「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー


<第44回>
The Japan Foundation, Toronto/独立行政法人国際交流基金トロント日本文化センター
石田 隆司 所長

今回はジャパンファウンデーション・トロントの石田所長を取材しました。オフィスはBay駅からBloor通りを挟んで徒歩すぐ、高級ブティックが並ぶトロントの銀座です。立派な図書館と広いイベントホールが併設されており、この日も『3.11肖像写真プロジェクト展』が開催されていました。

神林)事業内容のご紹介をお願いします。

石田さん)The Japan Foundationは日本語では独立行政法人国際交流基金と申します。国際交流・文化交流を行なう政府関係の中軸機関です。人的交流、知的交流や日本文化の紹介など日本と諸外国との相互理解の推進を目的とした営利を目的としない活動をしています。その過程で、海外の文化や人びとの考え方を日本に伝えて、その結果として新たにクリエイティブな人的ネットワークや相互協力関係をつくることにも貢献しています。

具体的には大きく分けて3つの活動分野があります。まず日本語教育。日本語を使うのは日本人だけではありません。日本語をもっと世界の人びとにも使っていただいて、相互理解のためのツールとして、また日本語で表現され、育まれ、また今現在も生まれ出ている価値観や美意識を伝えるのが目的です。海外の教師研修、日本語教育アドバイザー派遣、スピーチコンテスト支援、日本語能力試験など、日本語を海外で学んだり使ったりしてくれる人を増やすために各種の支援活動を行っています。

2つ目は日本の文化芸術の紹介。演劇、舞踊、音楽、美術、建築・デザインをはじめ、パフォーマンスアートといった新しい形の芸術表現も含め多様な日本のアーティストや文化芸術専門家の活動を海外に紹介して、そのなかで日本で育まれたオリジナリティや美意識を伝え共感していただくことが大事です。日本とその他の国々の人びとは個人差も含めいろいろ違うところはあるけれども、文化芸術の世界をも通してどこかでつながっている、一緒だという気持ちが多文化共生の時代、限られたスペースと資源のなかで人類社会が共存していくためには必要だと思っています。日本のことを良く知ってもらいながら、一方で新しい価値観や創造性が育まれるといいですね。

3つ目は日本研究や知的交流。大学の先生やシンクタンクの研究者を日本のことや日本が関わる共通政策課題などについて研究していただき、日本と諸外国との関係の深化や建設的な未来への共同作業につながるようお手伝いしています。日本を研究する学者の方々が日本で滞在研究するためにフェローシップ(奨学金のような研究費)や研究会議助成金を出しています。このように、トロントの文化センターのライブラリーとイベントスペースを使用した講演会や展示の催し物を企画実施するほか、全カナダの教育研究機関や文化芸術団体等を対象に各地で行われる公演、展示、映画上映、講演会、文化週間などのプロジェクト助成も行うなど幅広く色々な活動を行なっています。

神林)日頃多くのイベントを企画されていると感じていましたが、文化芸術の紹介の他にも様々なことをされているんですね。

石田さん)日本語の普及や日本語教育の推進と一言でいっても、学習者、教師、教材やカリキュラムなどの制度面、それぞれの局面への支援ということでやれることはたくさんあります。例えば全世界で同時に行なわれる日本語能力試験があります。昨年は、海外では60ヵ国・地域の196都市で実施され、60万人以上が5つのレベルの試験に応募しました。このJLPT試験は毎年12月に行われてきましたが、現在は7月にも試験を実施する国・地域も増えてきました。カナダでは、トロント、エドモントン、バンクーバーが試験実施都市です。

神林)日本語能力試験を国際交流基金さんが主催されているとは知りませんでした。

石田さん)そうなんです。各地の機関にご協力いただいて実施しています。先日アルバータ州での試験の際のことですが、片道8時間かけて受験にきた高校生たちがいました。そうやって頑張る子どもたちがいれば、こうした学習意欲に応えて応援する保護者のみなさんもいらっしゃるわけです。その熱意を見て私どももこうした学習者のみなさんを誠心誠意応援しなければいけないと実感しました。

神林)今日本語の学習者はカナダにどれぐらいいらっしゃいますか。

石田さん)2009年のデータですが、学校など機関に所属して学んでいる人は約27千人です。

神林)これからも多くの方が学んでくれるといいですね。国際交流基金さんの組織のことについてもお伺いしたいのですが。

石田さん)日本で特殊法人としての設立は1972年ですから、今年で40周年となります。日本には東京に本部、京都に支部があります。そして埼玉と大阪に日本語センターがあります。海外の日本語教師のための現職研修や教材の開発などが行なわれています。また、日本を専門とする研究者や学生のための専門的な日本語教育事業も行なっています。トロントのオフィスは1990年に設置され活動を開始していますが、現在のような日本文化センターは1995年にオープンしました。www.jft.org

神林)たくさんのイベントを開催されているので非常にお忙しいのでしょうね。

石田さん)職員は12名ですが、ボランティア制度があり、日本やカナダの方など100名を超える方の登録があります。図書館やイベントの運営にご協力いただいているんですよ。ボランティアの方々なくしては私共のオペレーションは成立しません。スタッフの一員として関わってもらうという経験を通して日本の文化・社会に対する理解を深めていただき、また具体的な形でジャパンファウンデーションの仕事ぶりを見てもらい、文化交流という日本と諸外国の人々をつなぐ事業の意義に理解のある仲間、サポーターに加わっていただくことにもつながると思っています。

