「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第71回>
Murata Power Solutions (Toronto) ULC / ムラタパワーソリューションズ
備前 達生 President & CEO
今井 聡樹 Senior Electrical Designer


2月より商工会に入会されたムラタパワーソリューションズさんに取材をして参りました。商工会登録代表者であるトロントに駐在されている今井氏(左)とカナダ、アメリカ、イギリス、中国にある全てのムラタパワーソリューションズの社長を務めていらっしゃる備前社長(右)にお忙しい中お時間を作っていただき、両氏にお話を伺いました。電子機器について知識の乏しい私に、大変丁寧に分かり易くご説明いただき、とても気さくで明るいお2人のお陰で楽しいインタビューとなりました。
 


(松田)御社の業務内容のご紹介をお願いします。

(備前氏)ムラタパワーソリューションズは、京都の長岡京市に本社をもつ村田製作所という会社の子会社という位置付けになります。村田製作所は電子部品を生業としている会社ですが、いわゆるリテイルショップに売られている商品ではないので、あまりご存知ないかもしれません。セラミックス(陶器)の粉というのは色々な電気的な性質を持っていまして、焼き固めると様々な電子コンポーネントが出来ます。村田製作所はそこを基本的な始まりとして色々と発展して大きくなりました。

創立は1944年で、日本には24社、海外には50社ほどの子会社を持っており、全世界で3万7千人の従業員がおります。業界ではわりと早く海外に出て行き、1972年にシンガポールに初の海外工場をつくり、翌年の1973年にアメリカに進出しました。

主な市場としてはコンピュータ、コミュニケーション、産業、医療、オフィス製品、輸送・交通の分野で、電子機器の内部部品を作っています。例えば電子回路を構成する基本的な部品としてコンデンサ、ノイズを抑えるフィルタ、コンピュータの心臓部であるCPUのタイミング信号をつくる部品、Wi-fiなどの「コネクティビティモジュール」、ハードディスクドライブの中に入っていて衝撃によるトラブルを避けるために信号を送る「ショックセンサ」という部品は、世界で95%のシェアをもっています。

セラミックコンデンサは一つのスマートフォンの中に500個程入っており、小さいものでは0.1ミリ×0.2ミリというものもあります。このように、小さいものをコツコツと作っているような会社です(笑)。

(松田)それでは、ムラタパワーソリューションズのご説明をお願いします。

(備前氏)ムラタパワーソリューションズの本社は、ボストンのマンスフィールドにあります。全世界に1200名ほどの従業員がおり、トロント、アメリカ、イギリス、中国と香港に、工場、オフィス、R&D(Research & Development)センターがあります。

ムラタパワーソリューションズは、2007年にC&D Technologiesという会社の電源事業部門を買収してできました。C&D Technologiesという会社は、その前にも様々なM&Aを経ていましたが、このトロントのR&Dセンターは実は数十年前は村田製作所であった時期があり、巡り巡って戻ってきたことになります。今のトロントのムラタパワーソリューションズの社員には当時の村田製作所の時代から働いている者もおります。

現在トロントには約60名の従業員がおりますが、ほぼ全員がエンジニアで、世界中20数カ国の違う国から来たエンジニアが働いています。自分の技術や知識を元に他国からカナダに来た人達なので、この仕事で生きていこうという覚悟が違いますよね。皆大変働き者で信頼のできる人達です。

(松田)ムラタパワーソリューションズの商品について教えてください。

(備前氏)ムラタパワーソリューションズは「電源モジュール」を主に開発・製造している会社です。モジュールとは、村田製作所の優れたセラミックス材料やその他の部品を組み合わせて設計・加工する部品で、製品の付加価値を高めます。電源は電気を使うものには必ず入っていますが、一つの製品の中に一つだけというわけではありません。製品の中にあるたくさんの半導体はそれぞれに異なる電力量が必要であり、それらを供給するのが電源であり、一つの製品の中には小さな電源がたくさん入っています。

(松田)備前社長は、カナダ、アメリカのみならず、イギリス、中国も含めた全ムラタパワーソリューションズのPresident & CEOということですが、他国と比べてトロントの印象はいかがですか。

(備前氏)トロントでは、小さいものが得意なムラタの中では異色と言え、主にデータセンターなどで使用されるような大きい電源を開発しています。そして、村田製作所の商品の中でもソフトウェア技術やアナログ技術とデジタル技術を組み合わせたような、複雑なものを作っています。複雑さと大電力という意味では我々の中では最先端をいっており、今後もっと世界で必要となるデータセンターのような大きなシステム構築やエネルギーに関するシステム作りにもここの技術をベースにやっていくことになりますので、戦略的にはとても重要な拠点です。

