「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第85回>
TS Tech Canada Inc.
President 小林 誠 


第85回目は、今年4月にカナダに来られたテイ・エス・テック・カナダの小林社長です。オフィスはニューマーケットにあり、大きな工場が併設されています。近隣にある子会社トライモント溶接工場とスカーボローにある子会社トライモント内装工場の3拠点にて事業をされています。車のシートに内蔵されている新しい技術や2年前に起きたタイでの洪水被害でのご経験など、色々とお伺いしてきました。


(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いします。

(小林氏)はじめに、テイ・エス・テック株式会社の紹介をさせていただきます。テイ・エス・テック株式会社は、世界13カ国に40法人70拠点を展開しており、四輪車のシートと内装部品(ルーフトリム、ステアリング、ドアトリム)、また二輪車用シートと樹脂部品の製造販売をしております。シート製造技術を生かし、車椅子や人工透析チェアなどの医療用チェア、台湾の新幹線のシート、ゴルフカートやジェットスキーのシート、ブルドーザーなどの建設機械のシートも作っています。埼玉スタジアムのベンチシートを寄贈したりと社会貢献にも力を入れています。このベンチシートは当社が製造したホンダさんのS-2000というオープンスポーツカーのシートをベースにしてあり、選手や監督が冬場でも寒くないようにヒーターを内蔵しました。

(松田)まるで、座れるものは何でも作られているようですね。では、テイ・エス・テック・カナダのご紹介もお願いします。

(小林氏)テイ・エス・テック・カナダはテイ・エス・テック・アメリカズの100%子会社であり、事業内容は四輪車用シートの製造販売です。1996年にテイ・エス・テック・カナダが設立されました。現在は、テイ・エス・テック・カナダの100%子会社でドアライニングを製造するトライモント内装工場、シートフレームを製造するトライモント溶接工場の3拠点にて事業展開をしております。従業員数は、テイ・エス・テック・カナダに約540名、溶接工場に約220名、内装工場に約300名おり、トータルで約1100名弱が勤務しております。

(松田)御社のお客様はどちらでしょうか。

(小林氏)お客様は100%ホンダカナダ(HCM)さんです。今年3月からHCMさんで製造している車のシート全量を製造しており、お蔭様で今期は、昨年1年間の生産台数約35万5000台を越える、41万台弱を生産しております。また、HCMさんのドアライニングのうち、現在CRV、CIVIC4ドアを当社で製造しております。

(松田)事業が拡大されて、これから益々お忙しくなりそうですね。それでは、車のシートの新技術について教えていただけますか。

(小林氏)テイ・エス・テックは、高次元な安全評価を実現するため、全方位からの衝突(前方、側方、後方)を実際の衝突時と同じ衝撃を再現することができる設備を備えています。ヘッドレストの衝撃試験機などは世界に数台程度しかない設備ですが、日本はもちろん、我々の親会社テイ・エス・テック・アメリカズにも導入しました。

当社の強みである安全技術として、当社が開発した「アクティブヘッドレスト」というものがあります。例えばよく自動車で追突されてムチ打ち症になると聞いたことがあると思いますが、当社は、衝突の際に慣性の法則により、運転者の体がシートに沈みこむ力を利用してヘッドレストがリンク構造により前方に移動して頭が下を向くように支えてくれて、首への負担を和らげることができるんです。更に現在は進化してリンク構造を廃止して軽量化を実現すると同時に、性能もムチ打ち症を防ぐことが出来る構造になっています。

他には、「シートウェイトセンサー(SWS)」という技術は、チャイルドシートを助手席に乗せている時や子供が乗っている等をセンサーで感知し、エアバッグの展開量を調整できる装置が搭載されているものもあります。また、「シートポジションセンサー(SPS)」は、シートの位置によって乗っている人の体の大きさを判断し、小柄な女性が乗っている場合にはエアバッグの展開の大きさを少なくして衝撃を和らげることができます。そして「OPDS(Occupant Posture Detector System)」というのは、座っているのが大人か子供かを判断し、子供が側面に寄りかかって寝ている場合には、子供の首障害を防止するために衝突時もサイドエアバッグが開かないよう制御する技術です。

