「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第63回>
DentsuBos / 電通ボス
久保 恵一 Director, Strategy



商工会会員企業で唯一の広告会社である電通ボスさんにお伺いして来ました。ダウンタウンにあるオフィスは、天然木が施されたとてもファッショナブルなオフィスで、間違ってお洒落なレストランに入ってしまったと思い受付で確認をしたほどでした。今年の7月末にカナダに来られた久保さんは、とても話がお上手で楽しく取材をさせていただきました。
 


(松田)御社の事業内容のご紹介をお願いいたします。

(久保氏)弊社はフルサービスエージェンシーと呼ばれる広告会社です。テレビコマーシャルや新聞、雑誌、ウェブ上等で行われる広告の制作はもちろんのこと、クライアントの課題を解決する為のマーケティング戦略立案や実施、メディア・プランニングとバイイング、セールスプロモーションやイベントなど、コミュニケーションに関わることは全て行っています。また、企業と消費者の関係を、データを活用して構築するCRMも弊社の事業内容のひとつです。

(松田)設立はいつですか?

(久保氏)弊社の母体は1995年にトロントに設立した電通カナダになります。ただ、この電通カナダはカナダの英語圏を中心としたビジネスを行っており、フランス語圏も含めたカナダ全土での一貫したサービス体制を整えるため、今年6月にモントリオールにベースを置き、クリエーティブ力に定評があった広告会社BOS社を買収し、電通カナダと統合して「電通ボス」社を設立しました。オフィスはトロントとモントリオールの2カ所、社員数はトロントに約130名、モントリオールに約90名の全部で約220名です。

(松田)過去5年間駐在員がいなかった御社に、今年久保さんが駐在員として赴任された理由は何ですか。

(久保氏)私が来たのには主に2つの理由があります。一つは、合併後の会社がスムーズに事業展開できるように支援をすること。もう一つは、日本の電通はもちろんのこと、日本以外の世界約30カ国にあるグループ会社で組織する「電通ネットワーク」が持つ知見やメソッド、ツールなどをカナダでも展開し、クライアントへのサービス向上に役立てることです。また、これとは逆に、例えばソーシャルメディアの活用では進んでいるカナダでの成功事例を、世界中の電通グループ各社に情報発信し、電通グループ全体として、クライアントへの提案能力を高めていくことも私の仕事の一つです。


(松田)お客様にはどのような企業がいらっしゃいますか?

(久保氏)トヨタ、キヤノン、スリーマン ブルワリィーズの他、通信会社のfidoやヨーグルト製品のIÖGO、National Bank、スイスのチョコレート会社Lindt等の企業がお客様です。

(松田)御社が今、特に力を入れていることはどのようなことですか?

(久保氏)効果的な広告コミュニケーションを実現させる為には、消費者の行動パターンや心理プロセスを把握することがとても重要です。これに関して有名なものとしては、1920年にアメリカで発表された「AIDMA」(A: Attention(注意)、I: Interest(興味)、D: Desire(欲求)、M: Memory(記憶)、A: Action(購入))というモデルがあります。広告企画を立案する際に長年使われている理論なのですが、スマートフォンやタブレット端末を使いこなし、ソーシャルメディア上で情報収集や発信をする現在の消費者をこのモデルで捉えるには限界がありました。そこで、電通では「AISAS」というモデルを提唱しています。これはA: Attention(注意を引き)、I: Interest(興味をもったら)、S: Search(自ら調べて)、A: Action(購入し)、S: Share(情報や感想をシェアする)という消費者行動です。今は気になった商品があれば、購入前に評判や価格をネットで調べ、購入後はネット上に感想を書き込んだりしますよね。

(松田)確かに、そういう人が多いですよね。

(久保氏)情報が溢れ過ぎていて、自分にとって必要だと思う情報は積極的に収集しますが、それ以外の情報は遮断されて届かなくなって来ており、消費者に企業のメッセージを伝えることは非常に難しくなっています。溢れ返る情報の中から「もっと知りたいから自分で調べてみよう」と、消費者を能動的に動かしていくアイデアと仕掛けを作っていくことが、現在のコミュニケーションのプランニングでは重要なのです。広告会社なのでアイデアづくりにはもちろん全力を注いでいますが、企画や効果検証の為にはデータ分析やテクノロジーなどデジタルへの理解も重要になってきており、弊社ではデジタル領域にも注力しています。