(松田)御社の強みや売りはどこにありますか。

(備前氏)トロントはR&Dセンターなので、ここが元々持っている経験や技術力を大学などと協力して新技術を開発しています。更に、親会社である村田製作所が持っている様々な強み、例えば村田製作所が製作する部品の使用や、村田製作所のもつ世界中のセールスネットワークも我々の強みです。ムラタパワーソリューションズ、村田製作所、大学とのコラボという3者のシナジーを上手くすり合わせながら、開発した新技術をビジネスルートにのせて世界中のお客様へと拡大していきたいと思っています。

(松田)御社の技術をつかった面白い商品は何かありますか。

(今井氏)これは村田製作所の話ですが、我々の作っている部品は電化製品の中に入ってしまうので、一般の方々の目に留まることはあまりありません。そこで、我々の部品、技術をPRするために、それらを搭載したムラタセイサク君というロボットを作りました。これは自転車に乗っている2輪のロボットで、細い橋の上を倒れずに自分で走ることができます。

(備前氏)我々は生産をするための機械も自分達で開発して作っています。使用する部品に特殊なものがあり、他社より購入する事ができないため、自分たちでそれをつくるための機械を作らなければなりません。この自転車ロボットには、我々の電源や電子部品、制御装置などだけでなく、その工作機械作りの技術も入っています。ムラタセイサク君は時々コマーシャルにも出ていて、村田製作所のCMはもちろん、サントリーのCMにも使われました。アメリカのラスベガスで行われるCES(Consumer Electronics Show)でも、出し物としてこれを出して、好評でした。

(松田)部品を作る機械というのは具体的にどのようなことですか。

(備前氏)たとえば電子コンポーネントを作るのにセラミックスを精製しなければならないのですが、精製の方法が大変難しく、粉の一粒一粒の大きさがナノレベルで揃っていないと上手く特性が出なかったりするんです。材料を均一にするとともにどんな温度履歴をとって、どんな火加減でどのように焼いていくかというプロファイルは経験を積み重ねて作られたものなので、簡単に他社や新興国の会社には真似できません。そのように村田製作所はムラタパワーソリューションズも含めて「ものづくり」というところに強みを持っている会社であり、そこがMurata Manufacturingという社名にManufacturingを残しているこだわりの一つかもしれません。

(松田)会社として今後力を入れてやっていきたいことはどのようなことでしょうか。

(備前氏)二つありますが、まず今まで主に取り組んできた領域である、データセンターやデータコム、テレコムという領域で、その市場に対してもっと強くなりたいということ。もう一つは新しい市場、特にエネルギー関連に対してアプローチをしていきたいです。今はシェールガスやメタンハイドレイドなどの新しい資源の開発が行われていますが、あれらはやはりエネルギー消費に対しての危機からきていますよね。エネルギーと情報は産業を支える上での2つの重要な要因だと思うのですが、情報に関しては我々の市場としては結構開拓してきています。

しかし、エネルギーのほうは正直言うとこれからです。昔は石炭や石油を使い放題でしたが、全世界でこれだけのエネルギー消費量があると、きちんとマネジメントをしながら使わないと環境に悪影響を及ぼしたり、無駄にコストが上がったりしてしまいますので、きちんと効率よく使うというエネルギーマネージメントシステム(EMS)という市場を開拓していきたいと思っています。

(松田)具体的にムラタさんの強みを活かせる部分と言うのはどの部分なのですか?

(備前氏)エネルギーのソースは、これまでは発電所から供給される部分だけだったと思うのですが、最近では太陽電池や太陽光発電、風力発電などの自然ソースエネルギーがあります。また、電気自動車はとても大きなバッテリーを積んでいるのですが、それが普及すると、家でも充電システムが必要となります。それらを上手く使い、無駄な電力消費を押さえ、非常時にも役立つシステムの構築です。

例えば今かんかん照りで、太陽光から電力がどんどんと作られている、しかし今使う必要がないときは、バッテリー(蓄電池)にエネルギーを貯めれば良いのです。それは非常時、電力消費量のピーク時、雨天の際にも使用できるし、もし一杯なのに誰も使わないとしたら、その貯めた電力を売って戻すこともできます。そのようなエネルギーの賢い使用方法をセンサーネットワークと連携したマネジメントシステムとして作りあげ、その実生活での利用の実現を目指しています。

