リレー随筆




「ひたむきに続けていく、ということ。」



カナダ三菱東京UFJ銀行

勝部 和彦


「あと1キロ、やっとここまで来た。あと少し…、もう少し。諦めるな、行けるぞ。見せたれサムライ魂。あと600m、500、300…、フィニーッシュ、4時間12分16秒!!! やったぁ、やったぞ!初の海外遠征で自己ベスト(Personal Best <以下PB> )を7分更新!!」

今を去ること4年前、2008年9月のToronto Waterfront Marathon完走時、ゴール地点Toronto City Hall前での私の叫びだ。

2006年11月にふとしたきっかけで、本当に楽しいのか半信半疑で始めたマラソン。あれよあれよという間にすっかり魅力に取り付かれ、走り始めて早6年。完走したフルマラソンは14回、当初は夢のまた夢だったサブフォー(4時間切)も4回達成できた。今回、この場をお借りし簡潔に振り返ってみたい。

「ストレス耐性あり。」入社以来、節目節目で行われる人事考課で大概一行目に頂く私の評価。物の本によると「種々の圧迫や反対の中でも、安定して課題をやり遂げる能力」とある。「ホントに?」と思いつつ、いつもありがたく頂戴するのだが、心の中では「経年に伴う責任の高まりもあり、そうそういつまでも耐えられるものでもないよなぁ、効果的に都度発散しないことにはねぇ…」と思っている。

そんな折、偶々開催された大学の同窓コンペへの道中、親友から「そんなにストレスフルな毎日やったら、ちょっと一緒に走ってみぃひん?折角やから半年後2007年3月の第10回荒川市民マラソンにエントリーしてさ。えっ、もちろんフルよ。東京・板橋区の荒川河川敷内の特設会場を発着点とする日本陸連の公認コースらしいで」と誘われた。これがきっかけ。

早速翌週末、「よし先ず10キロいってみよう」とスタートするも、6キロで心の臓が飛び出るかと。加えて足の裏は疲労骨折でもしたんじゃないかと思うくらいの痛み。うぅん、慣れてるとは云えいきなりの挫折。「はて、どうしたものか?気持ちが先行し早く走り過ぎていたのかも…。」痛みも引いた翌週末の土曜日、何とか10キロ走破。「先ずはよし」だが、さすがに翌日曜日に走れる状況にはない。「よし、日曜日は泳ごう」こうして土曜10キロRun、日曜3キロSwimの週末日課がスタート。学生以来頑固に動かなかった体重が、-5kg、-7kgあっという間に減った。

親友は「すごいやん。それだけやってたら大丈夫やで。きっと…」と言ってくれたが、2007年3月の初フルマラソン、そんなに甘いものではなかった。午前9時、快晴のもと号砲。15,000人の先輩ランナーに囲まれ、抑えようの無い高揚感。やってしまった、止せば良いのにオーバーペース。何と20キロ地点通過が2時間ピッタリ。「何だ何だ、初マラソンからいきなり4時間12分ほどで完走か?!俺も捨てたもんじゃないな!」と思ったのも束の間、22キロ地点で完全にガス欠。以降は「棄権」の二文字がチラつく中、残り20キロをひたすら歩き続け、5時間43分で涙のフィニッシュ。「あぁ良かった。家族が全員、長男のサッカー応援の方を選んでくれてて…」

「もうやめようかしら?」今度こそ、間違いなく疲労骨折したと思った。それくらい痛かった。それも足だけじゃなく全身が。奇妙な歩き方は2週間ほど続いた…。

しかし、痛みが薄れるに連れ、悔しさと共にもっとやれるんじゃないかという思いが頭をもたげる。「自分との戦いを制し、理想のペースを守れば、大きく改善できるはずだ」ひたすら週末のRun & Swimをこなしつつ、ネット検索を繰返し、頃合いのレースを探す。2007年7月の北軽井沢マラソン(ハーフ)に続き、同年11月のつくばマラソン(フル)にエントリー。試行錯誤を繰り返す。

自身3回目のフル、2008年2月の東京マラソンで初の4時間台(19分)が出せた辺りから本格的にのめり込んだように思う。初の海外遠征と当て込んだ2008年11月のNYCマラソンは抽選であえなく外れたため、1990年代初頭に約2年間留学していた第2の故郷トロントでのレースに照準を定め直し、冒頭の「一人歓喜」に繋がる。

先輩ランナーからの薦めもあり、程なく週末のRun & Swimを、土日各々20キロずつの毎週40キロRunに引き上げる。当初はきつかったが、お蔭で距離への恐怖感は徐々に薄れていった。2008年12月のホノルルを経て、3回目の海外レースとなる2009年3月のソウル国際で3時間55分、念願のサブフォーを達成(PB 17分更新)。2009年11月のNYCでは一旦4時間台(13分)に沈む苦悩を味わうも、2010年2月の東京で3時間50分(PB 5分更新)、「2年連続」に拘り強行出場した翌3月のソウル国際では更にPBを2分更新し3時間48分。

以降2011年には、東京(2月)、ソウル国際(3月)、NYC(11月)と、3度PB更新にチャレンジするも、厚い壁に阻まれている。

そんな中、社会人になって以来切望してきた海外勤務辞令を初めて拝命することになる。2011年10月、冒頭のレース以来3年振りにトロントに降り立つ。在住は留学時の足掛け2年以来、実に20年振り。決して派手さはないがやはりいい街だ。何となくだが、2008年の初海外レースに、ロンドンでもベルリンでもなく、ここトロントを選んだことが今回の海外勤務を手繰り寄せたように思う。もちろん本年5月にはToronto Marathonを、8月にはToronto-10Milerを力走したし、10月にはToronto Waterfront Marathonも走るつもりで調整に余念はない。加えて、更に鍛錬を積み来年あたりには、2009年に始めたトライアスロンにもチャレンジし、是非オンタリオ湖を力泳してみたいと思っている。

見据える長期目標は、累計40,000キロ走破の赤道一周だ。毎週40キロ・1年50週として年間2,000キロを走破、これを20年間続けてようやく到達できるレベルの一市民ランナーとしてはやや壮大な計画だが、ただただひたむきに続けていきたい。無事に地球一周を果たし、十数年後またこの場でトロントの皆様に結果をご報告できるなら、これに勝る喜びはない。

さぁて今晩も、「ワイン」の前に、軽く10キロほど、走ってきますか?!



[フルマラソン歴] ~20012/8月現在:14回
  • 2007年/ 3月 第18回荒川市民マラソン
  • 2007年/11月 第27回つくばマラソン
  • 2008年/ 2月 第2回東京マラソン
  • 2008年/ 9月 Toronto Waterfront Marathon
  • 2008年/11月 第3回湘南国際マラソン
  • 2008年/12月 ホノルルマラソン
  • 2009年/ 3月 ソウル国際マラソン2009
  • 2009年/11月 第40回NYC( ニューヨークシティー)マラソン
  • 2010年/ 2月 第4回東京マラソン
  • 2010年/ 3月 ソウル国際マラソン2010
  • 2011年/ 2月 第5回東京マラソン
  • 2011年/ 3月 ソウル国際マラソン2011
  • 2011年/11月 第42回NYC(ニューヨークシティー)マラソン
  • 2012年/ 5月 Toronto Marathon

[ハーフマラソン歴] ~同月現在:13回

[トライアスロン歴] ~同月現在: 2回





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