(松田)車のシートにそんなにたくさんの技術が組み込まれているとは、本当にびっくりです。

(小林氏)私が入社した頃は車のシートというのは大変シンプルで、私でも作ることができたくらいでしたが、今は管理項目や条件が多数あり、とても複雑です。当社の商品は、乗員の身体を守る「安全技術」、新素材の使用や車の燃費向上を考えた「環境技術」、そして機能や乗り心地により快適なドライブを提供する「魅力商品技術」を強みとして、常に更なる向上を追及しています。そういった努力もあり、昨年ようやく、J.D. Powerの顧客満足度調査のシートクオリティ部門において、一位を受賞することができました。

(松田)会社として今後力を入れていきたいことはどのようなことでしょうか。

(小林氏)当社の企業理念でもある「喜ばれる企業」であるためにも、CSRへの取り組みを強化したいと思っています。ここカナダにおいては、まだ全従業員の意識が薄いと感じる部分がありますので、従業員に浸透させ、地域社会の皆さんに喜んでいただけるような会社にしていきたいと思っています。

また、テイ・エス・テックグループのビジョンとして、2030年までに「世界の巨大サプライヤー」となるということを掲げており、そのため2020年までに「部品競争力世界TOP」を達成することを目指しております。北米グループとしてはメキシコに新工場を稼動させる予定であり、競争力のある価格で快適で良質な商品を提供し、当社の顧客であるHCMさんにも喜んでいただける企業になるということを中心に力をいれていきたいと思っています。

(松田)小林社長のご経歴についてお伺いしたいと思います。ご出身はどちらですか?

(小林氏)三重県の四日市市近郊にある湯の山温泉という温泉街のふもとで生まれ育ちました。温泉が湧き出て、山があり、また海も近いため美味しいお魚も食べられるという非常に恵まれたところです。ご存知の方もいるかと思いますが、昨年、日本を代表するイタリア料理のシェフ奥田政行氏とパティシエの辻口博啓氏が温泉と食を融合させたレストランを近くにオープンしました。温泉水を使用して育てた農産物を使った食事や果物を提供したりと、若い方にも注目されている観光地ですので、是非一度訪れてみてください。

テイ・エス・テックに入社してすぐは鈴鹿工場に配属となったのですが、その後まもなくの1984年に、クライスラーの仕事を受注したトライコンという子会社のシート生産指導者としてアメリカ、ミズリー州に行きました。1年ほどで日本に戻りましたが、1993年に同じトライコンに3年間赴任し、1996年~2000年まではオハイオ州に設立した北米本社に転勤となり、開発、技術の仕事を担当しました。そして2000年~2009年は栃木に転勤になり、生産技術として全世界の拠点の製造ラインの企画、工場新設の企画といった仕事をやりました。2009年からは16年振りに鈴鹿工場に戻り、2013年4月にカナダに赴任となりました。

(松田)今までで特に印象に残っていらっしゃるお仕事はどのようなものがありますか。

(小林氏)私は“火消し役”といいますか、どこかの会社でトラブルがあると派遣されることが多くて、その問題の対策をたて、解決をして帰ってくるということを何度もやりました。エピソードはたくさんあるのですが、一番最近ですと、2年前に起きたタイの洪水の時のことです。その時はタイに新機種企画内容の確認依頼があり、一週間の出張予定でタイに行きました。滞在3日目くらいに、段々水かさが増しているなという気がし、その翌日には工業団地の周りの堤防の水位が道路よりも高くなっていたんです。するとその日のうちに工業団地に呼ばれ、「堤防をもっと高くするから工業団地を閉鎖させてくれ」と言われ、すぐにお客様に事情を説明し、数日間ライン欠品しますと報告し、対策を皆で考えていました。

しかしその翌日には避難命令が出てしまい、場所によっては車が流されてしまうくらいまで水位が上がっていました。その夜社内の様子を見にいった社員から「もう膝まで水がきている」と連絡が入り、翌日には腰の位置まで来て、最終的に3.8メートルの高さまで水没してしまったんです。色々な設備が使いものにならなくなってしまったことは明らかでしたが、お客様は稼動しているので部品供給を止める訳にはいかないということで、すぐにリース工場の視察と手配をし、グループ会社から部品供給や人員の援助をお願いし・・・と準備を進めていたところ、次々と他の工業団地も水害に遭ってしまい、私の記憶では約800社ほど洪水被害を受け、タイの製造機能がストップしてしまいました。本当にとんでもない洪水だったんです。

