リレー随筆

この15年

Bar Chiaki経営/フリーランス ボイスタレント
石原千秋

ある日会社のデスクの電話が鳴った。

「私の彼に手を出さないで!」

7歳も年下の彼女に呼び出され2時間ほどドライブをした。ハンドルを握りながら彼女は、喋りっぱなしの泣きっぱなし。何で私は今こうしているのだろう?勿論、その彼とは二度と会わなかった。

半年後、一人暮らしのマンションの部屋に毎夜毎夜の無言電話。

「私の彼を奪わないで!」

またまた年下の彼女が、何回目かでとうとう声に出して言った。まただ。喫茶店へ呼び出され(しかも私のマンションの1階。なぜここを知っているのか!?)、真夜中から明け方まで、彼女はどれだけ彼に尽くしているかを延々と喋る。前回とは彼のタイプが違うから、彼女のタイプも違うなと、どうでもいいことを思いながら聞いていた。その彼とも二度と会わなかった。

後日またまたその彼女からの無言電話。

「また!?もう私は別れたけど」「千秋さん。会いたい・・・。」真夜中から明け方まで何故か彼女のカラオケに付き合う。(言ったでしょ。そういう男は繰り返すんだって!)

これからは仕事に生きよう!もう男は要らない!

男性不信に陥った私を見るに見かねたか、ある日両親が言った。「海外旅行に行くけど、一緒に行く?」そしてカナダを訪れた。たまたまトロントで出逢った、これまた年下の彼は、日本に戻った私に毎日のように電話をくれ、半年で20通余りの手紙を書いてくれた。もうきっとこれが最後のチャンス。今だっ!えいっ!30歳をいくつか過ぎていた私は、出逢って半年後には籍を入れていた。

あれから15年。電話と手紙攻撃をした夫は、穏やかに私の傍にいてくれる。

地元TV局での勤務の間に、5年前Barをオープンした。いつまでもテレビに出演できるわけではない、そして、英語社会の中、日本人ならアフター5は日本語を喋ってリラックスしたい。そんな場所が欲しいに違いない、と思ったのがきっかけ。

手探りの中での初めてのビジネス。まずこのビジネスで重要なのは人材。良いスタッフがいればがいればお客様はついて下さる。インターネットの情報サイトを利用して募集広告を出す。性別、年齢、ましてや容姿などを指定することはできない。日本のように写真つき履歴書があったらいいのに――と常に思う。

そこでちょっと余談。最近ソーシャル・ネットワーク・Facebook デビューした。そこでは見ず知らずの人の情報を見ることもできる。そう!応募した人が情報、写真を公開している場合は、そこでいわゆる『書類選考』ができるのだ。(少々後ろめたい気もするが・・・)しかし、個人オーナーの約60%がこれを利用しているらしい。病欠をしているはずの社員が、Facebook 上の写真では元気にバケーションを楽しんでいる――結果、その社員は解雇となった。皆さんご注意あれ!

さて、幸運にも過去30名余りのスタッフには恵まれている。インタビューの際、自分の直感を信じて採用する。特に私が教育をするわけではない。新しいスタッフは、既存の中で最も新人のスタッフがトレーニングをする。教えることによって、その新人スタッフは急激に成長する。人が人を育てるということを実感する時だ。ある日、夫が引用文をプリントアウトした。「企業や団体は、良い人で評価されるのではない。悪い人で評価される」。心して、Bar のキッチンに張ってある。

ところで、両親は私のビジネスのことを知らない。まだまだ心配をかけるだけだと思い言い出せないでいる。オープンの時にこしらえたたっぷりの借金を全て返し終えたら、告白することにしようか。

多くの素敵な面々との出逢い。この15年の私はとても幸せだ。今はただ、この地に導いてくれた両親と夫に感謝!あぁそれから、二股をかけていた彼らにも。

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