中で、この街でどういう媒体が必要とされ、生き残ることができるかと考えたときに、長期間保管が出来るしっかりとした冊子、でなければダメだと思ったんです。本棚に入れて保管していただき、初めて読んだときは必要でなかった情報が数ヵ月後に必要になったときに、「○月号のTORJAに載っていたな」と思い出してまた手にとっていただける。できる限り長く皆さんの手元で生きていられる紙質にしなければと思ったんです。

また、オーストラリアの日系新聞社に務めていた時に、マグロを載せたレストランの広告があったんですが、カラーでも新聞印刷なので、せっかくの綺麗な赤身が黒く印刷されてしまっていたんです。美容室の広告でも、ヘアカラーの色が再現できません。そのため、クライアントさんも営業マンも、編集者も印刷業者も、皆がストレスを常に感じ、またどこかあきらめを感じているようでした。私はそれが嫌だったので、いつか自分で媒体を出版するときには、読者、広告主、著者、媒体制作に関わるスタッフ全てが満足できるような“質感” にこだわりたかったんです 。

この二つの思いが合致して、トロントで媒体を発行すると決めたときから、コミュニティ媒体ではあまり考えられない割合の額を紙に投資をしようと心に決めていました。もちろん利益を出さなければやっていけないのですが、今後もできる限り紙へのこだわりは捨てないよう、現在使用している紙の質を維持していきたいと思っています。

(松田)私もレストランを探すときなど、過去のTORJAを引っ張り出して使わせていただいています。それでは今後、会社として力を入れてやっていきたいことはどのようなことでしょうか。

(塩原氏)紙の媒体としては、より質を高めた情報発信を継続していきたいと思っていますが、今後はオンラインでトロントの情報を発信することにも力を入れていきたいです。オンラインでしたら、バンクーバーやモントリオール、日本にいる方々にも見ていただくことができますので、トロントとの橋を作ることができればいいな、と思っています。紙は決してなくならないと思いますが、今はどこにいるときでもパソコンやスマートフォンで情報を探す時代ですから、その時代に歩調を合わして進んでいきたいですね。現在のウェブもiPhoneなどのスマホやiPadなどのタブレットにも対応していますし、SEO対策などにも相当力を入れています。今年の末から来年頭にかけて第二弾のリニューアルを予定していて、さらに多くの方々にデイリーでご利用いただけるような仕掛けを考えています。

(松田)それでは塩原さんのご経歴についてお伺いしますが、ご出身はどちらですか?

(塩原氏)出身は長野県です。大学で東京に出て、卒業後は人材コンサルティングの会社で働きました。その時に広告セクションの部署と新卒採用のアウトソーシングの部署を経験しました。ルイヴィトングループの新卒採用や日本ロレアルの中途採用のお手伝いをしたりしました。

3年間働いた後、英語を身に着けたいという思いもあり海外の転職先を探していたところ、オーストラリアで当時すでに28年間日本語情報誌を発行している“日豪プレス”という会社の募集を見つけ、転職しました。初めはワーキングホリデービザで渡航し、結果を出したら就労ビザにしてくれる、という不安定な話だったのですが、半年ほどでビザを取得し、結果そこで5年ほど働き、編集から営業まで全てやりました。シドニー、ゴールドコースト、メルボルンの3箇所で媒体を出していましたので、各オフィスを飛び回りながら毎月300ページほどの媒体を出版するとともに、常に特別媒体を2−3媒体抱えている状態でした。

その後、お客様であった飲食グループの経営管理のポジションに声を掛けていただき、転職し、約3年勤めた後にトロントに来ました。

(松田)今までのお仕事で特に印象的なものはありますか?

(塩原氏)飲食業界で働いていたときに、オーストラリアと日本をつなげる仕事に携わることができて、充実した良い経験をさせていただきました。日本の酒蔵さんが日本酒を海外で売るために、ジェトロさんや商社さんと協力して各国で販売促進をしているのですが、私がそのオーストラリアでの促進活動に携わることになりました。ジェトロさんと商社さんと一緒にマーケティング方法を考えたり、プロモーション活動をしたりと、日本のためになっていると感じましたし学ぶことも多かったですね。

秋刀魚をオーストラリアに売り出すために、秋刀魚漁業組合の方ともお仕事をしました。その他には、オーストラリアに出店したい日本の居酒屋やおすし屋さんと、日本のシェフを探していたり、日本のお店とタイアップしたいというオーストラリアのローカルの方を引き合わせたりと、オーストラリア人だけで無く、シンガポール、台湾などの方々とも多民族都市ならではの経験を積ませてもらいました。