車も、通常のガソリンで動く車はエアコンやステレオの部分で電気を使う程度でしたが、電気自動車になると全てが電気で動くことになります。それはエレクトロニクス産業にとって、ものすごく市場が広がるということになります。もっと普及し人々に受け入れられるよう、我々も力を入れていかなければなりません。

(松田)それでは、商工会登録代表者ということで、今井さんのご紹介をしていただきたいと思います。

(今井氏)出身は奈良県奈良市です。大学時代からエンジニアを目指しており、卒業後、情報機器メーカーで5年間働き、後に村田製作所に転職しました。その後はずっと電源の設計を担当しています。トロントには2年前に来ました。海外勤務は初めてです。こちらでは、AC/DC電源の設計を担当しています。去年まではオフィス向けのプリンタ用の電源の設計を担当していました。今は新しい電源作りを担当しています。

(松田)今までで印象に残っている仕事は何かありますか。

(今井氏)印象に残っているというと、お客様に迷惑をかけたことですね(笑)。我々の設計する電源と言うのは、例えばプリンタなどの電化製品の中に入るのですが、我々の設計が遅れるとお客様の販売にまで影響を及ぼしてしまいます。お客様はかなり前から発売時期を公に発表していますので、絶対に納期は間に合わせなければいけないのですが、直前になって性能が合わないといったトラブルが起きたことが過去に一度ありました。その時は土日、昼夜を問わず働き間に合わせましたが、あのときは精神的にも体力的にも大変な思いをしました。

(松田)通常一つの電源を一から作ろうとするとどのくらいの期間がかかるものなのですか?

(今井氏)大きさや性能、納期によって違いますが、私が担当していたものは約二年でした。現在、電化製品の新機種発表のスパンが二年ということが多いので、我々もそれに合わせて開発を進めます。設計する電源の大きさや機能によりますが、1人で一から完成させるものもあれば、2、3人を要するものもあります。小さくそれほど複雑ではないものを担当している場合は、同時期に複数の設計を担当します。

(松田)それでは、今井さんがお仕事を進める上で大切になさっていることはどのようなことですか。

(今井氏)信頼を築くことです。お客様との信頼構築ももちろんですが、上司や同僚からの信頼、関係する部門の方々との信頼関係も大切だと思っています。そのために、日頃のコミュニケーションを大事にし、真摯に対応するようにしています。

(松田)エンジニアというお仕事の魅力はどこにありますか。

(今井氏)自分が設計したものが発売されるのを見ると嬉しくなります。内部に入っているので直接は見えないのですが、設計に苦労したことや新機能対応など、思い出がありますのでとても愛着がわきますよね。

(松田)今井さんは、お好きなスポーツやご趣味はありますか。

(今井氏)昔はバレーボールをしていましたが、今は全く運動らしいことはしていません。ポジションはエースでした。一度トロント市の体育館でバレーボールチームが練習をしているというのでやろうと思って行ってみたのですが、とても本格的であれにはついていけないと思って諦めました。20年前だったらプレイしたかったんですけどね。(笑)

(松田)最近何か夢中になっていることなどありますか。

(今井氏)カメラは好きです。カメラを持ってどこかに撮りに行こうということはしないのですが、主に今13歳、11歳、9歳の子供達を被写体に撮っています。でも子供達に「そこ立ってくれ」と言っても面倒くさがって立ってくれないんですよね。きちんと撮らせてくれないので、なかなか満足のいく写真を撮るのは難しいです。あとは、子供達が3人とも補習校でバスケットを習っています。放課後に小学生にバスケットを教えてくれていて、また家の前に学校の校庭があるのでそこのゴールを使ってよく皆でバスケをしています。

(松田)今後カナダでやっていきたいことは何かありますか。

(今井氏)僕は駐在員なのでここにいられるのは期間限定ですので、今のうちに子供達を出来る限り色んなところに連れて行きたいと思っています。今はラスベガスにショーを見に行きたいですね。子供向けのショーでも本格的なようですし、あとシルクドソレイユのショーも見に行きたいと思っています。

(松田)それでは、最後になりますが商工会会員へのメッセージをお願いします。

(今井氏)商工会に入会することで普段は知り合うことができない多くの方々と知り合うことができ、これはとても貴重なことだと感じています。色々な方々から多くの刺激を受けたいと思っており、積極的にイベントに参加していきたいと思っていますので、宜しくお願い致します。

(備前氏)私は常駐しているわけではありませんが、トロントには1ヵ月に1週間程は訪れたいと思っています。なかなか難しいですが。機会がありましたら是非色々と参加させて頂きたいです。よろしくお願い致します。

(松田)インタビューは以上になります。本日はどうも有り難うございました。




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