「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第84回>
SHISEIDO (Canada) Inc.
President 岡本 仁志  

今年6月に赴任された資生堂カナダの岡本社長にインタビューをして参りました。オフィスはマーカムにあります。受付ロビー、廊下、会議室まで全て赤と黒を基調にしたとてもおしゃれな内装で、新製品から100年以上前の商品やポスターが展示され、まるで資生堂ミュージアムのようでした。今までに関わられたプロジェクトや大好きな趣味のお話などいろいろとお伺いしてきました。



(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いします。

(岡本氏)資生堂カナダの事業は、化粧品の販売です。多くの皆様にご認知いただいている、コーポレート名称資生堂を冠したブランド「SHISEIDO」をはじめ、それ以外にもいくつかの事業・ブランドを扱っています。フランスに本社を置くフレグランス(香水)事業「ボーテ・プレステージ・インターナショナル(BPI)」、NYで生まれたカラーメーキャップアーテイストのブランド「NARS」、日本でも販売している高級ブランド「クレ・ド・ポー・ボーテ(clé de peau BEAUTE)」などがその例で、スキンケア、フレグランス、カラーメーキャップと、お客さまの多岐に渡るニーズや、様々なシーンを彩るお手伝いをさせて頂いております。

(松田)御社の設立と社員数を教えてください。

(岡本氏)最初にカナダに進出したのは1969年。「ZEN」という香水をモントリオールにある代理店を通じて販売したのが始まりで、1972年にアメリカの支店という位置づけで、トロントのクイーンストリートの東でビジネスを本格スタートさせました。その後1993年にカナダの法人として独立。今年でちょうど20周年を迎えます。社員数は、オフィススタッフが約60名、ウェアハウススタッフが約50名おり、現在110名です。その他に店頭で活動する美容部員がカナダ全土で約230名、またイベント時などにお手伝いしてくださるフリーランスの方が150名いらっしゃり、合計およそ500名ほどのメンバーでカナダのお客さまを美しくするために、お役に立てるよう努力しております。

(松田)御社の強みはどちらにあると思いますか。

(岡本氏)例えば、洋の東西を問わず、「仕事をしている30代女性」と一言で申し上げても、様々なタイプの女性がいらっしゃいます。しかも最近の女性は、「一人十色」といいますか、普段はビジネスライクに、そしてプライベートでは女性らしさを前面に、でも、たまには友達とはじけたいなど、一人の女性が生活シーンや気分によって、様々なご自分を演出され、そのシーン毎に異なる表情をお見せになります。

弊社では、スキンケア、フレグランス、メーキャップなど、様々なお客さまのタイプや嗜好に合う商品を取り揃えているだけでなく、カウンセリングを通じ、その本質的な価値、正しい使い方、さらには、商品の組み合わせによる新しいケアや彩りの方法など、一人のお客さまの気分やライフスタイルに合わせ、ワンランク上の変化を加えられる、そんなご提案をさせていただけることが強みだと思います。特にここカナダでは、お客さまの消費行動の変化も手伝って、商品を取り扱い頂く流通(デパートやドラッグチェーン)の動きが最近急に活発になってきていますので、お客さまの期待を上回る商品やご紹介機会を継続的に提供できるよう、新しい提案を模索し、新ブランドや新製品の導入を検討していきたいと思います。

(松田)今お薦めの商品や新商品はありますか。

 

(岡本氏)今旬な商品は、今月発売した「IBUKI(息吹)」(写真上)というスキンケア商品です。仕事にプライベートにと日々忙しく充実した日々を過ごす女性は、ときに肌にとっては過酷な環境下にさらされます。この商品は、紫外線、乾燥、ストレスなどのあらゆる刺激への抵抗力を高めるスキンケアで、トラブルに悩まされない強い肌をつくります。いわば、肌に新しいチカラを吹き込むスキンケアラインです。
もう一つは、こちらの「FUTURE SOLUTION LX」(写真下)という私たちがもっているSHISEIDOブランドの中で最高峰という位置づけのラインです。実は私は日本でこの商品の企画に携わっておりました。2009年に発売したのですが、お陰様で全世界的に高い評価をいただいております。カナダでは、販売店舗を限定するというこれまでの戦略もあり、まだまだプレゼンスが低いので、もっとその価値を知っていただくため、ご紹介する機会を作っていきたいなと思っています。

また、あまりご存知のない方もいらっしゃいますが、「SHISEIDO MEN」という男性用スキンケアブランドもあります。高品質の男性用化粧品ブランドで、Shoppers Drug Mart
などでも販売されていますので気軽にご購入いただけます。これから冬にかけてカナダの空気の乾燥はすごいと聞きますので、是非一度試していただければと思います。

