リレー随筆

気づけばサンキュー

カナダ三菱自動車 齋藤直子

英語で怒れたら、と思うことが時々ある。怒るには勢いが要る。何と言おうか、考えている暇はない。こちらの英語力にも問題があるが、相手もめったなことでは謝らない。やっとの思いで意図を伝えると、相手は悪びれず「わかった、何とかしてやろう」となり、私は怒っていたはずの相手に「Thank you」と言っている。なんだか割に合わない。最たる例は、家に初めてテレビをおいたときのことである。

Day1>プロバイダーB社のコールセンターに電話。ケーブルボックス設置のアポイントを取るには、8時~12時、13時~17時の2つしか選べる時間帯がないという。4時間はずいぶん長いなぁ・・・と思いながら、土曜の812時を選択。

Day2>アポイント当日の土曜。朝8時ぴったりには来ないだろうと思っても、やはり早起きして着替えて待つ。そして・・・。来ない。待っている4時間は長い。買い物にも行けない。10時半、11時・・・来ない。やきもき、やきもきしてついに12時を回り、コールセンターに電話すると、「あなたの予約は来週火曜日に変更になっている」と言う。何??!!自分が不在の平日に予約をずらすはずがない。

「そんなことは頼んでいない、そっちのミスだ」と説明するが、「データで見る限り火曜日だ」とオペレーターは悪びれない。「今まで4時間も無駄に待ったんだから、今日中に終わらせてしまいたい。今日の午後誰かよこしてくれないか」「それはムリだ、もう先約で埋まっている。来週火曜のままにするか、次の土曜に予約を入れるか?」「平日はどうやったって無理だから、じゃあ仕方なく来週土曜にするけれど、“812時”の間でもできるだけ早く来てよ、私は今日4時間無駄にしたんだから」「そういう要望は受付けられないことになっている、けれど特別に備考コメントとして申し送りをしてみよう」相手はあくまでも悪びれず、「やってあげてる」トーンである。そして私は「Thank you」と言っている。

Day3>1週間後の土曜日。早く来てくれといった手前、また8時前からスタンバイである。9時、10時・・・来ない。やはり申し送りはムリか。それでもさすがに今日こそは来るだろう。10時半、11時・・・嫌な予感がする。イライラ、やきもき、1140分に早めに電話を取りあげる。

「予約をしているんだけど、まだ12時までもうちょっとあるけど、来ますよね?」「あなたの予約は先週の火曜日になっている、もう済んだんじゃないの?」もちろんオペレーターは、先日とは別の相手であり、また一から説明し直しである。「・・・だからそのアポはそっちの間違いで、私は先週も今週も待ってるの!合計8時間も!」「わかったわかった、けど今日の予約はもういっぱいだから、来週の土曜にアポを入れるのはどう?」・・・今日の相手もやはり、ごめんなさいでも何でもなく、「私は悪くない、できないものはできん」トーンである。わかる、あなたが直接悪いんじゃないのはわかるけど、キーッ、だからって私のイライラをどうしたらいいの?!「もういい」と言って電話を切る。私の負けである。

先日郵便受けに入っていた、競合プロバイダーR社のチラシ、万が一と思って取っておいたけど、もういいこっちにするんだ!こういう失礼な仕打ちをすると、客を失うんだからね!憤然と電話を取り上げ、R社の番号を押そうとしたそのとき、玄関に来客あり。「?」と思って応答すると、なんとB社のケーブルボックスを持ってきたという。コールセンターのシステム上は間違った記録のままだったが、どこかでは更新後のアポの情報が伝わっていたということらしい。時すでに12時を回っているし、2回目だし、散々イライラさせられたけど、そんなことは一切知らずニコニコとテレビをつないでくれるテクニシャンのお兄ちゃん。私もようやく問題が解決されたのがうれしくて、つい笑顔で「Thank you!!!」と言ってしまっているのである。

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