宣伝になっちゃいますけれど(笑)、2010年に出版されたこちらの「The Dentsu Way」という本は、その「AISAS」理論の他、電通独自のプランニング手法や分析ツールなどを、まとめてご紹介している本です。日本語版(クロスイッチ―電通式クロスメディアコミュニケーションのつくりかた)もありますので、機会がございましたら、是非、手に取って頂けると嬉しいです。

(松田)人々の興味を引くものを作り続けることは大変だと思いますが、どのように取り組んでいるのですか?

(久保氏)人々が今関心を持っているものは何か、この先、人々が興味を持ちそうなものは何か、を常に意識して生活していますが、でもおじさんが無理に若者に合わせようとすると「うわ、ださい」となったり(笑)、女性用の商品を男性だけが考えるとポイントがずれていたりということもありますので、我々の企画作業は、性別や年代も異なる人たちをできる限り集め、チームで行うようにしています。そういう意味では、カナダは国そのものに色々なバックグラウンドの方々がいますし、電通ボスの社内もユニークな社員が溢れているので非常に面白いです。

(松田)御社で社員のためにやっている試みやイベントなどは何かありますか?

 
4 mugs in a boothのポスター

(久保氏)ボス社合併後も非常に上手くいっていますが、チーム力をより強化する為と、社員全員が一丸になって新しい会社を作っていこう、という前向きな気持ちになってもらう為に「4 mugs in a booth」と称して、元電通カナダの社員と元ボス社の社員をミックスした4人組を作り、毎週金曜日の午前中にコーヒーを飲みながらお互いに自己紹介を行い、最後に会社が用意したSuggestion Boxに、より良い会社にする為のアイデアを提案する、という活動をやっています。遊びのアイデアから経営に関する提言まで、提案内容は様々ですが、出身企業が異なる社員が話をすることで新しいアイデアが生まれ、仲間意識も強くなり、上手くいっていると思います。


ハロウィン大会の様子

イベントとしては、この夏にはトロントアイランドでバーベキュー大会を行いました。10月末にはハロウィン大会も行い、社員全員で食事を持ち寄り、仮装コンテストを開催して優勝者を決めたのですが、世界各国の料理が持ち寄られ、どれも美味しかったですし、仮装も遊びの域を越えたプロ並み?の社員が多く、とても盛り上がりました。広告会社なのでそういうイベントに対しても本気で臨みますから、いつも楽しいパーティーになりますね。

(松田)では、久保さんのご経歴についてお伺いしたいと思いますが、ご出身はどちらですか?

(久保氏)出身は東京の八王子です。東京の大学を卒業して電通に入社し、最初の2年間はクリエーティブ局に配属され、コピーライターをしていました。その後は営業担当を13年程やりましたが、クライアントの課題解決の為には広告のプロであることに加え、経営者のように事業全体を俯瞰し捉える視点も必要になってきたと思い、経営の知識を身につけるために経営企画部門に異動しました。経営企画部門の後は、電通の海外戦略部門を担当する部署に異動し、これがきっかけとなり、今回の赴任ということになりました。

(松田)初めての海外赴任なんですね。

(久保氏)学生時代や会社の留学制度で海外に来たことはありますが、赴任は初めてです。トロントはいいですね。それぞれの民族が混ざって一つになるのではなく、オリジナリティを保ちながらカナダ人として調和している感じというのはアメリカにもなく独特です。家族と一緒に赴任して来ましたが、安心してのびのびと子供を育てられる環境というのも素晴らしいですね。

(松田)日本とカナダでは仕事の仕方も違いますか?