(松田)すごいご体験ですが、小林社長のご判断がとても早いですね。

(小林氏)私は早い段階で、この災害は一般人がどうにかして解決できるものではないと判断し、軍を要請するよう要求しました。当社はその時軍隊を一番最初に使った企業だったんです。そして、水が引いたときに何が必要か、衛生面や設備などあらゆることを考え準備段取りをしました。結局1週間が1ヶ月滞在となり大体目処がついたので私の代行者を日本から迎えて帰国しましたが、タイの中でも一番最初に復旧したのが当社ということでお客様からも高い評価を頂きました。たくさんの経験をしたからこそできた判断でしたが、やはり私にとってもあの体験は想像を超えるものであり忘れられませんね。まるで滞在中の毎日が、映画の世界の様な錯覚を覚えました。

(松田)では、小林社長がお仕事をする上で心がけていらっしゃることはどのようなことですか。

(小林氏)こっちの文化と日本の文化は違うとよく言われがちですが、きちんと話せば理解し合うことができますし、ゴールをはっきりとさせれば皆が同じゴールに向かっていけると思っています。根本である“対話”を諦めることなくきっちりとして、お互いが理解・納得し合っていること、そしてゴールの矛先に相違がないことを確認して、進めていくということを心がけています。私はカナダに来てまだ半年なのでこれからの部分もありますが、このことを常に念頭に置き、従業員と一緒に我々のビジョン達成のため邁進していきたいと思っています。

(松田)それでは、プライベートなこともお伺いしたいと思いますが、お好きなスポーツはありますか。

(小林氏)生まれが三重県の山の近くだったこともあり、小学校のときからスキーをしていました。27歳くらいのときに誘われて初めてゴルフをやり、これは面白いなと思ってからは、それまでやっていたスキーを辞めてゴルフ一筋です。アメリカに駐在していたときに、一日3ラウンド回ったことがあります。同じコースじゃなくて別のコースで3箇所です。「クレイジー」だと言われましたが、それくらい好きなんですよね(笑)。

(松田)カナダでもゴルフは人気のスポーツですので、たくさん楽しむことができそうですね。他にご趣味はありますか?

(小林氏)旅行も好きで、前に北米にいたときにアメリカ50州中46州行っているんです。あと行っていないのはオレゴン州、ノースダコタ州、メイン州、バーモント州の4州だけです。これをいつか達成したいですね。
今年の夏休みは一週間ほどあったのですが、バルセロナのサグラダファミリアを見たいと思い、急に決めてスペインに行き、残りはイギリスに行ってイギリスグループ会社の視察とゴルフを満喫してきました。

(松田)今まで行かれた国の中ではどちらがお薦めですか。

(小林氏)中南米のコスタリカが一番面白かったです。小さいですが国土の4割くらいが自然保護区という国で、縦に細長いため太平洋と大西洋の両方に簡単に行くことができるんです。そして火山の噴火がいつでもあって、夜になると真っ赤な火砕流が見れます。ものすごく綺麗です。野生動物もたくさんいて、道の真ん中にイグアナがすっと出てきたり、川を上から覗くとワニがいたり、赤や黄色のカラフルでチョコボールのキョロちゃんのような口ばしをもつ鳥がたくさんいますし、毒を持っているのですが真っ赤や真っ青のカエルもいます。あと国鳥でもあるエメラルド色に輝くケッツァールに出会うことも出来ました。治安も良く安全ですので、お薦めの旅行先です。

(松田)とてもコスタリカに行ってみたくなりました!では最後になりますが、商工会会員へのメッセージをお願いします。

(小林氏)当社には駐在者が4名いるのですが、全員単身赴任なんです。色々な催しもののご案内をいただきますが今まで忙しく参加できてないことが多かったのですが、今後機会があればセミナーやイベントなどに参加したいと思っています。知り合いを増やし生活の情報交換やビジネスの意見交換などもさせていただければと思っています。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

(松田)インタビューは以上となります。今日は本当に有り難うございました。



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