リレー随筆


日本人の知らない日本語(北米編!?)




日本語教師 鎧塚 美樹


「日本人の知らない日本語」という本をご存知でしょうか?原作はコミック/エッセイ本で、日本語学校における教師の奮闘と外国人生徒のやりとりが面白く描かれています。外国人生徒による鋭い質問、マニアックな突っ込み、珍回答などがいろいろ紹介されていて大笑いですが、実際私も北米で日本語教師をしていて、「日本人の知らない日本語」 にはしばしば遭遇します。以下、いくつかネタをご紹介。

★(   )の中に正しいことばを入れなさい。
「冷蔵庫の下に、ほこり(  )の本を見つけた」
1. まみれ、2. づくし、3. ずくめ

日本語能力試験1級(N1)の問題。日本人なら、「ほこり(まみれ)」と勘が働くところですが、 日本語の学習者にはこういう言葉のニュアンスの違いが難しい。 「どうして『規則ずくめ』とは言えるのに、『ほこりずくめ』とは言えないんですか?」などと反論してくる生徒もいる。そういうときは、「いい質問ですね。先生の宿題にさせてください」と言って後で調べることにしている。


★「ドイチモ ください」

これは初級の日本語クラスでの生徒の発言。さて、「ドイチモ」とはなんでしょう?ドイツ語、いやいや、あるいは何か外国の食べ物?キミは何が欲しいの??さあ、皆さん分かりましたか? この人の言いたかったことは、「もう一度、言ってください」なのでした。Please =ください、と覚えたのでしょう。「ドイチモ」は「もう一度」をアナグラムしたようです。


★(  )の中に言葉を入れなさい。
私は( タマナータ )のような( アックシャン )映画が好きです。

宿題の採点。カタカナは意外に解読が難しい。はて、一体どんな映画?インド映画?マジシャン?そういう俳優の名前?正解は、(ターミネーター)のような(アクション)映画。確かに英語の音から考えると、そういう表記にしたくなるのかも・・・。


★「私はかんこくりょうりも好きです。かんこくのバビキョウはあぶらがおおいけど、安くて、おいしいですから、私は好きです。」

これは作文。はて、バビキョウとは?宗教の名前?いやいや、韓国料理の話だから食べ物の名前に違いない、でもそんな食べものあったっけ?ビビンバ、カルビ、チゲ、違うなあ。ああ、そうか、韓国料理と言えば焼き肉、BBQ、「バーベキュー」のことだ!!


★「弟さんは何歳ですか」
「くさいです」

この場合、「9」は「く」ではなく「きゅう」と言いましょう。


★ 「私の性生活」

学生の作文のタイトル。ドキッとしながら目を通したら単なる日常生活の作文。多分、「生活」と打つのに二回「せい」と入れてしまったのでしょう。教師だけ、ドキドキ。

いかがでしたか? 日々不思議な日本語には遭遇しているはずなのですが、いざ随筆に書こうと思ったら意外にエピソードを覚えていなくて頭を抱えました。文章としてまとめる、ということは予想外に大変だということを思い知らされた次第です。私にはとても本は書けそうにありません。今回、ネタを分けてくださった同業者の皆さん、どうもありがとうございました。





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