リレー随筆


日本伝統文化を受け継いで行く




新日本舞踊小桜流 三代目 小桜扇翠(本名 榎戸利世)


「あなたは日本の文化でクラスメイトに披露できる事がありますか?」これは、私が1989年に家族と一緒にカナダに移住して間もなく現地校の先生に言われた言葉です。

日本の文化がまだよく知られておらず、もちろんインターネットなど発達していない頃でしたので、私の友人の中には日本人は着物を着て、ちょんまげを結い、刀を持って生活していると思っている人もいました。

私は祖母が創流した新日本舞踊小桜流で日本舞踊の稽古を三歳から始め、踊っていましたので、「日本舞踊が踊れるよ」と言うと、いつの間にか学校全体で行われるタレントショーに参加することになっていました。英語が今一つ理解できていませんでしたので、言われるがまま学校の講堂で生徒たちをお客様に踊りました。

日本語の曲に合わせて踊る日本舞踊。「言葉が分からない人たちに楽しんでもらえるのだろうか」と不安でしたが、みんな初めて観る衣装と動きをしっかりと観てくれていたのが印象的でした。「じーっと」という言葉が聞こえてきそうなほど、お客様が踊りに集中していたのを今でも覚えています。日本舞踊を披露した後、友人が増え、知らない人からも声をかけられるようになったのは言うまでもありません。

カナダに移住して、英語という言語の壁があっても、日本舞踊を通じてお互いを理解しあえる事を何度も経験しました。日本人として日本の伝統文化を一つでも紹介できる芸を身に付けていたという事に関し、両親と祖母に感謝しています。

私は日本舞踊を踊る時にはいつでも「心で舞う」ことを心がけています。なぜなら言語が分からない同士でも「心で舞う」ことにより、心が通じ合えると信じているからです。日本伝統文化はどれも心身ともに成長することができる素晴らしいものばかりです。日本を離れ、海外に住んでいる今だからこそ日本の良いところを発見できるのだと思います。私は今後も日本舞踊を通じ、日本とカナダの文化交流に努め、一人でも多くの人に日本伝統文化を身につけ、受け継いで行ってほしいと願っています。


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