神林)スタッフとしてイベントの運営に関わってもらえば理解もより深まりますね。今後の活動で特に力を入れようと思ってらっしゃるのはどのような分野ですか。

石田さん)東日本震災・復興関係の様々なプロジェクトの企画開発と展開です。今現在、『3.11肖像写真プロジェクト展』を開催中ですが(127日に終了)、震災の復旧・復興に挑戦する日本の人びとや組織の様々な取り組みは、とりわけ日本出身の方がたや日本に関心のある在カナダの方がたにとって記憶に新しく、また図らずも国際間での支援や協力の舞台を提供したことでも重要なことであると思います。先進国・豊かな国でもこのような不幸なことは起きるということを物語っていますが、どの地域でも人知を超えた力に影響されることはありますから、人類にとっては共通体験です。日本の社会と人びとがこのたびに困難にどのように立ち向かっているかということを世界の皆さんに見ていただく機会となります。どの社会に照らしてみても教訓とするところはあると思います。それを伝えて、そして更には一緒に考えて、共同思考・協働作業をしていくことが大切です。

豊かな自然や文化、人情味あふれる東北地方に関係ある劇映画や記録映画を上映したり、災害復興や危機対応に関わる社会的な諸課題を日加専門家が共同研究するなど、東日本を多面的に理解してもらい、またこのたびの災害を乗り越えて未来に向けて歩みだすチャレンジをプロジェクト化していければと思っています。これ以外では、個人的にはトロントやカナダの特色を活かせるプロジェクトを開発できればいいですね。カナダは先端的な多文化社会ということでアジアに対する関心も高いと思いますので、日・中・韓などエスニシティや文化的ダイバーシティを生かした企画ができるといいなと思います。

神林)こちらには図書館が併設されていますが、どんな本が人気ですか。

石田さん)若い人、年配の方、様々な関心をもつ方がたが利用されますから多様なジャンルを扱っています。日本語・英語、両方の本がありますし、ポップカルチャーにかかわるようなコレクションも多くありますよ。そこからアプローチして他の文化芸術・学術分野にも興味をもってもらえるように、DVDなどオーディオヴィジュアルも含めて、ラインアップを充実させるよう努めています。

神林)石田所長のご経歴を伺いたいのですが。

石田さん)広島の出身です。大学は東京へ。学部時代にアメリカ留学しました。将来は教育研究職も考えたのですが、実際に人と関わって社会の役に立てるような仕事が理想に近いと思いました。教育・研究の世界にも触れられる上、国際的な活動を希望していましたのでこの仕事に就けたことは幸いでした。

国際交流基金の仕事ではトロントが4回目の海外勤務です。ニューヨークに90年代初期と9.11をはさんだ時期の2回、昨年10月カナダに来る前の4年間は英国ロンドンに駐在していました。そして文化交流とは種類の違う仕事ですが、80年代半ばに2年ほどパキスタンでILO(国際労働機関)の職業能力・技能開発プログラムの仕事に携わりました。日本政府がアジア太平洋地域での人材育成のためにファンドを出していたんですね。各国の職業訓練制度やノウハウ移転のための人材育成や情報交流を進める各種プロジェクトのお手伝いをしました。

神林)好きなスポーツやご趣味を教えてください。

石田さん)モータースポーツが好きです。オートバイに乗ります。チャンスがあればこちらでも乗ってみたいですね。他には映画鑑賞でしょうか。ドキュメンタリーが好きですね。ここ最近ではドイツの監督の「世界の果ての出会い Encounters at the End of the World」が面白かったです。

神林)いままでニューヨークとロンドンに赴任されていたとのことですが、比較されてトロントについてどのように感じていらっしゃいますか。

石田氏)非常に温かい国という印象です。マイノリティの人がプライドを持って生きている社会だと思います。この国は温かくオープンであると感じました。

神林)商工会会員にメッセージをお願いします。

石田さん)金融サービス委員会のメンバーとさせていただいており、非常にありがたいと思っています。ジャパンファウンデーションは、日本と諸外国の相互理解を推進する文化交流事業という非営利のオペレーション組織ですが、経済社会抜きで日本を語ることはできません。商工会という、日本を代表し日加経済関係を具現化するプロフェショナルサークルの輪の中に入れていただいて、常に世界と日本のおかれている国際環境や日本のビジネス産業界の方がたの様々な認識や見解など、いろいろ教えていただくことが、私たちが日本をめぐる政治経済関係や国際的政策課題に関するプロジェクトを検討するときなど、とても貴重なインプットとなります。

また、これから商工会のメンバー、コミュニティの一員としてご一緒できることを探していきたいと思います。ジャパンファウンデーションのような機関も関われるような、オール・ジャパンの観点、プラスサムの思考で、業種・業態を超えて日加関係の深化に協力して貢献できる切り口を見つけたいです。ロンドンでは、CSRをテーマに日英の企業関係者や英国の専門家がグッドプラクティスや先進事例等について語り、情報交流できるようなセミナーシリーズを立ち上げましたが、トロントではこのたび、資生堂カナダ様のたいへんなご尽力により当センターでの『3.11肖像写真プロジェクト展』が実現しました。今後もこつこつと規模は問わず、いろいろな共同プロジェクトを開発していければと思います。

神林)商工会も協力させていただければと思います。今後どうぞよろしくお願いいたします。本日は取材にご協力いただきありがとうございました。

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