「こんにちは!」新代表者紹介インタビュー

<第22回>
Hitachi Canada Ltd./日立カナダリミテッド
Engineering Specialist, I&C Systems  丹 大輔 氏

22回は日立カナダリミテッドさんへお邪魔してきました。日立ときくと白物家電のイメージが強かったのですが、こちらでは重工業ど真ん中の発電設備のビジネスが中心とのこと。エンジニアとして赴任された丹さんがカナダでの原子力発電ビジネスについて詳しくお話くださいました。

(神林)御社の事業内容の御紹介をお願いします。

(丹氏)日立製作所は去年創業100周年を迎えました。日立のビジネスは、情報系インフラ、発電関係インフラ、日本国内の上下水道等の公共自治体向けインフラ、家電、新幹線車両製造、鉄道運行管理システム、エレベータ、建設用重機、などにわたりますが、「社会イノベーション事業を軸にグローバルな成長を目指す」という方針の元、グローバル展開を加速しています。

日立カナダが今一番力を入れているのは発電設備の提供ですね。発電所で使用するガスタービン、スチームタービン、ハイドロダービンといったタービンの提供に加え、私が深く関わっている原子力発電所向け他の制御装置です。専門的にはDCSDistributed Control System)と言われていますが、グローバル・スタンダードに準拠した安心・安全でセキュアなプラットフォームとシステムソリューションを提供することが課題です。グローバル・スタンダードとしては、例えばSILSafety integrity level)という非常に厳しい機能安全の規格があります。装置が動いていると何かしら危険な状況はありますので、それを避けるための機能を、システムに組み込む事で担保しましょうというのが機能安全の考え方です。そのスタンダードに準拠させるために現地の協業相手と一緒に開発を進めています。最初に来た人からするともう7年がかりです。原子力は長期的な話になりがちですが、「ようやく、芽がでつつあるのかな」というタイミングで私が赴任になったんです。

(神林)大きなプロジェクトですね。実用になるのはまだかかりそうですか。

(丹氏)実はもう使える状況にあるのですが、市場の状況によって原子力発電所の建設計画が、思うように進まないのが実情です。日々、情報収集のために、ウェブサイトや新聞を気にしている状況です。オンタリオでは日立カナダをはじめ5つの会社でTeam CANDUというチームを作っています。CANDU (Canadian Deuterium Uranium)は、カナダ独自の原子炉型式なんですが、その新型炉を作る際に、Team CANDU内で分担して開発しよう、というチームです。そういうわけで、我々は機を待っているところです。与えられた時間を有効に使いながら更なる改良に当たっています。

(神林)他の国でも御社は同じようなビジネスをされていますか。

(丹氏)そうですね。日立としてはご存知のように原子力分野において、GEと共同でビジネス展開しており、世界にどんどん進出していこうとしています。火力分野ではカナダのみならず、ペルーや中国、オーストラリアでも発電所を建設しています。原子力は他の分野に比べて、規制や外交的な課題が多く、その対応が難しいですね。例えばインドでビジネスするには、2国間協定がそういう状況下において、カナダでは火力の実績があり、また原子力としても今まで日本国内で培った約40年の実績もありますから、日立にとっては今後拡大できるであろう市場として期待しています。

(神林)御社の拠点や社員数について教えてください。

(丹氏)日立カナダの社員は50人強です。日本からの駐在員はミシサガの本社に私が一人、エドモントンとカルガリーの支社に火力発電所の保守要員として数名駐在員がいます。

(神林)御社の実際のお客さんはどちらになるのですか。

(丹氏)協業相手に納入した製品を最終的に使用するお客さんは電力会社さんです。日本だと電力会社さんから注文をいただいて日立製作所がつくります。日立製作所は協力会社さんと作業を分担しながらいただいた案件を完遂していきます。こちらでは日本で言うところの日立製作所と同じ立場の会社の協業相手が原子力発電所のサプライヤーとなります。つまり、日立から協業相手を通して原子力発電所向けに製品を供給する形です。

(神林)ビジネスの形も少し違うんですね。丹さんは実際はどのような業務をされているのですか。

(丹氏)開発した制御装置の共同実証試験が中心です。原子力発電所では、主に水の流量から出力を調整します。例えば出力が大きくなりすぎたら、水の流量を下げるということを行います。私たちの開発した制御装置で制御用ソフトウェアを開発し、その動作の実証を進めています。制御装置を開発しているのは日本にある工場ですが、協業相手が開発した制御用ソフトウェアを実際に評価用制御装置に装荷して正しく動作するかの試験です。思い通りに動かない場合は私が駆けつけて、設定の変更も含めて対策を実施します。私の手に負えない事象が生じていると、日本にある工場に連絡して調べてもらうんです。

