「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第69回>
Kobo Inc./コボ・インク、楽天株式会社
大尾嘉 宏人
Executive Vice President and Corporate Planning Officer, Kobo Inc.
Executive Officer, Rakuten Inc.


12月より商工会にご入会頂いたコボ・インク(Kobo Inc.) の大尾嘉氏のインタビューに行って参りました。所在地はトロントダウンタウン西方のLiberty Village地区です。以前はカーペット工場であったというオフィスはレンガの壁を活かしたスタイリッシュな内装で、大尾嘉氏のオフィスにはお子様の絵がアート画のように素敵に飾られていました。一つ一つの質問に対してしっかりと考え、まとまったご回答をくださる大尾嘉氏のご対応がとても印象的でした。
 


(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いします。

(大尾嘉氏)コボ・インクは2009年の12月に設立されたカナダの企業で、2012年1月に楽天のグループ会社として仲間入りしました。事業内容はeリーダー端末やタブレットの製造販売、電子書籍の販売です。端末はトロントではIndigoやChapters等の書店、またはBest Buy、Future Shop等の家電量販店 にて購入いただけます。社員数は、現在約500名です。

(松田)商品のeリーダー端末について教えてください。

(大尾嘉氏)eリーダーとタブレットは、本を購入いただき、本を楽しんでいただく手段です。Wifiを通じて、端末上で手軽にお好きな本を購入し、自分専用のライブラリを作って本を整理することができます。メモリカードによりライブラリの拡張も可能です。kobo touch、kobo glo等に代表される”Eリーダー”は、白黒画面で目に優しく、安価で軽く長寿命バッテリー、そして最近発売されたkobo arcという“タブレット”は、1640万のカラーバリエーションをもち、雑誌やグラフィックノベルも鮮明なカラーで楽しんでいただけます。
コボはオープンネットワークをコンセプトとしており、コボのアプリを通じて、PCはもちろん、他社のアンドロイド携帯、iPadからも書籍を読むことが可能です。またコボのブックリーダー端末は読書の際の快適さも追求しています。例えばkobo gloのライトは電子ペーパーの周りから光を当ててスクリーンを照らしており、明るさにムラが出ず、長時間の読書でも目が疲れにくい作りとなっています。文字サイズ等の表示もお好みで変更することができますし、複数の端末間で全ての本を共有することが可能です。例えばさっきまでkobo arcで読んでいた本の続きをkobo gloで 読むことができます。

(松田)楽天がコボを買収した理由にはどのようなものがありますか。

(大尾嘉氏) コボのビジネスモデルの特徴は、各国の書店等の流通パートナーと、各国の出版社とのWin-Winの関係構築、競争力のある電子書籍端末、さらにグローバルプラットフォーム化されたeブックストアの3点です。流通パートナーを通じてデバイスを販売し、インターネット上に各国の言語、通貨に準じた本屋を作り、書籍やサービスを世界中に提供しております。現在、登録会員数は世界で1200万人以上、300万点以上の電子書籍があり、約190カ国で購入されています。コボは、イギリスの「WHSmith」、フランスの「FNAC」、アメリカの「ABA(America Booksellers Association)」、イタリアの「Mondadori」、オランダの「Libris Blz」、ニュージーランドの「Whitcoulls」、ブラジルの「Livraria」等、世界各国の書店とパートナーシップを組んでいます。日本ではもちろん楽天です。
実はコボのビジネスモデルは楽天のビジネスモデルと似ています。AmazonはAmazon自身が小売業者等より購入した商品をインターネット上で販売していますが、楽天は、地域の店舗が商品を発売できる場所(マーケットプレイス)を提供し、店舗と一緒にWin-Winとなれるシステムを作っています。コボ買収により、楽天として、デジタルコンテンツへのマーケットプレイスの事業拡大だけでなく、両社のビジネスモデルが合致したことが、買収に至った理由の一つです。

(松田)会社として、今後特に力を入れてやっていきたいことはどのようなことでしょうか。

(大尾嘉氏)コボのビジネスモデルである、新しい国でのビジネスパートナーの発掘と新しいデバイス開発、デジタルコンテンツ サービスの開拓は、今後とも力を入れてやっていきたいです。また、楽天としてコボとのビジネスシナジーの追求も加速させていく必要がありますね。楽天の英語化は、このような点でも大変役立っています。

(松田)それでは大尾嘉さんのご経歴についてお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらですか。
(大尾嘉氏)出身地は愛知県で、小学生時代はアメリカのミシガン州で暮らしました。その後、中学、高校、大学は日本です。1994年に凸版印刷に入社し、インターネット関連のプロジェクトに携わっていました。その頃はやっと企業がインターネットという存在を知り始め、電子メールが少しずつ広まっていった時期でした。会社でもみんなで端末をシェアしながら、インターネットやEmailをしていましたね。 1999年にロサンゼルスに赴任し、ネット関連の新規事業開発を担当していました。その頃はアメリカはネットバブルと言われ、ネットスケープやeBayが急成長している時期でした。 そして、MBA取得後、日本に戻り、デジタルコンテンツ配信事業のビットウェイの分社化、増資、そしてオペレーション構築と事業を軌道に乗せることに尽力しました。ビットウェイはPCや携帯電話に電子書籍・コミックを配信する事業をやっておりその分野の先駆けでした。日本人にはなじみ深いですが、携帯で購入したコンテンツを電話料金と同時に請求され支払う方法は、世界でNTTドコモモデルと言われ、当時は画期的な決済手段でした。私は管理部門を担当しておりました 。そして、2007年の5月に楽天に入社しました。