(松田)今後会社として力を入れていきたいことはどのようなことでしょうか。

(岡本氏)資生堂は140年超の歴史がありますが、その根底に“品質本位”という概念が存在します。それは、単純に商品そのものの品質だけではなく、カウンセリングなどの品質をも意味し、いかに総合的な“深みのある価値”をお客さまにお届けするかという基本理念に通じています。そういったソフトの部分、ちょうど東京オリンピック招致のプレゼンテーションで「おもてなし」という言葉が改めてフォーカスされましたが、「おもてなし」という言葉を使い、その価値を世界に発信したのは、資生堂が先駆けだったと思いますので、英語でいう“Hospitality”にはない奥行きを、カナダの美容部員にもしっかりと浸透させたいと考えています。そして、商品の持つ価値を適切にお客さまにお届けするためにも、基本であるお客さまとの対話を見直し、カウンセリングを強化したいと思っています。当然その活動をどのように伝播させていくかということも私たちの今後のチャレンジですね。
 
(松田)それでは、岡本さんのご経歴についてお伺いしたいと思います。ご出身はどちらでしょうか。

(岡本氏)静岡県の藤枝というサッカーが盛んなところで生まれました。大学を卒業して資生堂に入社したのが1991年です。入社後3年半は営業を担当し、その後本社の商品開発部門に配属されました。配属先は、広義の意味でマーケティング部門の一部でしたので、入社以来マーケティングを志望していたこともあり、昼夜仕事に没頭する日々を過ごしました。最初はボディケアやシャンプー等の主にマスマーケット向けの商品を担当し、併せて、それらの商品の広告企画、販売施策等も担当したりしました。

その後、2000年~2001年に海外派遣員としてニューヨークで生活し、それまでのように日本人のお客様だけでなく、多種多様な価値観を持つお客さまと向き合う経験を積ませてもらいました。私の中では分岐点となった期間でした。最初はマーケティングの発祥といわれるアメリカでどこまでやれるのかと少し怖さもあったのですが、実際に働き出してみると、日本で積み重ねたマーケティングの理論や実践が大変緻密であることを実感するなど、自信を持ち、併せて、会社の持つノウハウをグローバルに展開していくことの醍醐味を感じ、もっと海外のフィールドでレンジを拡げてやっていきたいという意志を固めた時間でした。

帰国後は、資生堂がもつ「IPSA(イプサ)」というデパート専用ブランドのマーケティングに携わり、その後は、資生堂本社で国際マーケティング部のスキンケア商品企画部門を中心に6年半を過ごしました。「FUTURE SOLUTION LX」はその時の担当商品です。

(松田)今までで一番印象に残っているプロジェクトはどのようなものですか?

(岡本氏)やはり、「FUTURE SOLUTION LX」の企画立案ですね。ミッションが、「SHISEIDOブランドの中の最高峰ラインを創れ」というものでしたので、当然コーポレート資生堂の歴史、資生堂とは何か、というところから考えましたし、周囲の期待もあり、プレッシャーも感じました。思えば、寝る間も惜しみ本当に自分自身がギリギリのところまで力を注いだプロジェクトでしたから、厳しかったですが、良き仲間にも恵まれ、また、自分は自身が所属する会社の名を冠した最高峰の商品企画に携わっているのだという喜びもありました。最後はその気持ちだけでやり遂げることができたような気がしています。その商品が今市場で、実際にお客さまの手にお届けされているシーンは、改めて拝見しても、ぞくっとするほどの高揚感を感じますね。

(松田)そのプロジェクトの中で、一番難しさを感じたのはどのようなことですか。

(岡本氏)最初にこの企画をグローバルに展開していく上で、 “日本”の持つソフトパワーをコンセプトの核にしたいと提案した際、社内で多くの反対をうけました。でも、つまるところ、他人の土俵で勝負しても、やはり限界がくると感じたんです。だから資生堂グループにしかない固有の価値と世界に通用する普遍性をどうしても、コンセプトの中核に据えたかった。資生堂という会社は、社名もそうですが、西洋と東洋、アート&サイエンス、伝統と革新などのハイブリッド性をキーに成長してきた歴史があり、日本という国も、古くは中国文化とのハイブリッド、そして開国後はヨーロッパ文化とのハイブリッドを実現させオリジナルの文化をつくってきた国です。そういった、外から来たものを柔軟に取り込んだ上で更に洗練の度合いを高めていくしなやかさやしたたかさ、つまり日本という国の根底に流れている「和魂洋才」の精神と資生堂の文化に共通性があるということを、とうとうと説明し、社内からの理解を得るよう尽力した記憶があります。

(松田)御社の製品や広告には、海外市場でも「OMOTENASHI」や「IBUKI」など日本語をそのまま使われているのに驚きました。

(岡本氏)例えば、粋、雅、幽玄の美、など、日本ならではの価値観で、英語には、なかなかきれいに翻訳できない言葉がありますが、それを価値化しよう、というのが我々の挑戦でした。「FUTURE SOLUTION LX」には、高い技術だけでなく、香りに、はまなす、桜、梅といった日本ゆかりの花を厳選採用するなど、リッチな和のコンセプトをふんだんに取り入れていますが、そうすればきっと他の欧米の商品とは違うたたずまいで豊かさを実感いただけるものができるはずだと信じました。
例えば、「粋」という言葉をどのように英語に訳すか。日本語で説明することも難しい言葉ですが、それだけではなく関東と関西では喚起されるイメージが違うんですよね。そういうことも一つ一つ開発チームの中で共有し、考えていき、実際は大変な作業でしたが、同時に面白さも感じてやり遂げることができました。幸い今、「FUTURE SOLUTION LX」が世界中で評価を頂いており、うれしい限りです。