もちろん、将来的にはカナダ現地における保守対応も視野に入れています。実際に受注を頂いて原子力発電所に使用した際に、何か問題が生じていちいち日本へ戻す作業をしているとお客さんに迷惑がかかりますから。原子力発電って1日動かないだけで電力会社は大きな損金を出してしまうんですよ。

(神林)分かりやすいお話をありがとうございます。それではこのあたりで丹さんご自身のご経歴をお願いします。

(丹氏)生まれは愛媛です。父親の仕事の関係で日本全国色々な場所に住みましたが中・高は富山でした。入社は2005年。大学では物理を専攻していましたが、純粋な物理学って直接的に社会生活に関われないと思っていたんです。

何か社会に直接的に貢献できることは無いかと考えていたら、医療にも応用されている技術があることに気づきました。シンクロトロンと言うんですが、粒子を加速させて照射する装置です。この装置をガン治療に応用する研究に興味を持ちまして、専攻していました。この装置は非常に大きくて、私の大学では持っていません。そこで、教授にお願いして客員研究員として国立の研究機関に受け入れてもらったんです。

実際の装置を扱いながらの試験は、とても勉強になりましたし、今の業務にも役に立っていると思います。ちょうどその時期に、MDアンダーソンというアメリカのガン治療専門病院の存在を知りました。実はその病院にシンクロトロンを納めた会社が日立だったので、入社したんです。しかし、残念な事に入社してから新規案件が無く、多少なりともシンクロトロンに関わりのあるインバータをやらないか、と言われました。そこで、インバータを原子力発電所に適用する設計に携わっていたのですが、結局そっちの方が面白くなって今に至ります。

(神林)そういういきさつで今の原子力ビジネスに関わることになったのですね。差し支えなければ趣味などのプライベートな話も教えてください。

(丹氏)車が好きで趣味はドライブです。大学生時代に自分で車を買うことは、親に反対されたんですが、両親が不在のタイミングを見計らって、契約をしちゃいました。父にはこっぴどく怒られましたが、母はあきらめて笑ってました。ドライブの目的地はあんまり決めないで走るんですが、滝が大好きなんですよ。日本ではフラッとでかけて、道路の看板とかで「滝」の文字があれば、寄ったりしていました。時々良い滝に巡り合ったらそこに人を連れて行ったり、こっそりと秘密の場所にしたりするのが好きでした。

(神林)カナダにはナイアガラ瀑布がありますね。

(丹氏)自分の秘密の場所みたいなのを作るのが好きなんで、観光地の滝はあまり好きじゃないんです。とは言うものの、ナイアガラはやっぱりすごかったですね。感動しました。水しぶきが凄くて、ずっと遠くから虹が見えてました。さすが、世界のナイアガラ、と思いました。

(神林)今一番の楽しみは何ですか。

(丹氏)日本にいる間は忙しくて全然時間がなかったんですよね。夜は23時まで仕事をすることもありました。今は多少早く帰れますので、ゆっくり食事したり、子どもと遊んだりしています。もちろん、日本側とのやり取りは欠かせませんので、帰宅後も仕事はしないといけなくて、PCはつけっぱなしなんですが、自由な時間は増えたように感じます。もうすぐ4つになる子どもとプールで遊んだりする時間が一番楽しいですね。

(神林)ご家族と過ごす時間が増えたのは良かったですね。今カナダに来られて4ヶ月ですがどんな感想をお持ちですか。

(丹氏)まだまだ英語には苦労していますが、カナダはとても良いところですね。どなたも親切ですし、誰にでもあいさつしていますので驚きます。一方、車の運転はみんな強引ですね。運転は日本以上に気をつけています。

(神林)カナダでやりたいことはありますか。

(丹氏)カナダ国内の色々な観光地に行きたいと思っています。家族や友人にも紹介できるくらい、詳しくなりたいです。地図に載らないような滝を探してみたいですけど、カナダではあまり山地を見かけないんで、これは難しいでしょうか?また、多少自由な時間がありますので、今後の仕事のためになるような勉強をしっかりしていきたいと思います。勉強成果が見えるような資格を取りたいと思っています。あとは、出来ればカナダらしい大きな車を乗ってみたいですね。せっかくの広大な大地ですから、普通のセダンでのドライブはもったいない気がします。

(神林)チャレンジしたいことがたくさんあるんですね。有言実行ということで、頑張ってください!インタビューは以上です。ありがとうございました。

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