(松田)楽天に入社後は、どのようなお仕事をされましたか。

(大尾嘉氏)入社後は、様々なグループ企業でのオペレーションの導入・改善を担当しています。フュージョンコミュニケーションズに出向した後、楽天本体で開発生産性プロジェクト、グループ予算編成を担当しました 。そして2009年にアメリカに渡り、 Rakuten LinkShare(NY)、Rakuten Loyalty(Boston) 等のマネジメントを経て、 昨年の4月頃からコボを担当しています。当時はニューヨークから出張ベースで来ており、10月末に家族で渡加しました。

(松田)大尾嘉さんがコボに来た理由や役割はどのようなところにあるのでしょうか。

(大尾嘉氏)私のミッションは、楽天グループに仲間入りした企業に対して、楽天式のマネジメント を導入し、強く元気な組織にしていくことです。その際、楽天の良いところを参考にするだけでなく、グループ企業そのものが持っている良さを残すこと、更に一緒になって事業のあり方・組織のあり方を考えていくことも重要です。現在はコボの経営企画と経営管理を担当しています。

(松田)たくさんご経験をされていますが、ご自身で転機だったと思う時や、印象に残っていることはありますか。

(大尾嘉氏)転機は二度ありました。第一の転機はビジネススクールに通った2年間です。そこで学んだことは、目からうろこが落ちるようなことがとても多く、今まで自分が良かれと思ってやっていたことが、実は逆の判断だったということもありました。そしてそれを日本に持ち帰り、ビットウェイという会社の管理部門を一から立ち上げた時のことは一番印象に残っています。学問で得た知識だけではわからないこと、通じないことがたくさんありました。結局、凸版の管理部門のその道のプロにアドバイスをもらいながら、試行錯誤をしながら2005年の10月にビットウェイを立ち上げ、どうにか少しずつ会社が回るようになっていきました。 そして2006年の12月に第二の転機が訪れました。私は一人ひとりの考えや行動がチームの仕事に反映され、チームの仕事が本部の仕事に反映され、という風に一人ひとりが組織に反映されている“考える組織”、”1+1が100になるようにゴールアライメントの仕組みが整っている会社”を目指していました。そして皆の協力と試行錯誤の結果、仕組みが整い、事業として実績も出てきた時に、自分の中でひとつの終止符を迎えたんです。 事業をずっと回すことも良いが、その立ち上げ段階で「元気な組織作り」を極めてみたいと思い、翌年の正月に転職を決め、2月に伝えました。

(松田)では大尾嘉さんがお仕事を進める上で大切になさっていることは、どのようなことでしょうか。

(大尾嘉氏)粘り強いコミュニケーションです。「多方面から事実を集め、しかるべき経営の思考プロセスを経て、正しい判断をする」ということは時間をかけ、訓練をすれば出来ることだと思います。意思決定には必ず事実とロジックがあるもので、それに基づいて選択し判断を下すことは、実はそれほど難しいことではありません。本当に難しいのは、それを時間がない方・優先できない方にそのアプローチをわかってもらうこと。そして、それを教えたり説得や強制するのではなく、自分で気づいて納得してもらう場を作るということです。人に教えてもらったことは忘れても、自分で気づいたことは絶対に忘れませんので、簡単に伝えてしまうのではなく、どうにか自分で気づいてもらえるようなコミュニケーションの方法をとるようにしています。特に北米では、間違いを指摘するのではなく褒めながら伸ばすような教育がされていますから、粘り強さと根気が必要ですね。しかし当人が理解をしたときの説得力とエネルギーはすごいものがありますので、そうなると安心して任せられますし、その瞬間を楽しみにしています。

(松田)それでは、プライベートについてお伺いしたいと思いますが、好きなスポーツは何ですか?

(大尾嘉氏)バスフィッシング はかなり長くやっています。ブラックバスを釣りに湖や川にいきます。最近は体調管理のためにもジムに通っています。せっかくカナダに住んでいるので、家族でアイススケートを楽しんでいます。妻も子供達も毎週レッスンをとっており、私よりもどんどん上達しています(笑)。あと、ワインは大好きですね。

(松田)釣りの魅力はどのようなところでしょうか。

(大尾嘉氏)その日その場所の、風や水温、気圧、水底の形状や周囲にいる魚等、色々な要素によって変化があるのが面白いですね。ブラックバスは外来魚ということで日本では規制が設けられている場所がありますが、北米にはさすがにたくさんいて釣りやすいです。アメリカでは一つのボートで、100匹くらい入れ食い状態で釣れたことがありました。カナダではまだやっていませんので、シーズンになるのが楽しみですね。

(松田)今後、カナダでやって行きたいことは何かありますか。

(大尾嘉氏)現在7歳と11歳の子供達に、アイスホッケーをやらせたいと思っています。夏にはキャンピングもやりたいです。カヌーで川を渡って、岸についたら担いで、自然の中を渡り歩いたりとかやってみたいですけど、右も左も分かりませんので、まずどなたかご存知の方に連れて行って教えていただきたいですね。

(松田)最後になりますが、商工会会員へメッセージをお願いします。

(大尾嘉氏)日系企業が、カナダにある日系企業ではなくて、カナダにあるグローバル企業というように見られるようになれば良いなと思っています。 海外に進出した際に「ジャパニーズカンパニーが来た」ではなく、「グローバルカンパニーが来た」と言われるようになるべきです。楽天も、 社内英語化を始めており、グローバルカンパニーとして 変化してきています。私もニューヨーク、ボストン等で仕事をしてきた上で同じ考えを持っています。日本の会社が海外に日本のやり方を押し付けに行くのではなく、日本の会社自体がグローバルカンパニーであることを自覚し、ローカルの人たちもグローバルカンパニーであることを意識することで、発想や見え方も変わり、今後のビジネスの可能性や更なる発展につながると考えています。

(松田)インタビューは以上です。今日は有り難うございました。




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