(松田)そのように日本を感じ取っていただけると嬉しいですね。では岡本さんがお仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことでしょうか。

(岡本氏)フランスの科学者のルイ・パスツールの言葉で、「好機は心の準備ができている者のもとにやってくる」という言葉があります。この言葉のようにチャンスを呼び寄せるためにも、あらゆることに対して良い準備をしていたいといつも思っています。仕事に少し慣れてきて、これは当日ぶっつけ本番でやればいいかな、とか、直前にすればなんとかなるな、などと考えていると、思っていたとおりにいかなかったということがあります。逆に、多少自分のプライベートや睡眠時間を削ることになっても、やりすぎかなと思うくらい用意周到でいると、難しいと思っていた事も良い方向に進んでいくことがありますよね。仕事だけではなくプライベートでも、何事に対しても準備をしておくということはすごく重要なことだと実感しています。

また、私は経営に関してはまだまだ経験が浅いですが、全ての判断や決定において”お天通様に恥じないように“ということを常に念頭に置き、精進していきたいと思っています。

(松田)それでは岡本さんのプライベートについてもお伺いしたいと思います。ご趣味はなんですか?

(岡本氏)趣味はサッカー観戦です。プレイヤーとしては野球とテニスをやってきたのですが、、サッカー観戦はクレイジーな程、大好きです。少し前までは、サッカー観戦を目的に海外に出向いたりもしていました。ワールドカップに至っては、前回の南アフリカこそ行けませんでしたが、それまでは四大会連続出場でした。来年はブラジルですね。仕事がありますし、日本から24時間かけて行くのは流石に無いなと思っていたのですが、トロントからだと8時間で着くので、少しは可能性が広がったかもしれません。ただ、すべては仕事次第ですね。6、7月に休暇を取るのはなかなか現実的ではありませんし。

(松田)本当にお好きなんですね。では、最近の休日はどのように過ごされていますか?

(岡本氏)今9歳の子供が、日本ではサッカーを学び始めていたのですが、カナダに来てからブルージェイズが大好きになり野球に興味を持ち始めました。野球だったら私も教えられますので、夏は子供と一緒に野球をしました。ただ、カナダではシーズンがあるので夏が終わったら練習も終わってしまうんですね。秋冬のスポーツとして野球をするところがあまりないようなので、秋冬は子供が何をしたいのか?まだわかりませんが、本人の望むものを一緒に楽しみたいと思います。

(松田)今後カナダでやりたいことは何かありますか?

(岡本氏)家族みんなで楽しめることにチャレンジしたいと思っています。先日、社員に連れて行ってもらってOshawaというところに釣りに行きました。トロントから車で約1時間のところで、ほんの15分釣り糸をたらすだけで80cmほどある大きなサーモンが釣れるんです。でも引き上げるまでに20分間格闘しました。釣り人にとっては天国のような場所なので、連れて行ってくれた社員に、観光客は来ないの?いろいろなところから釣り人が来るんじゃないの?などと聞いたんですが、彼は、そのエリアでは、自分たちの楽しみを徒に広めるようなことはせず、地元の釣り人だけでマナーや節度を守って、楽しんでいると説明してくれました。

自分の次の次の代までこの環境を保全したいと言うんです。素晴らしい考えだと思います。だから、基本、大物が釣れてもすべてリリースし、魚の産卵や繁殖を妨げることのないように配慮しているんです。一方で、釣りのえさが欲しいがために卵だけが取り除かれたサーモンが駐車場に捨てられている光景も目のあたりにしました。そのような心ない人も現実的にいるということは、悲しい事実ですが、カナダの美しい自然とそれらに畏敬の念を抱くカナダ人の心を学び、どこか日本人の私たちとの共通項を感じるとても貴重な体験をしました。ですので、カナダ国内で家族と一緒に楽しめることに多いにチャレンジしたいと思っています。

(松田)最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いします。

(岡本氏)新参者で、経営もカナダの生活も勉強中の身ではありますが、少しでも多くの皆様との出会いを通じ、良い刺激を受けさせていただきたいと思っています。特にプライベートでは、家族を連れて海外駐在するというのは初めての経験ですので、まだまだ分からないことだらけです。この豊かな自然と素敵な人々に囲まれたカナダを存分に楽しむ方法など、商工会の皆様に色々教えていただきたいと思っておりますので、お会いした際にはどうぞ宜しくお願いいたします。

(松田)インタビューは以上になります。今日はどうも有り難うございました。


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