(久保氏)カナダの人達は時間の使い方がとても上手いと思います。私の場合、日本では仕事が深夜にまで及ぶことがあったのですが、トロントでは、特別な事情がない限り、夕方5時を過ぎるとパッと切り替えて帰宅する方が多いですね。早く帰るから仕事をしていない、という訳ではなく、仕事はきちんとこなしていますので、必要性が低いことはできるだけ省いて、より重要な事柄に対して集中して仕事をしているという印象です。仕事だけでなく、自分自身や家族との時間も重要視していて、公私ともにバランス良く楽しむカナダ人の効率的な時間の使い方は、見習う点が多いように思います。

(松田)久保さんがお仕事を進める上で大切にされていることはどのようなことでしょうか。

(久保氏)コミュニケーションに関わるビジネスをしていますので、コミュニケーションする相手のことを理解して尊重することを大切にしています。と、言いましても、赴任当初に苦い思い出がありまして、このオフィスでは日本人は私だけのこともあり、打ち合わせの場で「日本ではこんな事例がある」と自分の経験や知識を根拠に意見を言っていたのですが、カナダ人社員が求めていることや、その背景に対する理解が少なかった為、コミュニケーションがあまりスムーズにいかないことがありました。特に、カナダのように色々な人種やバックグラウンドを持つ人たちが一緒に仕事をしていく現場では、相手に自分のことを理解してもらおうということは後回しにして、まず相手を理解して尊重すること。その上で、徐々に自分のことも相手に理解してもらえるように努力することが大切なんだなぁ、と改めて痛感しました。

(松田)プライベートのこともお伺いしたいと思いますが、ご趣味はなんですか。

(久保氏)アウトドアが好きで、先日も商工会の昼食会で出会った方々にオンタリオ湖にトローリングに連れていって頂きました。日本でも小・中学生の頃は釣りが大好きで、よく行っていたのですが、やはりカナダでの釣りは楽しかったですね。料理も好きなので、その時釣ったサーモンを自宅で調理しました。今年の夏はバーベキューが出来なかったのですが、こちらはバーベキューの本場なので来年の夏には絶対バーベキューをしたいですね。冬はスキーやスケート、スノーモービルなど、オンタリオ州ならではのスポーツを経験したいなと思っています。

(松田)料理がお好きなんですね。得意料理は何ですか?

(久保氏)冷蔵庫の残り物で作るシェフのきまぐれ料理です(笑)。凝ったものは創りませんが、居酒屋料理的なものや、一品料理などをパパッっと作るのが好きです。

(松田)スノーモービルのご経験は?

(久保氏)やったことはありませんが、元々エンジンのついているものは何でも好きなんです(笑)。同僚に聞いたところ、湖さえ凍っていればカナダの西海岸から東海岸までスノーモービルで行くことができ、スノーモービル・トレール上にはガソリンスタンドはもちろんのこと、レストランまであるらしいんです。自分が全く知らない世界の話なので、是非とも経験したいですね。夏も大変素晴らしかったのですが、トロントの冬も満喫したいと思います。

(松田)それでは最後に、商工会会員へのメッセージをお願いします。

(久保氏)トロントに赴任してきて数ヶ月が経つ中、感じるのですが、日本の存在感が想像していたよりも薄く感じられました。アジア人の中では韓国や中国の方々が圧倒的に多いことが主な理由だと思いますが、日本からの赴任者や留学生も減ってきているそうで、少し残念に思っています。周囲にも日本に行ったことがある人は少なく、日本の印象を聞くと「最先端とトラディショナルが混在するミステリアスな国」と、よく知らないから雰囲気で言っているような答えが返ってきます。日本には伝統文化はもちろん、サブカルチャー的なものやファッション、食、そして日系企業が持つホスピタリティや技術力など、誇るべき側面が数多くあります。商工会の会員を始めとする日系企業で集まって、カナダの方々に日本の魅力をもっと知ってもらい、カナダから日本を元気付けたりするような活動ができればと思っています。今後、皆さんとそういう話もできれば、と思っておりますので、宜しくお願いいたします。

(松田)インタビューは以上です。今日はどうも有り難うございました。





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