また、思い出に残っているのはユニクロの誘致です。シドニーの一等地に新しくできるビルに我々のレストランに入って欲しいとオファーが来たのですが、レストランだけでは人を集めるには弱いと感じまして、以前オーストラリアにも視察に来ていたユニクロに入って欲しいと、東京ミッドタウンのユニクロオフィスに直談判に行きました。店舗規模など、条件が合わずダメでしたけどね。韓国系のデベロッパーなどとも仕事をした密度の濃いプロジェクトでした。

(松田)現在TORJAを制作されていて、面白いと感じる部分はどのようなところでしょうか。

(塩原氏)トロントには、永住されている方もワーキングホリデーの方も含め、デザイン業務、翻訳、作文力など、非常に文化的な若者が多いと感じます。特に女性ですね。TORJAの制作スタッフは、ボランティアの方も含めて今まで男性はほとんどいません。現在はゼロです。 時々スタッフの募集をすると、応募者も女性が多いですが、男性がいても選考に残る人は残念ながらほとんどいないですね。女性が本当に優秀だと感じます。

「TORJA」のような情報誌の場合特にそれがマッチしたといいますか、例えば「あそこのレストランが美味しい」だとか「新しいお店ができた」など、女性の方が情報に敏感で興味の幅も広いですし口コミで広げる能力が高いですよね。また家庭でも奥様が財布の紐を握られているところも多いと思いますし、ファッションや美容など自分に費やす金額が男性よりも高い傾向があります。そのような比較的、可処分所得が高い女性とTORJAスタッフの女性的エッセンスやデザイン、テイストが寄り添えている点が、効果的に活きてきている思います。

(松田)逆に大変だと感じることもありますか?

(塩原氏)苦労する点でいいますと、対象読者が幅広いところでしょうか。現在制作スタッフのほとんどが20代ですので、どうしてもポップな感じになってしまうんですね。年齢が高い方々からは、「ちょっと若者に寄り過ぎだ」「もう少し文字を大きくして欲しい」などというご意見をいただくのですが、コミュニティペーパーですから全ての方に満足していただくのは難しい点ですね。私の年齢のプラスマイナス10歳くらいの方がコアの読者層になってはしまうのですが、一冊の中で色々なテーマを設けて、なるべく幅広い世代の方々に楽しんで頂ける記事を掲載するように努力はしています。

(松田)それでは、塩原さんがお仕事をする上で心がけていらっしゃることはどのようなことでしょうか。

(塩原氏)基本をしっかり保ちながら、常に新しいことやちょっとした工夫を取り入れ、マンネリ化しないように心がけています。スタッフにも、毎回同じデザインとか同じテイストに甘んじないようにと常に伝えています。

(松田)それでは、プライベートなこともお伺いしますが、ご趣味はなんですか?

(塩原氏)趣味は料理とお酒ですね。料理はストレス発散なんです。得意な料理は・・・自分で言うのもなんですが、オールマイティですね。魚もさばきますし、寿司も握ります。飲食にいたときに、毎朝6時にシェフ達と一緒に市場に行っていたんです。僕みたいにスーツを着た人間が突然現れて、「今日から彼が人事等全てみますから」と紹介されても、シェフたちは一切口聞いてくれないんですよ。このままでは何も教えてもらえないし、どうにかして仲良くならなければと考えて、朝からずっと行動を共にすることにしたんです。

朝市場に行くと、20名くらいの仕入れ担当のヘッドシェフ達が集まっていて、そこにスーツを着てついて回っていたんですが、最初は口聞いてくれなかったのが、だんだん少しずつしゃべってくれるようになって、「あの魚はこうだ」とか色々教えてくれるようになったんです。その頃に料理もするようになり、ワインや日本酒などのお酒も含めて色々教えてくれるので楽しくなって、それが趣味になったという感じです。

(松田)トロントは色々な国の食材が手に入りますので、お料理していても面白いですよね。

(塩原氏)スパイスが種類も豊富で質の良いものが手に入るので良いですよね。魚が手に入りにくいのが残念ですが、魚はお店の方と話をして買うようにしています。お薦め品や新鮮なものを教えてもらえますよ。あとはオイスターの種類が豊富でいいですよね。バンクーバーやカリフォルニアなど西海岸のものから、PEIやニューブランズウィックなどの東海岸のものまで色々食べれますので、自分で開けて楽しんでます。

(松田)では最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いします。

(塩原氏)今年の7月から商工会に加入させていただきましたが、会員の皆様との交流や、ビジネスセミナーや生活情報セミナーにも参加し日系ビジネスや日本人コミュニティ、カナダでの暮らしについて見識を広げたいと思っています。そして身に着けた知識を、媒体として皆様に還元できればと思っています。
皆様も是非TORJAを可愛がってください。

(松田) 今後も楽しく役立つ情報を読ませていただくのを楽しみにしています。今日はどうも有り難うございました。



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