リレー随筆

 

娘の現地校の宿題に思う

木村 美帆
トロント補習授業校 教員
モミジヘルスケア協会 パーソナルサポートワーカー


 

この原稿を書いているのは6月中旬。ここカナダの学校では年度末にあたる。

 

現地校の5年生を終える娘のこの一年を振り返れば、「宿題」に追われた年であったと痛感する。数日おきに出る算数の宿題、毎週の単語テストの勉強、理科の宿題やブックレポート、古代文明に関するプロジェクト、省エネに関するプロジェクトなど、「あれもした、これもした(もちろん、娘がであるが)」ということが次々に思い出される。

 

調べたり、意見をまとめたり、下書き後に清書したり、そしてさらには工作なども手がけたりすれば、一つのプロジェクトを仕上げるのにかなりの時間を要する。もちろん、この手の課題は締め切りまでに一定期間があるから、少しずつ準備すれば締切日の提出も特に問題にはならないはずである。が、これに加え、日々の授業の復習課題が出、放課後の習い事や様々な活動も重なれば、プロジェクトにかけるための時間はかなり限られてしまう。

 

締め切りに間に合わないと心配した娘は何度、泣きべそをかいただろう。週末の多く、かなりの時間を宿題にとられ、親の私も「週末なのに」とイライラしたり、「このペースで果たして締め切りに間に合うのか」と、ハラハラしたり、娘同様ストレスを感じることが多々あった。

 

クラスの保護者に話を聞くと、我が家と状況は似たようなものだという。保護者面談ではこの宿題の量について先生とも相談した。先生は真剣に私の話を聞いてくださり、「出された宿題に親子でストレスを感じべきるではない。本人が一所懸命取り組んで、できない(わからない)、間に合わないようであれば、無理せず、本人が私のところに連絡(質問)に来るように」と、言ってくださり、一安心。その後、何度か課題について締め切りに間に合わない旨の手紙を書いて娘に持たせたりもした。が、その後、先生が宿題の量を考慮してくださったかというと、それはまったくなかった。

 

さて、2008年にトロント教育委員会が出した宿題に関する指針によれば、幼稚園レベルで宿題は出さない、小学校低学年では読み聞かせ(または本読み)程度、中学年、高学年で一人で学習できるような課題を出すことになっている。ちなみに、小学校には明記されていないが、目安となる一日の家庭での勉強時間は、7、8年生で1時間以内、9~12年生で2時間以内である。また、小学校での宿題は、成績表の学習スキル(Learning Skill)の自主学習(Independent Work)および宿題提出(Homework Completion)でのみ評価される。つまり、宿題は教科の成績には反映されないということになる。

 

指針にはその他、休暇中や長期にわたって生徒が欠席する場合には宿題は出さないとか、親の責任として、子どもが就寝時間になっても宿題が終わらないようであればやめさせることなどが記してあり、各家庭の状況を考慮し、バランスをとりながら無理せず取り組むようにという内容になっている。

 

トロントで行われた調査によると、7年生より上の学年で出される宿題には生徒に何らかの効果が期待できるが、それより下の学年では、宿題をすることが学力向上につながるという結果にはならなかったという。トロント大学オンタリオ教育研究所は、小さいときに大切なのは宿題よりも、むしろ親が毎晩子どもと本を読むことであるとしている。

 

教育委員会の宿題への方針や調査結果を知るにつれ、小学生の子どもにあまり無理して宿題をさせる必要はないのかと思う。一方で、この一年の娘の様子を見て、去年に比べて身体面以外で格段に成長したと思えることがある。それは、自分のすべきことに対し自主的かつ計画的に取り組む(取り組もうとする)姿勢が身についたことだ。「○○の締め切りは××までだから、今日は最低でもここまではしないと」と言いながら、自ら机に向かう娘を見て、学力云々はさておき、娘にこのような習慣づけをさせてくれた今年の宿題(もちろん、それを出してくれた先生)には、感謝せねばならないと思う。

 

参考:Toronto District School Board, Policy P.036: Homework

      Toronto Star, August 14, 2008



この号の目次へ戻る   「リレー随筆」記事一覧ページへ